[PR-3-1] 学生における手作りのあかりのボランティア経験と他のボランティア経験の比較
【序論】
本校では,手作りのあかりをこどもホスピス等の施設に寄付する「あかりバンク」の活動に参加している.今回,学生ボランティアを募り,子供達の絵をもとに,あかりの作品を作成,イベントで紹介した後に寄付をする,という機会を得た.子供達の絵をあかりの作品にして別の子供達に提供する,という作業を介した支援は,その過程で関わった人達との繋がりを感じられ,他のボランティア経験よりも高い満足感を得られるのではないかと考えた.
【目的】
本調査の目的は,あかりのボランティア経験者と,あかり以外のボランティア経験者のボランティアに対する意識の相違について検討することである.
【方法】
あかり作りには2022年2月および8月に各10名が参加した.作品は2022年2月に百貨店で,同年10月に動物園でのイベントがあり,他にも福祉機器展等で展示し,一部の学生が案内ボランティアを行った.展示の際には,デザインの絵を描いた子供達とその家族が見に来ることもあった.2022年12月にこどもホスピスへ届け,学生には後日,届けた時の写真を見せた.参加学生には感想文の提出,感想の聞き取りを行った.調査は2023年2月に作業療法学科の学生68名に,ボランティア経験について尋ね,ボランティア活動参加動機尺度,ボランティア活動満足度尺度,ボランティア活動から得た利益尺度1)を行った.あかりのボランティア経験者(あかり群)と,他のボランティア経験者(非あかり群)で各項目得点を比較するため,マンホイットニーのU検定を行った.なお本調査結果の発表に際して,関係者の同意を得ている.
【結果】
52名から有効回答を得た(回収率76.5%).ボランティア未経験者18名,あかり群18名,非あかり群16名であった.あかり群のうち,他のボランティアも経験ある者は10名であった.あかり群と非あかり群の比較では,ボランティア活動参加動機尺度の「自分より恵まれていない人々の事が気になる」,「他の人を助けることを大切に思っている」,「ボランティア活動は新しい友達を作る道筋となる」の3項目で有意差(p<0.05)が認められ,いずれもあかり群の方が「あてはまる」と感じていた.ボランティア活動満足度尺度,およびボランティア活動から得た利益尺度では,有意差は認められず個人差が大きかった.あかり群で「デザインの絵を描いた子が見に来てくれて嬉しい」「自分の作品を紹介して有意義に思えた」「展示の現場で多くの人が見ている場面をみて,より達成感を得られた」「子供達に使ってもらえたら嬉しい」などの感想があった.
【考察】
あかり群では,他のボランティアも経験ある者が過半数で,もともと利他的で参加動機の高い学生が参加していたと考えられる.満足感の個人差が大きいのは,作品として結果が残るため,完成度によって感じ方が異なり,また,必ずしも全員がデザイン画の作者やあかりの利用者の声が聞けたわけではない,ということが影響していると考えられる.しかし参加者の感想から,展示や寄付を通して,絵を描いた子,展示を見に来た人,使用する子供達,などあかり作りの作業を介して間接的に人々との繋がりを意識する機会が得られたことがうかがえた.これにより利他的な考えや「友達をつくる道筋」という感じ方が強まった可能性も考えられる.今後も作業療法教育にボランティアの機会を取り入れていきたい.
文献 1)伊藤順子:高齢者のボランティア活動参加動機とボランティア活動満足感,活動から得た利益および生活満足度との関係.高齢者のケアと行動科学 24:42-52 ,2019
本校では,手作りのあかりをこどもホスピス等の施設に寄付する「あかりバンク」の活動に参加している.今回,学生ボランティアを募り,子供達の絵をもとに,あかりの作品を作成,イベントで紹介した後に寄付をする,という機会を得た.子供達の絵をあかりの作品にして別の子供達に提供する,という作業を介した支援は,その過程で関わった人達との繋がりを感じられ,他のボランティア経験よりも高い満足感を得られるのではないかと考えた.
【目的】
本調査の目的は,あかりのボランティア経験者と,あかり以外のボランティア経験者のボランティアに対する意識の相違について検討することである.
【方法】
あかり作りには2022年2月および8月に各10名が参加した.作品は2022年2月に百貨店で,同年10月に動物園でのイベントがあり,他にも福祉機器展等で展示し,一部の学生が案内ボランティアを行った.展示の際には,デザインの絵を描いた子供達とその家族が見に来ることもあった.2022年12月にこどもホスピスへ届け,学生には後日,届けた時の写真を見せた.参加学生には感想文の提出,感想の聞き取りを行った.調査は2023年2月に作業療法学科の学生68名に,ボランティア経験について尋ね,ボランティア活動参加動機尺度,ボランティア活動満足度尺度,ボランティア活動から得た利益尺度1)を行った.あかりのボランティア経験者(あかり群)と,他のボランティア経験者(非あかり群)で各項目得点を比較するため,マンホイットニーのU検定を行った.なお本調査結果の発表に際して,関係者の同意を得ている.
【結果】
52名から有効回答を得た(回収率76.5%).ボランティア未経験者18名,あかり群18名,非あかり群16名であった.あかり群のうち,他のボランティアも経験ある者は10名であった.あかり群と非あかり群の比較では,ボランティア活動参加動機尺度の「自分より恵まれていない人々の事が気になる」,「他の人を助けることを大切に思っている」,「ボランティア活動は新しい友達を作る道筋となる」の3項目で有意差(p<0.05)が認められ,いずれもあかり群の方が「あてはまる」と感じていた.ボランティア活動満足度尺度,およびボランティア活動から得た利益尺度では,有意差は認められず個人差が大きかった.あかり群で「デザインの絵を描いた子が見に来てくれて嬉しい」「自分の作品を紹介して有意義に思えた」「展示の現場で多くの人が見ている場面をみて,より達成感を得られた」「子供達に使ってもらえたら嬉しい」などの感想があった.
【考察】
あかり群では,他のボランティアも経験ある者が過半数で,もともと利他的で参加動機の高い学生が参加していたと考えられる.満足感の個人差が大きいのは,作品として結果が残るため,完成度によって感じ方が異なり,また,必ずしも全員がデザイン画の作者やあかりの利用者の声が聞けたわけではない,ということが影響していると考えられる.しかし参加者の感想から,展示や寄付を通して,絵を描いた子,展示を見に来た人,使用する子供達,などあかり作りの作業を介して間接的に人々との繋がりを意識する機会が得られたことがうかがえた.これにより利他的な考えや「友達をつくる道筋」という感じ方が強まった可能性も考えられる.今後も作業療法教育にボランティアの機会を取り入れていきたい.
文献 1)伊藤順子:高齢者のボランティア活動参加動機とボランティア活動満足感,活動から得た利益および生活満足度との関係.高齢者のケアと行動科学 24:42-52 ,2019