第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-7] ポスター:教育 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-7-3] 大学生における自己調整学習に関する文献レビュー

鹿田 将隆, 篠原 和也 (常葉大学保健医療学部)

【はじめに】
 作業療法養成校は,18歳人口減少や高等教育のユニバーサル化に伴い,学生の確保に困難を抱えている.入学後も成績不良や進路変更などに伴う休学や退学する学生もあり,その背景には学力低下や自己管理困難が指摘されている(輿,2019).学力低下に対しては,学習者が主体的に学習に取り組む自己調整学習が着目されている.自己調整学習は,メタ認知,動機づけ,および行動において,自分自身の学習過程に能動的に関与し,制御を行うような学習形態と定義される(Zimmerman,1989).しかし,大学生を対象とした自己調整学習に関する概観を示した研究はない.そこで本研究の目的は,大学生を対象とした自己調整学習に関する研究状況を文献レビューにより明らかにすることである.本研究において,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】
 文献検索はCiNii,医中誌Web Ver.5を使用し,検索語は「大学生 and 自己調整学習」,検索期間は2012年以降で,過去20年間の原著論文を対象に実施した(2023年1月5日).適格基準は,①大学生を対象とした研究報告であること,②学習とそれに基づく方針の記述があることとした.この際,体育を対象とした自己調整学習に関する報告は除外した.適格基準を満たした文献から,著者名,表題,掲載誌名,掲載年,研究デザイン,目的,結果に関する情報を抽出し,アブストラクトフォームを作成した.
【結果】
 CiNiiから49件,医中誌から8件が検索され,適格基準を満たしたのは19件であった.対象文献の掲載年は最も多い順に2021年が6件,2020年,2019年が各3件,2018年,2013年が各2件,2022年,2016年,2014年は各1件であった.研究デザインは,調査研究が17件,介入研究が2件であった.
 目的と結果の内容から,①自己調整学習と他の概念との関連を検討したもの(8件),②特定の対象者・場面での自己調整学習を調査したもの(8件),③介入による自己調整学習の変化を検討するもの(2件),④尺度開発に関するもの(1件),といった4つに大別された.①の他の概念として,批判的思考態度,オンライン授業に関する評価や自己効力感,Gritと目標志向性,動機づけモニタリング傾向,コスト感などがあり,自己調整学習との関連が示されていた.②は,看護学生や教職課程学生の自己調整学習,看護学生の実習場面,オンライン授業などの場面における自己調整学習が調査されていた.理学療法および作業療法学生を対象とした報告はなかった.③では,主体的に学ぶ力を育む教育方法をデザインして取り組んだ効果を検証する報告や1年次にアカデミックスキルの習得を目的とした教育成果を検証する報告があった.④は,英語学習に対する自己調整学習を測定するための尺度開発であった.
【考察】
 自己調整学習に関する報告は近年増加傾向であることがわかったが,看護学生を対象とした報告はあるものの,理学療法および作業療法学生を対象とした報告はなかった.自己調整学習と他の概念との関連の検討であがった項目から,自己調整学習が行える学生の特徴やそれを促進するための要因が少しずつ明らかになっていることがわかった.しかし,介入研究は2件しかなく,未だ試行の段階であると考えられる.養成校は「学ぶ場」から「育てる場」へと移行した(浅井,2012)という指摘もあり,養成校は学生の教育に積極的に関与していく必要がある.そのためにも,作業療法学生を対象とした自己調整学習の現状や特徴,促進するための授業デザインの構築と検証が今後必要である.