第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-4] ポスター:教育 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PR-4-5] 学生の臨床実習における職業的モデルとの出会いとその影響に関する検討

山形 力生 (奈良学園大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法専攻)

【はじめに】臨床実習は現場を体験する貴重な経験であり,特に自分が目指す理想像を体現するモデルともいうべき職業的モデル(以下OTモデル)となるセラピストの出会いは,職業的アイデンティティに影響を与えると考えられる.筆者らは,臨床実習において,このようなOTモデルとの出会いがあったか,またそのOTモデルはどのような特徴を持ち,学生のセラピスト観や作業療法観に影響を与えたかについて報告した(2019,山形).今回,さらに学生が出会えたというOTモデルの背景,すなわち背景となる臨床現場やOT部門の役割などについて調査し,OTモデルとの関連を検討したので報告する.【方法】対象は,作業療法養成大学において4年次総合実習(7週間)を経験した学生(1期実習89名, 2期実習93名)を対象とした.1期および2期の各々の実習終了後,OTモデルとの出会いの有無について調査し,出会いがあった場合は,職業的モデル特性(2004,藤井ら)に関する質問紙の回答を求めた.また,学生のセラピスト観や作業療法観への影響の有無についてあわせて調査した.職業的モデル特性(以下VM)に関する質問紙は「患者への医療を大切にする作業療法士(以下OTR)」,「学生への誠意ある態度を持つOTR」,「専門家としての力量を持ったOTR」,「臨床への熱意を持っているOTR」の4因子にて説明される.モデルの背景因子としては,勤めてみたいと思う臨床現場である(EV_1),チームの中でOTの役割がはっきりしている(EV_2),やりがいのあるOTの役割をとっている(EV_3),理想的なシステム(他部門も含め)有した施設である(EV_4),訓練室や器具などの設備が備わっている(EV_5)の各設問に,①あてはまらない,②あまりあてはまらない,③どちらでもない,④少しあてはまる,⑤非常にあてはまる,の1~5点にて回答を求めた.尚,調査は目的等を説明し同意を得て実施した.次に,職業的モデル特性の合計得点(以下VM_TO)および構成の4因子および背景因子(EV_1~EV_5)との相関係数を求めた.さらにVM因子を従属変数,背景因子を独立変数として重回帰分析を行った.有意水準はいずれも5%とした.【結果】1期では,79.8%,2期では,79.6%がOTモデルと出会ったと回答した.背景因子のうちVM_TOと特に高い相関がみられたのは,1期実習でEV_3(r=.67)およびEV_4(r=.73),2期実習ではEV_3(r=.61),EV_4(r=.60)だった.また,VMの4因子について得点間の分散分析の結果,有意差がみられたため(p<.0001),FisherのPLSDによる多重比較を行ったところ,1期,2期とも「患者への医療を大切にするOTR」の因子(以下VM_F1)が最も高いことが確認された.また,VM_F1因子と背景因子との相関では,1期実習でEV_3(r=.63)およびEV_4(r=.67),2期実習ではEV_2(r=.50),EV_3(r=.56),EV_4(r=.51)と有意な相関をみとめた.ステップワイズ法による重回帰分析では,EV_3およびEV_4の2要因にて有意となった(R2=.503,β=.380,β=.390).同様に2期実習では,EV_3にて有意となった(R2=.265,β=.515).【考察】学生が臨床現場で出会ったセラピストにOTモデルと感じた要素は医療を大切にしていると感じる人物像と考えられ,その施設の背景の特性が影響している可能性が示唆された.特に,臨床現場のセラピストがやりがいのある作業療法を展開し,しっかりとしたチーム医療を体現する機能を有する中で役割を遂行している姿がOTモデルとして魅力的なものにしていると考えられた.1期と2期の背景因子の違いは,セラピストをみる視点が1期の実習経験により拡がったためと考えた.