[PR-8-1] 指定規則改定後の作業療法臨床実習における認知領域(知識)に関する指導の実際
【序論】作業療法士養成教育における臨床実習の意義は大きい.しかし,従来の臨床実習の在り方に問題があったため,2020年度の指定規則に伴い実習指導者の要件が改定され,厚生労働省指定の臨床実習指導者講習会(以下,講習会)の受講が義務化された.講習会の受講による認知領域の指導内容の変更の有無や,指導者が認知領域の指導を効果的に行うために学生が身に着けておくべき知識についてどのように考えているのかを明らかにし,効果的な実習対策授業の構築の一助としたい.
【目的】身体障害領域の指導者が具体的にどのような方法で認知領域の指導を行っているのか,また,その指導が効果的であるために,指導者は臨床実習の事前に学生がどのような知識を最低限習得しておいてほしいと考えているのか,そして,指導者における臨床実習の指導経験の多寡や上位資格の有無によりその指導内容に差異は生ずるのか,の3点を明らかにすることを目的とする.
【方法】実務経験年数や上位資格(認定・専門作業療法士)の有無など条件の異なる作業療法士3名(以下,協力者)を対象に半構成的なインタビュー調査を実施した.インタビューはインタビューガイドを用いて行い,臨床実習指導において講習会受講後に変更したこと,指導者としての心構え,学生が臨床実習までに身に着けておいてほしい知識などについて聴取を行った.インタビューの結果はSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析を行った.なお,本研究は星槎大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 2022-3).
【結果】3名の協力者のインタビュー結果について4段階の分析を行い,ストーリーラインを作成し理論記述を行った.理論記述から得られた計80個のコードを56個のサブカテゴリーに分類し,サブカテゴリーは10個のカテゴリーに集約した.協力者は全員,講習会受講後は講習内容の実践を心がけていた.【臨床思考過程の指導】のカテゴリーが最も多く〈信念モードによる教授〉〈思考の導き〉などのサブカテゴリーを認めた.実習までに身につけておいてほしい知識は,《疾患概要》《解剖学や運動学》《評価の概要》等であった.また,上位資格者保持者は〈作業療法の独自性の理解〉を挙げていた.語りの内容は実務経験の長短や上位資格の有無により指導の実際に差を認めた.
【考察】認知領域の指導においては実務経験の長い協力者や上位資格保持者では学生からのアウトプットの大切さが述べられ,指導者が一方的に教えるだけではなく,学生の言葉を実習に活かす構成主義的な関わりの実践が示唆された.実務経験の短い協力者では信念モードに偏りがちになる傾向を認めた.実習指導における心構えについては,《バディのような関係》や《学生との信頼関係の構築》などの語りを認め,指導者とのコミュニケーションに問題を抱える学生にとっても過ごしやすい環境や関係性作りを行っていることが示された.身に着けておいてほしい知識については想起レベルの知識を解釈レベルの知識へ深めるためには,前述した知識は必須であることから初年次からの効果的な学修方法を今後検討する必要がある.また,上位資格者は《作業療法士としての視点の必要性》を述べていることは特徴的であった.作業療法の独自性を習得することは職業的なアイデンティの向上を図るためにも必要であると考えられ,学内での教育の充実を図る.指導内容の差については,中川によるアンケート調査の結果から経験年数等が指導に影響を及ぼしているとの報告もあり,今回の結果を支持するものであった.今後,同一の指導者の経時的な変化などについても調査する必要がある.
【目的】身体障害領域の指導者が具体的にどのような方法で認知領域の指導を行っているのか,また,その指導が効果的であるために,指導者は臨床実習の事前に学生がどのような知識を最低限習得しておいてほしいと考えているのか,そして,指導者における臨床実習の指導経験の多寡や上位資格の有無によりその指導内容に差異は生ずるのか,の3点を明らかにすることを目的とする.
【方法】実務経験年数や上位資格(認定・専門作業療法士)の有無など条件の異なる作業療法士3名(以下,協力者)を対象に半構成的なインタビュー調査を実施した.インタビューはインタビューガイドを用いて行い,臨床実習指導において講習会受講後に変更したこと,指導者としての心構え,学生が臨床実習までに身に着けておいてほしい知識などについて聴取を行った.インタビューの結果はSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析を行った.なお,本研究は星槎大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 2022-3).
【結果】3名の協力者のインタビュー結果について4段階の分析を行い,ストーリーラインを作成し理論記述を行った.理論記述から得られた計80個のコードを56個のサブカテゴリーに分類し,サブカテゴリーは10個のカテゴリーに集約した.協力者は全員,講習会受講後は講習内容の実践を心がけていた.【臨床思考過程の指導】のカテゴリーが最も多く〈信念モードによる教授〉〈思考の導き〉などのサブカテゴリーを認めた.実習までに身につけておいてほしい知識は,《疾患概要》《解剖学や運動学》《評価の概要》等であった.また,上位資格者保持者は〈作業療法の独自性の理解〉を挙げていた.語りの内容は実務経験の長短や上位資格の有無により指導の実際に差を認めた.
【考察】認知領域の指導においては実務経験の長い協力者や上位資格保持者では学生からのアウトプットの大切さが述べられ,指導者が一方的に教えるだけではなく,学生の言葉を実習に活かす構成主義的な関わりの実践が示唆された.実務経験の短い協力者では信念モードに偏りがちになる傾向を認めた.実習指導における心構えについては,《バディのような関係》や《学生との信頼関係の構築》などの語りを認め,指導者とのコミュニケーションに問題を抱える学生にとっても過ごしやすい環境や関係性作りを行っていることが示された.身に着けておいてほしい知識については想起レベルの知識を解釈レベルの知識へ深めるためには,前述した知識は必須であることから初年次からの効果的な学修方法を今後検討する必要がある.また,上位資格者は《作業療法士としての視点の必要性》を述べていることは特徴的であった.作業療法の独自性を習得することは職業的なアイデンティの向上を図るためにも必要であると考えられ,学内での教育の充実を図る.指導内容の差については,中川によるアンケート調査の結果から経験年数等が指導に影響を及ぼしているとの報告もあり,今回の結果を支持するものであった.今後,同一の指導者の経時的な変化などについても調査する必要がある.