第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-2] ポスター:教育 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-2-8] ハンドセラピィ指導システム(e-Hand Therapy; e-HAT)の開発と有用性評価

斎藤 和夫1, 鈴木 誠1,2,5, 山中 美季3, 松井 洋鷹4, 山本 淳一5 (1.東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科, 2.東京家政大学大学院人間生活学総合研究科, 3.荻窪病院リハビリテーション科, 4.渕野辺総合病院リハビリテーション室, 5.東京都立大学システムデザイン学部)

【はじめに】
手外科疾患に対するリハビリテーション(ハンドセラピィ)は,疾患や患者に対する個別性が高いことから,術後早期から綿密な治療計画と社会参加に向けた指導を行う必要がある.そのため,セラピストは,専門的な知識と技術に基づくハンドセラピィを個々の患者の状態に応じて提供しなければならない.しかし,セラピスト間で共有できる専門的な知識と技術に関する一貫した教育コンテンツが不足しているのが現状である.本研究は,まず,患者個人に最適なハンドセラピィを提供するための教育コンテンツを作成し,インターネット通信技術を利用したオンライン・オンサイト融合型の教育システム(e-Hand Therapy System:e-HAT)を構築した.次にこのシステムを利用した成果について報告する.本研究は,東京家政大学研究倫理委員会(SKE2021-21)と渕野辺総合病院倫理委員会(21-003),荻窪病院病院長(2021年11月18日)によって承認され実施した.
【方法】
対象は,同意の得られた2施設で実施した.ハンドセラピィに携わる作業療法士10名,経験年数平均は,8.2年であり,指導者1名の経験年数は30年であった.
まず,エビデンスにもとづくハンドセラピィの知識や技術を体系化したマニュアルを作成した.体系化されたマニュアル・評価方法などのコンテンツは,ネット配信可能な形にデータベース化した.次に,対象者と指導者がリアルタイムに情報を送受信するため,Webexを用いた通信環境の整備とクラウド上にデータ保存するシステムの整備を行った.その後,対象者に対してe-HATを試行し,作成したコンテンツをWebexとクラウドを介して運用する際の有用性に関する情報収集を行った.
【結果】
エビデンスに基づくハンドセラピィの知識と技術について,研究レビューに基づいて内容を機能解剖,評価,治療,症例別に区分し,ハンドセラピィコンテンツを作成した(斎藤ら,2022).またWebexによるリアルタイム通信とクラウドによる情報保存のシステムを整備し,対象者とマニュアルを用いた双方向通信を構築した.作成したコンテンツをWebexとクラウド上で試用したところ,ハンドセラピィ教育に有用であるとの意見が得られた.定期的にオンラインとオンサイトの指導を試行したところ,システムの目新しさがある.映像で理解しやすい.準備に時間がかるなどの感想が得られた.定期的なオンライン,オンサイトでの指導の中で,対象者から勉強会の依頼や文献など情報の依頼が増え,勉強会を2021年3回,2022年5回を実施した.さらに症例について学会での発表や論文作成への意欲が高まり,学会発表9回と論文作成2論文報告した.
【考察】
オンライン・オンサイト融合型教育を可能にするe-HATを構築するため,コンテンツの作成,通信システムの整備,対象者からの有用性に関する情報収集を行った.e-HATを導入することにより,日々の問題について,理解を深めることができ,理解をさらに深めたい意欲が高くになり,勉強会や症例報告を通じて,学会への発表,論文作成が実施できたと考える.今後は,e-HATをさらに発展し,新しいコンテンツの作成,指導方法の時期など検討を深めていたい.また,生体センシングを利用した教育システムを検討し,より学習効率の高いシステムの構築を考えている.
【結語】
 e-HATを利用して対象者は,積極的な発言が聞かれ,成果をまとめるなどの変化が見られた.本発表は,JST「ムーンショット型研究開発事業:グラント番号JPMJMS2034」の支援を受けた.