第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-4] ポスター:教育 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-4-1] 作業療法学生のノンテクニカルスキル獲得の現状と学年間の差

岩上 さやか1, 吉岡 詠美2, 右田 正澄3 (1.国際医療福祉大学小田原保健医療学部作業療法学科, 2.国際医療福祉大学小田原保健医療学部看護学科, 3.国際医療福祉大学小田原保健医療学部理学療法学科)

【目的】現在医療福祉を取り巻く環境は,急速な少子高齢化や地域包括ケアの推進等大きく変化しており,作業療法士の役割として,対象者の住み慣れた環境での自分らしい生活の支援の為に,対象者の視点に立った質の高い支援が求められている.そのためには,ノンテクニカルスキルが重要だと考える.ノンテクニカルスキルとは「テクニカルスキルを補って仕事をより完全にこなす為の認知的,社会的,そして個人的なリソースとしてのスキルであり,安全かつ効率的な業務遂行に寄与するもの」と定義されており,専門技術や知識を補うものである.これには状況認識,リーダーシップ,コミュニケーション,ストレスマネジメント等が含まれ,医療福祉現場で連携して働く上での基盤となる.学生のうちから,ノンテクニカルスキルを高めることは,対象者の気持ちを汲み取り生活を支える観点から重要であり,養成課程の重要な教育的課題だと考える.そこで本研究は,今後の教育的支援検討の為,現行のカリキュラムを履修している学生のノンテクニカルスキルの獲得について,学年による違いがあるかの現状把握を目的とした.
【方法】一単独大学での無記名自記式横断調査研究.研究対象は作業療法学科に在籍する1-4年生161名.調査項目はノンテクニカルスキルである1)「多次元共感性尺度短縮版(以下MES)」10項目,2)「コミュニケーション尺度(以下ENDCOREs)」24項目,3)「学生のリーダーシップ行動尺度(以下リーダーシップ尺度)」31項目,4)「二次元レジリエンス要因尺度(以下レジリエンス尺度)」21項目 5)個人属性6項目.分析は,記述統計を行い,学年間でノンテクニカルスキルに差があるかKruskal-Wallis検定行い,多重比較検定(Dunn-Bonferroni検定)を行った.調査は,対象者に研究目的や方法を文書と口頭で説明し,質問紙の配布後オンラインでの入力をお願いした.本研究は筆者勤務施設の倫理審査の承認を得て行った.
【結果】調査対象者161名のうち,回収数は144名(回収率89.4%)であった.基本属性は平均年齢20歳,1年生40名,2年生39名,3年生35名,4年生30名であった.ノンテクニカルスキルを学年間で比較した結果, 1)MESは,【想像性】(p=0.044)で主効果が認められたが,学年間での有意差はなかった.2)ENDCOREsは,【自己主張】(p=0.026)と【他者受容】(p=0.012)で主効果が認められた.【自己主張】は1年生と4年生間 (p=0.026),【他者受容】は2年生と3年生間(p=0.010) に有意差があった.3)レジリエンス尺度は,【行動力】(p=0.005)と【自己理解】(p=0.006)と【獲得的レジリエンス】 (p=0.032)で主効果が認められた.【行動力】は1年生と4年生間(p=0.011),【自己理解】は2年生と3年生間 (p=0.003)に有意差があったが,【獲得的レジリエンス】は学年間の有意差はなかった.4)リーダーシップ尺度は主効果が認められなかった.
【考察】本学の作業療法学科では3年生から学外施設での臨床実習が行われ,本格的にノンテクニカルスキルを求められる場面が増える.学年間のノンテクニカルスキル獲得の現状として,低学年(1-2年生)と高学年(3-4年生)との間で差があり,ノンテクニカルスキル獲得は臨床実習での経験が影響していると考えられる.学生は,臨床実習で対象者や指導者等と接することで自分の意見を受け入れてもらえるように考え言語化することや,対象者や指導者等の立場を理解した上で関わることができるように成長していると考える.他方,問題解決や自己指向的反応などの,差が明らかに認められなかった項目は,学内での講義・演習等で教育していく必要があると考える.本研究は,単独大学学科での調査である為,今後は他学科との比較や他大学との比較を行い,より具体的な教育的支援を検討していく.