第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

教育

[PR-4] ポスター:教育 4

Fri. Nov 10, 2023 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PR-4-7] 新宿区の作業療法士養成校における「内藤とうがらし」栽培が教育に活かされた一経験

熊谷 友敬1, 田中 力愛1, 大塚 萌1, 加藤 駿一1, 成田 重行2 (1.日本教育財団 首都医校作業療法学科, 2.内藤とうがらしプロジェクト)

【序論】
 本校は,東京都新宿区にある作業療法士(以下OT)養成校である.新宿には地野菜「内藤とうがらし」があり,区内の各機関(教育・福祉・産業)で栽培され,産学連携等で活用されている.我々は,内藤とうがらしがOT教育に活かせるのではないかと考え,2021年から試験的に栽培を開始した.今回は2021年~2022年の活動を振り返り,教育に活かせた点と,課題について検討した.
【目的】
 内藤とうがらしを用いた園芸を振り返り,OT教育に活かすための示唆を得る事.
【方法】
 <対象>担任3名がOT学科1~4年生から有志を募った.2021年度は3年生5名,2022年度は1年生10名,2年生5名が参加した.<道具>内藤とうがらし20株.<内容>2021年は定植・水やり・観察・花壇整備・収穫・学科インスタグラム・七味とうがらし作りと配布・とうがらし新聞,2022年は前年内容に加え,収穫祭を行った.<期間と時間>2021年度は5月~翌3月,2022年度は5月~12月に行った.時間は主に放課後で,水やりは10分程度,他は1時間程度であった.<場所>栽培はA校の花壇,加工は木工室と調理室,収穫祭は日常生活活動室で行った.<分析>担任間で様子を協議した.<研究倫理>参加学生,関係者に同意を得た.本報告と利益相反関係にある企業等は無い.
【結果】
 結果は,園芸が教育に活かされた内容を平文で,課題を『』で示す.5月の定植では「内藤とうがらしプロジェクト(種を現代に復活させた団体)」の説明を受け,園芸の理解と意欲が高められた.花壇が同団体より「内藤とうがらしロード」と命名されHPで紹介されたり,定植がケーブルテレビで放送されたことで,地域と繋がりができた.定植では上下学年間交流ができた.5月以降の「水やり」では『課題は,毎回水汲みの手間が生じたこと,水やりの習慣化,夏季休暇中の当番であった』.ある学生が象ジョーロを持参し,他の学生も真似して象ジョーロ集団が結成され,水やり意欲が高まった.学生から教員を水やりに誘う様子が見られた.観察・花壇整備では,学生が学科インスタグラムに掲載し,花や実がついた時は,関心が高まった.『花壇整備の課題は,強風・乾燥・害虫・ごみであった』.とうがらしは強く,痛んでも手入れで回復した.収穫は8月~12月で,収穫最終日は教員と学生が参加し,皆意欲的であった.10月の収穫祭では,とうがらし黙食競争や足湯を行い,集団活動の機会が得られた.『課題は,辛みが苦手な学生でも楽しめる方法の模索であった』.2月~3月には「七味とうがらし作り」を行い,学校職員や学生家族に配布した.加工は楽しんでいた一方,『課題は,辛み成分への対応であった』.また,2月に「とうがらし新聞(内藤とうがらし栽培を報告する新聞)」に学生が記事を書き,区内の学校に配布され,本校の活動が周知された.
【結論】
 内藤とうがらしは,都心部でも栽培が可能であり,通年で多くの集団活動の機会が得られた.園芸はOT各領域で用いられており1),学内で園芸が経験できたことは,教育上有益と考えられた.課題の『水やり』は,学内で再検討したい.また,今後は『辛み』が苦手な学生でも楽しめる方法を調査し,学生の参加に繋げたい.今回,内藤とうがらしを栽培して,地域活動を知ることができた.OT養成校における園芸の活用法は「他校交流,介護予防」1)が挙がっており,今後は内藤とうがらしを介して,他校や住民と関わりを持っていきたい.
(文献)
1)爲近岳夫ら:作業療法士養成課程における園芸を用いた教育実践報告,2021.