第57回日本作業療法学会

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教育

[PR-2] ポスター:教育 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-2-1] 社内教育場面でのCROT-Rの活用と実践

黒田 隆之1, 藤本 一博2 (1.らそうむ内科リハビリテーションクリニック, 2.湘南OT交流会)

【はじめに】当社の新人教育プログラムには,入職1,2年目を対象とした事例発表の機会がある.事例情報の整理を行い,作業療法に対するリーズニングを行うこと,経験の有無に左右されず,作業療法実践を行うために必要な情報やプロセスを学ぶことを目的に3名の発表対象者に対して,CROT-Rを活用した結果,作業療法実践に向け,良好な反応を得たため,ここに報告する.尚,対象者には,発表に対する同意を得ている.
【対象者】入職1年目:A氏(経験年数:4年)入職2年目:B・C氏(経験年数:2年)
【方法】CROT-R導入前に事例作成状況についてヒアリング調査,事例作成後に半構造化インタビューを実施し,活用前後の状況を整理した.
【半構造化インタビュー調査】
Q1.CROT-Rを用いて良かった点をお答えください.
A氏:文献を用いることで,作業療法士自身の不安要素が減少した.症例の性格に合わせたプログラムが立案出来た.
B氏:流れがあり,情報整理がしやすかった.
C氏:情報整理が容易.各項目で視覚的に情報整理が出来ると理解度が良くなる.
Q2.CROT-Rを用いて苦労した点をお答えください.
A氏:生活期では情報が少ないことも多く,十分に記載できない項目があった.
B氏:項目が多く,1つ1つの要点をまとめることが大変だった.
C氏:項目が多く,時間がかかる.初見で簡単に説明を受けるだけでは難しい.
Q3.CROT-Rを用いた結果,ご自身の事例発表はどうなりましたか?
A氏:順を追って説明ができた.使用する作業療法士の経験が浅い程,より活かせると感じた.はじめは自分で考えて,途中から使ったほうがいいと感じた.
B氏:基本戦略・予後予測も項目としてあり,アプローチの枠を設定して始めているので,最初から使いたかった.持っている情報を項目ごとに当てはめて,漏れをなくす,足りていないところを修正するタイミングで使用できるといい.
C氏:事例の整理はしやすかった.作業の文献を調べる機会になったため,過去の経験だけではなく,より根拠に基づいた実践に繋がるという意味では良かった.先輩からのアドバイス・予後予測の項目があり,方向性が立てやすい.
【結果】事例発表にCROT-Rを用いた事で,対象者の情報整理が容易になり,作業選択に結びつけやすくなった.また,項目が複数存在することで,収集出来ていない情報を把握しやすくなり,状況把握にも一定の成果があった.しかし,項目の多さ故に情報収集に時間がかかり,情報の取捨選択が難しい一面もあった.
【考察】今回,CROT-Rを活用した結果,項目の多さが影響し,情報収集,情報整理に時間が割かれた事で,作業療法士としての対象者に対する統合と解釈に困る場面も散見され,項目の取捨選択が難しい面も見られた.しかし,情報収集,情報整理の面では一定の効果は得られた.また,情報整理の点で項目を参考し,文献にて客観性を補填することで経験年数が少なくとも,作業療法士自身が自信を持ってアプローチすることが出来た.松崎 は経験年数1〜3年目の自己効力感が低く,バーンアウトのリスクを指摘している.こうした点からも後輩指導に際に,若い作業療法士が不安なく実践に臨める環境が必要であり,CROT-Rの活用によって,実践場面での不安解消に繋げることが出来ると考える.
【まとめ】今回は指導途中から活用した結果,事例の振り返りが円滑に出来,対象者に対する作業療法のリーズニングに繋がった.結果,後輩指導において視点の拡大と自信につながったと考える.