[PR-4-4] 新入生における身体的・精神的自覚症の傾向
【はじめに】
昨今,教育カリキュラムが見直され,学生が4年間の学習を乗り越えていく上での心身のフォローがますます重要となってきている.学生が身体的・精神的健康を大きく損ねる前に介入できることが望ましく,そのためには学生の状態を早期から把握する必要がある.そこで,本学院では入学時に身体的・精神的健康状態を把握できるCornel Medical Index(以下,CMI)を実施している.CMIは教育や職場など多様な場面で用いられ様々な報告があるが,各項目の分析による報告は少ない.本研究は,最近の7年間の新入生に実施ししたCMIの結果から,この年代の身体面・精神面の傾向を探り,支援活動の一助となることを目的とした.
【対象と調査内容】
対象は,2016年から2022年に回答した本学院新入生のうち,研究に同意を得られた218名(男108名,女110名,平均年齢18.18±0.91歳)である.調査は入学時にCMIを実施した.なお,CMIは身体的自覚症12項目と精神的自覚症6項目について自己回答するもので,自覚症状と神経症領域(Ⅰ~Ⅳ)を判定できる.
【分析方法】
1.「全体の分析」1)身体的自覚症と精神的自覚症の総有訴点における相関(Spearman 順位相関係数)および総有訴率の比較(Wilcoxon 符号付順位検定),2)身体的/精神的自覚症の各項目有訴率(中央値)の比較(Friedman検定)2.「神経症群(Ⅳ・Ⅲ)と正常群(Ⅱ・Ⅰ)での分析」身体的/精神的自覚症の有訴率(中央値)による項目の分析を行った.統計処理にはSPSS(Version22.0)を使用し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
1.「全体の分析」1)身体的自覚症と精神的自覚症の総有訴率との間には,有意な相関関係が認められ(r=.617,p<0.01),身体的自覚症と精神的自覚症の総有訴率の比較では,有意に精神的自覚症が高かった(p<0.01).2)身体的自覚症および精神的自覚症の各項目の有訴率の比較では,身体的自覚症では習慣・皮膚・目と耳が有意に他項目よりも高く(p<0.05),精神的自覚症では不適応が有意に他項目よりも高かった(p<0.01).2.「神経症群と正常群での分析」神経症群と正常群ともに,全体の分析でみられた結果同様,身体的自覚症では習慣・皮膚・目と耳の項目が上位を占めたが,疲労度の項目が神経症群では2/12位であったのに対し正常群では10/12位であった.精神的自覚症では両群ともに不適応の項目が高かったが,神経症群では全項目で15%以上の有訴率がみられる一方,正常群では他項目は0%であった.
【考察】
今回,身体的自覚症と精神的自覚症との間に正の相関が見られ,また精神的訴えが身体的訴えより多いことが分かった.この年代はこれまで報告されていたように身体面よりも精神面の不安定さを持ちやすく,また精神不安定を持つ場合は身体不調も見られやすいといえる.つまり,目に見えやすい身体の訴えがあった際には,目に見えにくい精神状態が不安定になっているリスクを念頭において対応する必要があることが改めて伺えた.また項目の分析から,この年代は身体的には習慣・皮膚・目と耳に関すること,精神的には不適応の訴えが多い.中でも身体面にて神経症群は疲労を訴えやすく,精神面にて健常群は不適応以外の訴えが少ないという特徴が伺えた. 神経症群を精神的不安定さと捉えると,学校生活にて不適応以外の訴えがみられ,特に疲労の訴えが増えてきた学生は精神的に不安定になっているリスクが考えられ,積極的介入が必要になってくると推察する.
昨今,教育カリキュラムが見直され,学生が4年間の学習を乗り越えていく上での心身のフォローがますます重要となってきている.学生が身体的・精神的健康を大きく損ねる前に介入できることが望ましく,そのためには学生の状態を早期から把握する必要がある.そこで,本学院では入学時に身体的・精神的健康状態を把握できるCornel Medical Index(以下,CMI)を実施している.CMIは教育や職場など多様な場面で用いられ様々な報告があるが,各項目の分析による報告は少ない.本研究は,最近の7年間の新入生に実施ししたCMIの結果から,この年代の身体面・精神面の傾向を探り,支援活動の一助となることを目的とした.
【対象と調査内容】
対象は,2016年から2022年に回答した本学院新入生のうち,研究に同意を得られた218名(男108名,女110名,平均年齢18.18±0.91歳)である.調査は入学時にCMIを実施した.なお,CMIは身体的自覚症12項目と精神的自覚症6項目について自己回答するもので,自覚症状と神経症領域(Ⅰ~Ⅳ)を判定できる.
【分析方法】
1.「全体の分析」1)身体的自覚症と精神的自覚症の総有訴点における相関(Spearman 順位相関係数)および総有訴率の比較(Wilcoxon 符号付順位検定),2)身体的/精神的自覚症の各項目有訴率(中央値)の比較(Friedman検定)2.「神経症群(Ⅳ・Ⅲ)と正常群(Ⅱ・Ⅰ)での分析」身体的/精神的自覚症の有訴率(中央値)による項目の分析を行った.統計処理にはSPSS(Version22.0)を使用し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
1.「全体の分析」1)身体的自覚症と精神的自覚症の総有訴率との間には,有意な相関関係が認められ(r=.617,p<0.01),身体的自覚症と精神的自覚症の総有訴率の比較では,有意に精神的自覚症が高かった(p<0.01).2)身体的自覚症および精神的自覚症の各項目の有訴率の比較では,身体的自覚症では習慣・皮膚・目と耳が有意に他項目よりも高く(p<0.05),精神的自覚症では不適応が有意に他項目よりも高かった(p<0.01).2.「神経症群と正常群での分析」神経症群と正常群ともに,全体の分析でみられた結果同様,身体的自覚症では習慣・皮膚・目と耳の項目が上位を占めたが,疲労度の項目が神経症群では2/12位であったのに対し正常群では10/12位であった.精神的自覚症では両群ともに不適応の項目が高かったが,神経症群では全項目で15%以上の有訴率がみられる一方,正常群では他項目は0%であった.
【考察】
今回,身体的自覚症と精神的自覚症との間に正の相関が見られ,また精神的訴えが身体的訴えより多いことが分かった.この年代はこれまで報告されていたように身体面よりも精神面の不安定さを持ちやすく,また精神不安定を持つ場合は身体不調も見られやすいといえる.つまり,目に見えやすい身体の訴えがあった際には,目に見えにくい精神状態が不安定になっているリスクを念頭において対応する必要があることが改めて伺えた.また項目の分析から,この年代は身体的には習慣・皮膚・目と耳に関すること,精神的には不適応の訴えが多い.中でも身体面にて神経症群は疲労を訴えやすく,精神面にて健常群は不適応以外の訴えが少ないという特徴が伺えた. 神経症群を精神的不安定さと捉えると,学校生活にて不適応以外の訴えがみられ,特に疲労の訴えが増えてきた学生は精神的に不安定になっているリスクが考えられ,積極的介入が必要になってくると推察する.