第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-12] ポスター:教育 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-12-2] 総合実習における作業療法学生の臨床経験

五味 幸寛 (国際医療福祉大学成田保健医療学部作業療法学科)

【背景】
 2020年の指定規則改正により,臨床実習前後の評価が必修化され,臨床実習の方法は臨床実習指導者の指導・監督の下で行う診療参加型臨床実習が望ましいとされた.臨床実習前後の評価は,Computer Based TestingやObjective Structured Clinical Examinationが用いられているが,全国で統一されたものはない.診療参加型臨床実習を行うにあたっては,臨床実習で許容される臨床技能の水準が重要になる.日本作業療法士協会の作業療法臨床実習指針(2018)にその水準と条件が示されているが,実際に水準を定めるには至っていない.
【目的】
 本研究は,国際医療福祉大学成田保健医療学部作業療法学科(以下,本学科)の総合実習における作業療法学生の臨床経験を明らかにする.この研究結果は,臨床実習前後の評価内容と臨床実習で許容される臨床技能の水準を検討するにあたっての基礎資料になることが期待できる.
【方法】
 2019年度から2022年度に本学科が実施した総合実習の臨床教育経験報告書を後方視的に調査した.臨床教育経験報告書は,評価に関する23項目と治療・指導・援助に関する14項目があり,それぞれ実施できたものには丸を,見学できたものには三角を記入するものである.この報告書から実習施設の領域,評価と治療・指導・援助に関する全ての項目を調査した.倫理的配慮として,個人情報は調査項目に含めなかった.分析方法は,評価に関する項目と治療・指導・援助に関する項目について,実施できた人数,見学できた人数,未経験の人数を全体と領域別で集計した.また,COVID-19流行の臨床経験への影響を確認するため,年度別にも集計した.
【結果】
 延べ学生数は,163名であった.実習施設の領域は,身体障害領域が117名,精神障害領域が15名,発達障害領域が14名,老年期障害領域が17名であった.評価の経験では,面接,行動観察,関節可動域測定,ADL評価,コミュニケーションは8割以上の学生が実施できていた.協調性検査は他の項目に比べて実施できた学生が少なく,見学にとどまった学生が多かった.治療・指導・援助の経験では,関節可動域訓練や筋力増強訓練などの徒手的アプローチは8割の学生が,手工芸は4割の学生が実施できていた.家事活動,環境調整,患者の家族との関わりは見学にとどまった学生が多かった.領域別にみると,身体障害領域では徒手筋力検査や感覚検査を実施できた学生が多く,精神障害領域では集団活動を実施できた学生が多かった.年度別にみると,ほとんどの項目で年度による経験の違いは見られなかった.患者の家族との関わりは2019年度に7割の学生が経験できたが,2020年度以降に経験できた学生は4割であった.
【考察】
 8割以上の学生が実施できた評価と治療・指導・援助の項目は,いずれも作業療法で実施される頻度が高く,リスクが比較的低いと考えられる.一方で,協調性検査は転倒のリスクを伴うことから,見学にとどまった可能性がある.家事活動や環境調整は,実施頻度が低く,見学・模倣・実施のプロセスを踏みにくいことが推測される.学生が臨床実習において実施することが多い項目については,実習前に学生が実施できる水準にあるかを確認し,実習後に臨床経験の成果を確認することが望ましいと考える.2020年度以降の実習において患者の家族との関わりの経験が減ったことについては,COVID-19流行に伴い,病院や施設において感染拡大を防ぐために家族との接触機会を減らす対策がとられていたことが原因として考えられる.