第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-3] ポスター:教育 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-3-3] 栄養サポートチームにおける作業療法支援の実態調査

井戸川 由花 (医療法人 光陽会 関東病院リハビリテーション科)

【はじめに】
近年,栄養サポートチーム(以下,「NST」と略す.)による栄養療法の介入が多くの患者に影響を与えている.2001年にNSTプロジェクトが開始され,2010年に日本臨床栄養代謝学会(以下,「JSPEN」と略す.)NST専門療法士の資格枠に作業療法士(以下,「OT」と略す.)が追加され,NSTの一員として活動の場を広げている.しかし,NSTにおいて作業療法の支援ができているか否かは調査がないため,OTがNSTで活躍できる可能性は明らかではないと考えられる.
【目的】
NSTにおいて作業療法の支援がどのように行われているのかを調査すること,作業療法活動が推進されることでより効果的なNST活動となり得るための基礎的情報として提供することを目的とする.
【方法】
(1)デザイン:無記名webアンケートを用いた横断的調査.(2)調査対象:JSPEN NST稼働認定施設で有効回答が得られた274施設とした.(3)アンケート期間:2021年3月15日~6月15日.(4)調査方法:JSPEN NST稼働認定全施設の施設長ならびにNST代表者宛てに,ハガキの郵送とEmail配信を行った.(5)調査内容:施設概要,NST形態,NST活動における患者の食行動や補助栄養療法に関する作業療法支援,NST活動における作業療法支援の実態についての質問とした.作業療法支援は35問設け,各支援について職種を問わず行われているか,行われていないか,行われている場合には誰がどのように行っているかを11項目からの選択式とした.(6)分析方法:施設概要,NST形態,NST活動における作業療法支援の実態については集計を行い,NST活動における患者の食行動や補助栄養療法に関する作業療法支援は回答から作業療法の支援が行われているか否かを分類し,その回答合計数を比較検討した.(7)倫理的配慮:本研究は研究倫理委員会において承認後に実施し,調査は各施設の同意のもと行った.
【結果】回答施設数は274で回収率:21.8%であった.
(1)施設概要:施設分類では一般病院が68.6%で,施設の病期では急性期の割合が83.2%と最も高かった.NSTに参加している職種は,医師,管理栄養士,看護師,薬剤師が9~10割を占め,リハ職種では言語聴覚士,理学療法士の順で多く,OTは29.2%であった.(2)作業療法支援の実施状況:職種を問わず作業療法支援が行われている割合は95.5%であった.施設分類において作業療法支援が行われているか否かで割合を比較すると一般病院で作業療法支援が行われていない割合が高かった.(3)作業療法支援の実態:現状では「作業療法支援は十分に行えていない」の割合は35.0%ともっと割合が高く,必要性では「当施設に勤務するOTにNST活動に参加してもらう必要がある」が30.7%,対策としては「NST外の当施設に勤務するOTと相談する」が40.1%と回答が多かった.
【考察】
NSTにおいて作業療法支援が行われている割合が高いことから,職種・介入方法を問わず,作業療法支援が栄養サポート業務において必要な支援項目であると考える.また,作業療法支援の実施状況は高かったが「作業療法支援は十分に行えていない」との回答が多かった.これはNST活動において,作業療法として支援できる内容の理解が不十分であることが考えられる.NSTの一員としてOTが参画することに対しては,OTの栄養学的知識の不足や関心の低さ,診療報酬上の時間的制約のなどの課題を抱えている可能性がある.施設内にOTがいる場合には,NSTとの関わり方について検討していく必要がある.