[PR-7-1] 作業療法学生の情動知能が学習成績に及ぼす影響に関する予備的研究
【序論】一般社団法人日本作業療法士協会の倫理綱領では,作業療法士としての知識や技術の他に人権の尊重や良心,他職種の人々への尊敬や協力など,情意領域に関わる事項が定められている.このため,作業療法士を目指す学生(以下,学生)にとっても情意領域における様々な能力の向上は重要である.また学生は,最終学年の6カ月前後の長い期間を国家資格取得に向けた受験勉強に費やしているため,ここでもストレス耐性や自己のコントロールなどの情意領域の能力が必要とされている可能性がある.しかし,学生の学習成績に対する情意領域の影響を検討した研究報告は少ない.
【目的】本研究では,学生の情動知能(Emotional Intelligence:以下,EI)を標準化された評価尺度を用いて,一般社会人のEIと比較検討した.加えて,国家試験受験準備期間における学生の学習成績に対するEIの影響の有無とその因子を検討した.
【対象】対象は,神戸学院大学総合リハビリテーション学部に所属し,2022年2月に作業療法士国家試験を受験した学生(4年次年)とした.本研究を行うにあたり,対象となった学生に対しては口頭及び書面による説明を行い,文書で承諾を得た.また本研究は,人を対象とする研究等倫理審査委員会に承認を得ている.
【方法】対象となった学生29名(男性12名,女性17名)に対し,EIの評価として標準化された尺度であるEmotional intelligence scale(以下,EQS)を2022年1月に実施した.また,模擬試験運営会社による作業療法士国家試験模擬試験(以下,模試)を2021年10月~2022年1月の期間に計5回実施した.分析として,内田ら(2001)が報告している社会人(以下,一般社会人)1566人(男性1212名,女性354名)と学生のEQS総合得点及び下位尺度(9つの対応因子)得点の平均値を比較した.加えて,模試の1回目と5回目の得点差の値が中央値以上の学生15名を「高成長群」,中央値未満の学生14名を「低成長群」とし,2群間におけるEQS総合得点及び下位尺度の得点をMann–Whitney U検定を用いて比較検討した(有意水準5%).
【結果】一般社会人と学生のEQS得点を比較した結果,総合得点及び下位尺度得点のすべてにおいて,一般社会人に比し,学生が高い結果となった(一般社会人総合得点:118.34±35.21点,学生総合得点:148.14±27.57点).また,「高成長群」及び「低成長群」のEQS得点の比較においては,2群間の総合得点に有意な差はみられなかった.しかし,下位尺度の対応因子の1つである「状況コントロール」の得点において,「低成長群」に比し「高成長群」で有意に高い結果がみられた(p<0.05).
【考察】本研究の結果から,最終学年で卒業直前の時期の学生は,一般社会人に比してEIが高い可能性が示唆された.また作業療法士国家試験受験に向けた学習成績に関しては,学生の状況コントロール力が,国家資格取得に向けた学習成績の向上に影響する1つの因子である可能性が示唆された.今後の研究では,継続して研究を積み重ねることで対象者数を増やし,統計学的に信頼性を高めていく必要がある.また,学生の成績とEQS得点との相関関係や,入学直後の1年次生とのEQS得点の比較検討も行う必要があると考える.
【目的】本研究では,学生の情動知能(Emotional Intelligence:以下,EI)を標準化された評価尺度を用いて,一般社会人のEIと比較検討した.加えて,国家試験受験準備期間における学生の学習成績に対するEIの影響の有無とその因子を検討した.
【対象】対象は,神戸学院大学総合リハビリテーション学部に所属し,2022年2月に作業療法士国家試験を受験した学生(4年次年)とした.本研究を行うにあたり,対象となった学生に対しては口頭及び書面による説明を行い,文書で承諾を得た.また本研究は,人を対象とする研究等倫理審査委員会に承認を得ている.
【方法】対象となった学生29名(男性12名,女性17名)に対し,EIの評価として標準化された尺度であるEmotional intelligence scale(以下,EQS)を2022年1月に実施した.また,模擬試験運営会社による作業療法士国家試験模擬試験(以下,模試)を2021年10月~2022年1月の期間に計5回実施した.分析として,内田ら(2001)が報告している社会人(以下,一般社会人)1566人(男性1212名,女性354名)と学生のEQS総合得点及び下位尺度(9つの対応因子)得点の平均値を比較した.加えて,模試の1回目と5回目の得点差の値が中央値以上の学生15名を「高成長群」,中央値未満の学生14名を「低成長群」とし,2群間におけるEQS総合得点及び下位尺度の得点をMann–Whitney U検定を用いて比較検討した(有意水準5%).
【結果】一般社会人と学生のEQS得点を比較した結果,総合得点及び下位尺度得点のすべてにおいて,一般社会人に比し,学生が高い結果となった(一般社会人総合得点:118.34±35.21点,学生総合得点:148.14±27.57点).また,「高成長群」及び「低成長群」のEQS得点の比較においては,2群間の総合得点に有意な差はみられなかった.しかし,下位尺度の対応因子の1つである「状況コントロール」の得点において,「低成長群」に比し「高成長群」で有意に高い結果がみられた(p<0.05).
【考察】本研究の結果から,最終学年で卒業直前の時期の学生は,一般社会人に比してEIが高い可能性が示唆された.また作業療法士国家試験受験に向けた学習成績に関しては,学生の状況コントロール力が,国家資格取得に向けた学習成績の向上に影響する1つの因子である可能性が示唆された.今後の研究では,継続して研究を積み重ねることで対象者数を増やし,統計学的に信頼性を高めていく必要がある.また,学生の成績とEQS得点との相関関係や,入学直後の1年次生とのEQS得点の比較検討も行う必要があると考える.