[PR-12-7] COVID-19による臨地実習での経験不足が新人作業療法士に与えた影響に関する調査
【序論】COVID-19の感染拡大により,作業療法士養成校(以下,養成校)では,臨床実習の一部を学内演習で代替するなど弾力的な対応が求められた.その結果,2020年以降に養成校を卒業した新人作業療法士(以下,新人OTR)の多くは,例年に比べて臨地での経験値が不足した状態でキャリアをスタートしており,持ちうる特性に何らかの変化や不足が生じていることが予想される.そこで本研究では,養成校と臨床現場を繋ぐ卒前・卒後教育の在り方を再考すべく,卒前の臨地での経験不足が新人OTRに与えた影響を検証することを目的とした.
【対象・方法】2022年度に日本作業療法士協会に入会した新人OTRと作業療法部門責任者(以下,責任者)を対象とした.新人OTRが所属する1,317施設(10月22日時点)に,研究協力依頼文書,説明文書,Google Formを用いたアンケートのURL及びQRコードを送付した.説明文書にアンケートへの回答をもって同意を得たこととする旨を記載した.アンケートは,新人OTRに対しては,「COVID-19による臨床実習の経験不足が一番影響していると思うもの」について5件法で作成した設問46問と自由記述を,責任者に対しては,COVID-19の影響を受ける前と比較した新人OTRの特性についての設問46問と自由記述とした.収集した回答は新人OTRと責任者の差を確認するためにカイ二乗検定を行った.自由記述はKH Coder(Ver.3.Beta.06a)を用いて共起ネットワークによる分析を行った.なお,本研究は仙台青葉学院短期大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号 0309)を得て実施した.また,研究協力者の同意を得ており,COI関係にある企業等はない.
【結果】アンケートの回収率は,新人OTRでは317施設(回答者426名),責任者では363施設(回答者363名)から回答が得られた.回答者の属性として,新人OTRでは男女比は男性126名,女性299名.平均年齢23.7歳(21歳~58歳).所属先の領域は身体障害領域339名,精神障害領域36名,高齢期領域31名,発達障害領域17名,その他1名.また,責任者では男女比は男性218名,女性145名.平均年齢41.7歳(26歳~60歳).所属先の領域は身体障害領域265名,精神障害領域38名,高齢期領域36名,発達障害領域19名,その他5名.平均経験年数17年目(3年目~39年目).収集した回答はカイ二乗検定の結果,有意な差が認められた(p<.05).共起ネットワークによる分析の結果,新人OTRでは総抽出語数3,999語,異なり語数586語,最も多かった頻出語は「技術」であった.抽出されたカテゴリは7個で,それぞれ「知識や技術」,「社会的スキル」,「様々な領域での臨床実習の経験」,「移乗など直接対象者に触れる機会」,「対象者とのコミュニケーション」,「評価や目標設定,プログラム立案,治療の経験」,「作業療法を実施するための方法」を読み取ることができた.責任者では総抽出語数5,746語,異なり語数947語,最も多かった頻出語は「社会的スキル」であった.抽出されたカテゴリは5個で,それぞれ「評価や判断解釈,治療に必要な知識や技術」,「対象者の家族等と関わる機会」,「対象者とのコミュニケーション」,「実習で経験できなかったことによる不安」,「経験不足よりも個人の資質による影響が大きい」を読み取ることができた.
【結論】新人OTRは「臨地実習で身につけることができた知識や技術」への影響を感じていた.一方で,責任者は知識や技術以外の「新人OTRが抱えている不安」という心理的側面への影響や「個人の資質」にも着目し,不安を払拭するための新人指導を展開していることが窺えた.
【対象・方法】2022年度に日本作業療法士協会に入会した新人OTRと作業療法部門責任者(以下,責任者)を対象とした.新人OTRが所属する1,317施設(10月22日時点)に,研究協力依頼文書,説明文書,Google Formを用いたアンケートのURL及びQRコードを送付した.説明文書にアンケートへの回答をもって同意を得たこととする旨を記載した.アンケートは,新人OTRに対しては,「COVID-19による臨床実習の経験不足が一番影響していると思うもの」について5件法で作成した設問46問と自由記述を,責任者に対しては,COVID-19の影響を受ける前と比較した新人OTRの特性についての設問46問と自由記述とした.収集した回答は新人OTRと責任者の差を確認するためにカイ二乗検定を行った.自由記述はKH Coder(Ver.3.Beta.06a)を用いて共起ネットワークによる分析を行った.なお,本研究は仙台青葉学院短期大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号 0309)を得て実施した.また,研究協力者の同意を得ており,COI関係にある企業等はない.
【結果】アンケートの回収率は,新人OTRでは317施設(回答者426名),責任者では363施設(回答者363名)から回答が得られた.回答者の属性として,新人OTRでは男女比は男性126名,女性299名.平均年齢23.7歳(21歳~58歳).所属先の領域は身体障害領域339名,精神障害領域36名,高齢期領域31名,発達障害領域17名,その他1名.また,責任者では男女比は男性218名,女性145名.平均年齢41.7歳(26歳~60歳).所属先の領域は身体障害領域265名,精神障害領域38名,高齢期領域36名,発達障害領域19名,その他5名.平均経験年数17年目(3年目~39年目).収集した回答はカイ二乗検定の結果,有意な差が認められた(p<.05).共起ネットワークによる分析の結果,新人OTRでは総抽出語数3,999語,異なり語数586語,最も多かった頻出語は「技術」であった.抽出されたカテゴリは7個で,それぞれ「知識や技術」,「社会的スキル」,「様々な領域での臨床実習の経験」,「移乗など直接対象者に触れる機会」,「対象者とのコミュニケーション」,「評価や目標設定,プログラム立案,治療の経験」,「作業療法を実施するための方法」を読み取ることができた.責任者では総抽出語数5,746語,異なり語数947語,最も多かった頻出語は「社会的スキル」であった.抽出されたカテゴリは5個で,それぞれ「評価や判断解釈,治療に必要な知識や技術」,「対象者の家族等と関わる機会」,「対象者とのコミュニケーション」,「実習で経験できなかったことによる不安」,「経験不足よりも個人の資質による影響が大きい」を読み取ることができた.
【結論】新人OTRは「臨地実習で身につけることができた知識や技術」への影響を感じていた.一方で,責任者は知識や技術以外の「新人OTRが抱えている不安」という心理的側面への影響や「個人の資質」にも着目し,不安を払拭するための新人指導を展開していることが窺えた.