第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

教育

[PR-7] ポスター:教育 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PR-7-7] 当事者参加型講義を実施することで得られた関心の変化

宗像 暁美1, 澤田 祥子1, 三代 達也1, 熊谷 竜太2, 齋藤 佑樹2 (1.学校法人 智帆学園 琉球リハビリテーション学院作業療法学科, 2.仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科 作業療法学専攻)

【はじめに】本学院では,評価実習(2年次後期)や総合実習(3年前期)で対象者を作業的存在として全人的に捉える視点を習得できるよう,2年次前期配当の地域実習では対象者の個人史や価値観などを理解することに重きをおいた課題を設定している.加えて本年度は,より上記の理解を深めるべく,地域実習前に当事者を非常勤講師とした講義を導入した.そこで,導入した講義と地域実習を経験したことでの学生の作業療法の捉え方の変化について調査・検討を行ったため以下に報告する.
【講義内容】リハビリテーションセミナー(2年次前期,全15回).第1・2・7・8・10・14・15回に非常勤講師としてA氏(脊髄損傷 C6レベル 不全麻痺)を迎え「Aさんを学院内でおもてなしする」を課題として,グループワークを中心に,①疾患学習,②評価の実施,③プラン作成,④発表,⑤プランの実行の流れで実施した.
【対象・方法】本学院の作業療法学科2年生 31名(昼間主20名,夜間主11名)を対象とした.講義前後に「作業療法とは」に対する回答を自由記述にて収集し,KH Coder(Ver.3.Beta.06a)を用いて共起ネットワーク分析を行った.また,講義前および地域実習後に,17の評価項目の中から優先度が高いと思う評価を5つ選択してもらい,変化の傾向を捉えた.なお,今回の発表に関して対象学生の同意を得ている.また,COI関係にある企業等はない.
【結果】回収率は,講義前後100%,地域実習後は90%であった.共起ネットワーク分析では,講義前は,総抽出語数665語,異なり語数186語,最も多かった頻出語は「回復」,次いで「生活」であった.抽出されたカテゴリは7個で,「機能や動作の回復で生活を取り戻す」「対象の望む生き方を一緒に考える」「様々なADL」「心と体の病気」「普段通り行える」「その人の理想を目標とした支援」「身体・精神を患う方へのリハビリ」を読み取ることができた.講義後の総抽出語数640語,異なり語数195語,最も多かった頻出語は「対象者」,次いで「作業」であった.抽出されたカテゴリは7個で,「その人の思う作業(生活)を支援する」「生きがいを取り戻す」「困りごとを改善する」「機能向上により元気になる」「身体と心が回復するようなアプローチ」「対象者と一緒に考える」「元の社会に出るために行う」を読み取ることができた.「優先度の高いと思う評価」の結果は,講義前の上位5項目は,身体機能90.3%,ADL能力71%,認知機能67.7%,精神機能61.3%,疾病特性・合併症41.9%であった.実習後の上位5項目は,身体機能78.6%,認知機能67.9%,ADL能力64.3%,精神機能と疾病特性・合併症が53.6%であった.講義前と実習後で大きく変化みられた項目は,趣味・余暇活動(講義前19.4%→実習後46.4%)と生活歴(講義前6.5%→実習後28.6%)であった.
【結語】講義内で当事者と関わる経験は,対象者を中心に生活や作業を捉える契機となった可能性がある.また,講義と地域実習を経験した後も,優先度が高いと思う評価項目については大きな変化はなかったが,趣味・余暇活動や生活歴といった対象者を理解するための項目を選択する学生が増えたことから,学生の関心が,より対象者を全人的に捉える方向に変化した可能性がある.今後は継続的に調査を続け,指導方針や講義内容の充実を図るべく検討を重ねていきたい.