第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-7] ポスター:教育 7

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-7-5] Team-Based Learning(TBL:チーム基盤型学習)の手法を応用した初年度作業療法学生の授業の試み

外里 冨佐江, 北澤 一樹, 勝山 しおり, 松下 雅子, 土屋 謙仕 (長野保健医療大学)

はじめに:講義形式の授業は,多くの情報を系統的に提供できる方法であるが,一方的な知識の伝授となる.近年,学生の集中力や興味が続かないことが多いと指摘され,Active Learning(学生の能動的学習)が推奨されている.Team-Based Learning(TBL:チーム基盤型学習)はActive Learningの促進に焦点を合わせ,知識の獲得だけではなく,さまざまな汎用的能力を培うことに配慮した授業モデルの一つである.多くの医療系教育において導入され,高い学習効果が報告されているが(竹本毅ら2010,安原智久ら2020),しかし,作業療法教育に導入された報告は少ない.
目的:初年度の作業療法教育にTBLの手法を応用した授業計画の実践を報告する.
方法:TBLは,単なるグループ学習とは異なり,成功に導くためには,教員の精緻な教授戦略・授業設計が必要となる. 田宮憲(2014)は,授業を成功に導くための基本的なフレームワークに,以下の4つを挙げている.(1)適切なチーム編成(Proper Teams),(2)個人・チームの学習の質を高めるための準備過程(Readiness)(3)応用課題の設定とその解決に向けた活動(Application)(4)学生による相互評価(Peer Evaluations)である.本抄録で取り上げた授業科目は,作業療法評価学総論(一コマ90分,15回,教員一名,一年生対象,後期)であった.今回は初めてのTBLの導入であることから,前述のフレームワークに則り授業計画を行なった.(1)チーム編成は,五十嵐ゆかり(2015)の文献を参考にし,チーム編成のプロセスに透明性を確保した.2)準備過程では,「準備確認プロセス」という一連の作業を学生に課すために,問題解決のための1-4課題を設定した.それぞれ「個人向け課題」と「グループ向け課題」を準備し,事前学習の強化とチーム内ディスカッションの活性化を狙った.(3)応用課題では,5-7課題を設定し,それぞれの課題を追うごとに事例の介入への手がかりを学習できるように段階づけた.(4)課題8では,ポスターによる展示で,それぞれ他チームへの評価を行い,また質問を記入できるように工夫した.次回の授業で,それぞれのチームが質問への回答をする時間を設けた.学生の成績は,以下の項目をそれぞれ1-5点の配点で評価した.個人成績は,「事前課題の提出」と「内容」,チーム成績は,「課題の内容」,「ポスター内容」,「質問への回答」「ポスターの相互評価」とした.授業を成功に導けたかどうかは,「学生の能動性の評価」と「授業評価」とした.「学生の能動性の評価」は,事前課題の提出率とした.「授業評価」は,最終授業終了後に学生が無記名で行う0-5段階の授業評価アンケートとした.
結果:事前課題の提出は,98%の学生が提出を行なった.無記名による授業評価アンケートでは「予習・復習をやったか」は,5点中,4.43(前年3.8),「意欲的に取り組んだ」は,4.57(前年4.25),「教員は意欲的に取り組んだ」は,4.73(前年3.95)であった.「時間数を増やしてほしい」というコメント以外は好意的だった.
考察:初回オリエンテーションで,授業の仕組みと成績評価について十分に説明したためか,課題の提出が良好であった.成績評価の透明性も意欲につながったと考える.今後は,課題内容のブラッシュアップ,授業時間の配分など検討事項は多いが,TBLの仕組みを応用した授業は作業療法教育に積極的に取り入れてもいい方法だと考える.