[PR-4-3] 作業療法学生の就職に向けた不安と就職先選定での重要因子に関する調査報告
【はじめに】COVID-19の流行から3年が経過した.社会が混乱していた中,作業療法の教育現場も試行錯誤しながらオンライン授業などを取り入れつつ現在に至っている.学生は本来,自身の興味関心を基に学内での学習や臨床実習での経験を経てキャリアデザインを構築していくと思われるが,コロナ禍ではグループワークや実技練習,臨床実習などあらゆる場面で教育方法の変更が余儀なくされた.教育方法の変更は,就職への不安感等に影響すると思われたため,就職に向けた不安と就職先選定についてアンケート調査を行った.
【目的】作業療法学生が抱いている就職に向けた不安と就職先選定で重要視していることを把握し,さらにコロナ禍前後の違いによる差を検討する.
【方法】研究対象者:本校(3年課程)2019年度作業療法学科3年生32名および,2022年度作業療法学科3年生38名,合計70名.2019年度生は履修科目をすべてコロナ禍前に修得しているのに対し,2022年度生は緊急事態宣言により入学直後からオンライン授業となり,宣言解除後も人数や時間を制限した学習が続いた.臨床実習は学内実習が特例として認められ,1年時の見学実習は全学生,期間の違いはあるものの2年次の評価実習は約7割,3年時の臨床実習では約半数の学生が学内実習対応となった.授業や学内実習では対象者の映像資料を活用するなどして臨床像を補う工夫を行った.なお,対象者には本研究の目的・内容および個人情報の管理に関する説明をし, 調査票の提出をもって同意とした.
調査内容:松田らの職業選択不安尺度と石坂らの就職決定因子を参考に,独自で作成した就職不安調査票(全17項目)および,就職決定調査票(全23項目)を用いた.両調査票は各項目において,非常にあてはまる/非常に重要である場合を3点~全くあてはまらない/全く重要でない場合を0点とする4件法とした.
分析方法:不安調査票は「非常にあてはまる」「当てはまる」と「全く当てはまらない」「当てはまらない」の2群に分け2019年度生と2022年度生の度数の違いをχ2検定にて実施した.決定調査票に関しても同様に2群に分けχ2検定を実施した(有意水準5%,両側検定).
【結果】有効回答数は90.0%であった.就職不安調査では「専門的知識・技術がたりていないのではないかと不安である」ではどちらの学生も不安感が高かった.一方,「社会に出ていくことが不安である」「対象者と良好な関係が築けるか不安である」では2022年度生に不安感が多く有意な差が認められた(p=0.0259,0.0027).就職決定調査では「良好な人間関係」「新人研修の充実」ではどちらの学生も重要度が高かった.一方,「勤続年数の長い先輩が多い」「スタッフが多い」「病院・施設の綺麗さ」では2022年度生に重要視する人が多く有意な差が認められた(p=0.0096, 0.0001,0.0286).
【考察】コロナ禍に学んだ学生は,専門性もとより社会に出ることや関係作りに不安感を感じている学生が多く,モラトリアムな時期を限られた方法で学習してきたことによる影響が考えられた.教育方法が変化しても個人の豊かな成長を損なわない体制作りが必要である.就職先選定に関しては,専門職としての責任感に通ずる新人研修や心理的な働きやすさに繋がる人間関係はどちらの年度の学生も重要視していることが伺えた.一方で,勤続年数やスタッフ数,設備の綺麗さなどもコロナ禍の学生は重要視する傾向にあり,表面的に見える要素も気にかける心理は臨床経験の乏しさが影響していると察せられた.
【目的】作業療法学生が抱いている就職に向けた不安と就職先選定で重要視していることを把握し,さらにコロナ禍前後の違いによる差を検討する.
【方法】研究対象者:本校(3年課程)2019年度作業療法学科3年生32名および,2022年度作業療法学科3年生38名,合計70名.2019年度生は履修科目をすべてコロナ禍前に修得しているのに対し,2022年度生は緊急事態宣言により入学直後からオンライン授業となり,宣言解除後も人数や時間を制限した学習が続いた.臨床実習は学内実習が特例として認められ,1年時の見学実習は全学生,期間の違いはあるものの2年次の評価実習は約7割,3年時の臨床実習では約半数の学生が学内実習対応となった.授業や学内実習では対象者の映像資料を活用するなどして臨床像を補う工夫を行った.なお,対象者には本研究の目的・内容および個人情報の管理に関する説明をし, 調査票の提出をもって同意とした.
調査内容:松田らの職業選択不安尺度と石坂らの就職決定因子を参考に,独自で作成した就職不安調査票(全17項目)および,就職決定調査票(全23項目)を用いた.両調査票は各項目において,非常にあてはまる/非常に重要である場合を3点~全くあてはまらない/全く重要でない場合を0点とする4件法とした.
分析方法:不安調査票は「非常にあてはまる」「当てはまる」と「全く当てはまらない」「当てはまらない」の2群に分け2019年度生と2022年度生の度数の違いをχ2検定にて実施した.決定調査票に関しても同様に2群に分けχ2検定を実施した(有意水準5%,両側検定).
【結果】有効回答数は90.0%であった.就職不安調査では「専門的知識・技術がたりていないのではないかと不安である」ではどちらの学生も不安感が高かった.一方,「社会に出ていくことが不安である」「対象者と良好な関係が築けるか不安である」では2022年度生に不安感が多く有意な差が認められた(p=0.0259,0.0027).就職決定調査では「良好な人間関係」「新人研修の充実」ではどちらの学生も重要度が高かった.一方,「勤続年数の長い先輩が多い」「スタッフが多い」「病院・施設の綺麗さ」では2022年度生に重要視する人が多く有意な差が認められた(p=0.0096, 0.0001,0.0286).
【考察】コロナ禍に学んだ学生は,専門性もとより社会に出ることや関係作りに不安感を感じている学生が多く,モラトリアムな時期を限られた方法で学習してきたことによる影響が考えられた.教育方法が変化しても個人の豊かな成長を損なわない体制作りが必要である.就職先選定に関しては,専門職としての責任感に通ずる新人研修や心理的な働きやすさに繋がる人間関係はどちらの年度の学生も重要視していることが伺えた.一方で,勤続年数やスタッフ数,設備の綺麗さなどもコロナ禍の学生は重要視する傾向にあり,表面的に見える要素も気にかける心理は臨床経験の乏しさが影響していると察せられた.