第57回日本作業療法学会

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教育

[PR-2] ポスター:教育 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-2-2] 作業療法レジュメの新様式 CROT-Rの開発

藤本 一博 (茅ヶ崎新北陵病院)

【はじめに】
 OT実習のレジュメの様式は,1)はじめに 2)一般情報 3)他部門からの情報 4)評価 5)問題点 6)ゴール 7)治療プログラム 8)統合と解釈 9)治療経過 10)結果 11)考察との項目で構成されたモデルを利用することが多く,実習指導者を対象とした調査では,作業療法の専門性を表現しづらいとの結果であった.そこで今回,作業療法リーズニングの要素である物語的リーズニング,科学的リーズニング,実際的リーズニング,倫理的リーズニング,相互交流的リーズニングの5つを参考に,新たなレジュメの様式CROT-R(Clinical Reasoning Ot Tool – Resume)を作成したため,以下に報告する.なお本内容は当院の倫理手続き許可を得ている.
【目的】
 従来のレジュメの項目で作業療法実践を自由に記載することは可能であるも,この大きな枠で自由に発想し,落とし込むには,高い経験と知識が必要となる.その困難さが指導者や学生の双方から指摘されていることから,細かくOTが考慮すべき項目を設定することで,その問題の解消を試みる.特に現代に合わせ,専門性を活かす項目として,「先輩からの指導内容」「カンファレンス内容」などの多職種連携,「人生の物語」「合意形成」などのクライエント中心,「提供スキル」「提供環境」などの,個人因子や環境因子を組み込む形を作り専門性の表現ができるレジュメの様式開発を目的とした.
【方法】
 作業療法リーズニングの手順は,物語的リーズニングから大事な作業を抽出し,科学的リーズニングから作業の重要や効果を裏付けし,実際的リーズニングで作業の実施環境や頻度を検討し,倫理的リーズニングで制度的な制約や限界を考慮する手順が示されている.この手順を参考に,5つのリーズニングを踏まえたレジュメの枠組みを構成する.
【結果】
 CROT-Rの項目は,1)基本情報 2)人生の物語3)本人のニーズ 4)家族のニーズ 5)リハの基本戦略 6)疾患の予後予測 7)物語に関する文献 8)先輩等からの指導,アドバイス 9)他部門評価.カンファレンス内容 10)各種測定,検査値 11)提供する作業について 12)提供作業考察 13)プログラム提供スキルについて 14)提供環境について 15)合意形成 16)目標設定 17)作業の段階づけ 18)他部門との連携 19)作業経過 20)他部門介入結果 21)OT介入結果 22)考察とした.項目を細かく設定することにより,評価項目,評価手順をガイドする働きをもったレジュメの様式となっている.
【考察】
 今回は実習指導者を対象とした調査で,従来のレジュメの様式では専門性が表現しづらいとの結果を受け,新様式の作成を行った.作業療法は医学モデルから作業モデルへの転換期であり,医学モデルベースの様式では,現代の作業療法は表現しづらい状況も生まれてきている.数十年使用されてきたレジュメの様式ではあるが,時代の変化に合わせ見直す時期となっている.今回パイロット的にCROT-Rを作成したが,院内・院外で広く使用を働きかけ,さらに項目の検討や使用方法の検討を行い,従来のレジュメとの併用や移行を目指したい.
【文献】
藤本一博,小川真寛,京極真,編集:作業療法リーズニングの教科書,メジカルビュー社,2022