第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-12] ポスター:教育 12

Sat. Nov 11, 2023 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PR-12-3] 臨床的思考を育む臨床教育のシステムの検討

小野 治子, 佐藤 善久, 渥美 惠美, 伊藤 明海, 稲垣 成昭 (東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【序論】
 本学では,2012年に事例基盤型臨床実習から診療参加型臨床実習(CCS)を実習の一部に取り入れた.記録課題の多さや事例経験の少なさの解消を目的に導入したが,2020年の理学療法作業療法指定規則の改訂により,学生がより良い臨床経験を重ねるには臨床実習のあり方のみならず,臨床教育システム全体の見直しが迫られた.改訂の趣旨にある作業療法参加型臨床実習の推奨や臨床的技術と思考の修得,学内教育と臨床実習の連携など効果的で効率的な臨床実習を実施するために臨床教育システムを見直した.本発表では,これらの臨床教育システムとその効果を検証する目的で実施した調査結果(本学倫理審査承認済RS22093)の一部を紹介するものである.
【方法】
システムの紹介:対象者.実習指導者.学生の負担を軽減し,経験に基づく臨床的思考と基本的臨床能力の育成を目指す臨床実習関連科目の設定と連携を見直した.臨床実習全てに作業療法参加型実習を導入し,1~4年次までの学内科目で臨床能力とのつながりを重視した内容を盛り込んだ.学内科目では,臨床実習の理解及び基本的臨床能力試験を含む実習で必要な準備と振り返りを全学年に導入しているリエゾン科目で行っている.実習前後の基本的な臨床的思考を育む授業は新たに2.3年次の演習科目を設定し,実習前後の臨床的思考の準備と整理の機会とした.実習では,記録や報告の書式も構造化し,評定は成果を可視化しやすいルーブリック評価に変更した.
調査:「作業療法実践実習Ⅰ(3年次)」を終了し,同意の得られた学生40名に実習経験の実態調査と実習目標に対する到達度と満足度,実習の取り組みやすさ,効果的と感じる点,指導者への期待などに7件法による回答をオンラインで求め,新カリ導入前の調査(倫理審査承認RS1405163)と一部比較した.
【結果】
 調査結果:学生の回答率は100%で,実習で経験した平均対象者数は延べ37.6人,生活面では,平均睡眠時間は5.7時間,自宅学習時間は2.6時間であった.不足と感じる時間は,睡眠(50%),自宅学習(45%),休養娯楽(45%)であった.実習目標に対する到達度.満足度は,「実習指導の素直な受け入れと修正」で高く(到達度:6.4,満足度6.3),「得られた情報の解釈」ではやや低かった(到達度5.0,満足度4.7).学生が取り組み易いと感じたことは,「CCS型実習」(6.5),「リハゴールの情報提示」(6.5)であった.効果的な指導と感じた点では,「CCS型の指導,リハゴールの提示,実習中の記録時間の確保,その場での指導」であった(6.6).また学生の期待は「臨床的思考の教授」(6.4),「臨床的技術の習得」(6.4)で高値を示した.
【考察】 
 新たな臨床実習では,施設の在籍時間や自宅学習時間(2時間減)が減少し,睡眠時間も1時間増となり,学生の負担軽減には効果的であったが,心理的には睡眠やSNSを含む余暇時間の減少に不満傾向がみられ,近年の学生価値観や気質が影響したと考えられる.臨床的思考を育むための臨床実習経験は,関わる(体験)対象者数が増加する一方で,実習時間内に学生へのフィードバックの時間が減少傾向にあり,「臨床的思考の教授」への期待が高かった可能性があり,時間的制約を考慮すると学内教育での補完が必要と考えられる.実際に学生の対象者の理解度や解釈の満足度では低下傾向にあるものの,セミナー時の発表内容に質の低下を感じた教員は少なく,学内授業が臨床的思考の補完的役割を果たした可能性がある.本研究では実践実習Ⅰのみの検討であり,更に臨床思考を育む臨床教育システムを考える上ですべての実習について検討していく必要がある.