第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-3] ポスター:教育 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-3-2] 医療系大学生を対象としたレジリエンスと活動における充実感の関連

生方 剛, 野本 義則 (東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】
昨今,大学生は自身の将来に関係する進学や就職への不安,人間関係,新しい環境によるストレスを抱えていることが報じられている.そのような状況を改善し,健やかな成長に導くための取り組みは大変重要であり,その取り組みの一つにレジリエンスを高めることが注目されている.レジリエンスとは「心のしなやかさ」とも表現され,ストレスフルな状況下から個人内の資源および環境資源の両者を活用しながら立ち直ろうとする心理的回復力とされている.レジリエンスは社会的スキルや好ましい生活習慣,ストレス対処力,自己肯定感と関連し,その要因には新奇性の追求,感情の調整,肯定的な未来志向をはじめ,自尊感情や自己効力感が構成要因として報告されている.レジリエンスを高めるための活動には先行研究でスポーツ活動や読書,学習活動が紹介されているが,医療系学生を対象とした報告は少ない.本研究はレジリエンスの具体的な方法論ではなく,個人個人の生活状況とともに活動に対する充実感に着目し,レジリエンス教育につなげるための知見を得ることを目的に実施した.
【対象と方法】
 関東地方の医療系大学で作業療法学を専攻する1年生から4年生の男女81名を対象とした.調査は任意のタイミングで回答できるよう,ウェブアンケートを用いた.筆者所属機関の倫理審査にて承認(21-17H)後,授業後に口頭および書面にて説明し,同意した対象者が回答した時点で同意を得たと見做した.調査内容は1週間あたりの欠席日数,食事回数,身体活動の時間,睡眠時間,身体活動の充実感,文化的活動の充実感とした.期間は2022年9月から10月の1か月間で43名から回答が得られた.データの欠損を確認し,最終的な分析対象は37名となった.なお,身体活動は軽く汗をかく2METs以上の活動,文化的活動は主に,坐位や静止立位で行う2METsまでのゲーム,動画コンテンツの鑑賞,インターネット閲覧の他,創作活動全般とした.レジリエンスの測定は二次元レジリエンス尺度(Bi-dimensional Resilience Scale,以下:BRS)を用いた.BRSは生得的で身につきにくいとされる「資質的要因」と,人とのかかわりの中で意図的に身に着けやすいとされる「獲得的要因」で構成されるレジリエンス測定尺度である.本研究では,人間関係での悩みを抱える学生のレジリエンス特性を把握することを目的にBRSを採用した.分析には重回帰分析を用い,資質的要因,獲得的要因,BRS全体を従属変数とし,調査項目を独立変数とした.有意水準は5%とした.分析にあたっては,EZR on R commander Version 1.5420を用いた.
【結果】
 資質的要因に対して,調査項目のいずれも有意な関連を示さなかった.獲得的要因は身体活動の充実感(P=0.043,95%CI:0.063-4.321)が関連していた.BRS全体では,身体活動の充実感(P=0.030,95%CI:0.643-11.926)が関連していた.文化的活動の充実感は資質的要因,獲得的要因,BRS全体,いずれの要因にも関連を示さなかった.
【考察】
 身体活動の充実度がレジリエンスに関連することが示されているが,これは先行研究における身体活動経験とレジリエンスの関連を支持するものである.一方で文化的活動はレジリエンスに関連するとはいえないことが示されたが,これは調査対象者の文化的活動の機会が身体活動に比べて少ないという状況が関連した可能性がある.本研究ではレジリエンスを高めるためには身体活動の充実感を得ることが望ましいことが導出されたが,文化的活動の機会の高めることや,調査対象者を増やすなどして,文化的活動のレジリエンスへの関連の可能性についてさらに調査を進めていく必要がある.