第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-9] ポスター:教育 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-9-1] 精神科作業療法士の学習ニードと経験年数との関連

水野 健 (昭和大学附属烏山病院リハビリテーションセンター)

【はじめに】作業療法士は専門職として専門的な知識と技術が求められ,必要とされる知識・技術もつねに変化・発展を続けている.そのため,継続的な学習は不可欠である.しかし,作業療法士の学習・研修ニーズに関する研究は少なく,特に精神障害領域に限定したものは,十分な検討がなされていない.経験年数の違いによる作業療法士として学び習得すべきもの(以下,学習ニーズ)を明確にすることは,教育の対象となる作業療法士の学習ニーズを反映した教育プログラムの開発・提供が可能となり,作業療法実践の質向上に結びつくことが期待できると考えた.
【目的】本研究は作業療法士の学習ニーズと経験年数との関連を明らかにし,生涯教育の在り方について検討することである.
【方法】対象は日本精神科病院協会名簿及び,日本作業療法士協会会員名簿を参考に無作為に抽出した東京都,神奈川県,埼玉県,茨城県,栃木県,群馬県,山梨県の1都7県(首都圏)にある精神科病院111施設に勤務する作業療法士689名とした.これらの対象に無記名自記式質問調査票を郵送した.調査項目は,先行研究を参考に「もっと詳しく知りたい・勉強したいと思う事やもっと自分を高めるために必要だと思う知識・技術・態度は何ですか」という問いに加え,性別,OT経験年数,配偶者の有無,子供の有無,役職の有無,過去6ヶ月間の勉強会・研修会への参加回数等の基本属性について収集した.得られた結果をKH Coder3によって分析し,経験年数に基づき0-5年(以下,新人群),6-10年(以下,中堅群),11年以降(以下,ベテラン群)の3群に分け対応分析,特徴語の抽出を行った.対象者には書面にて研究目的とデータ利用について,研究参加の自由性についての説明,回答については対象者の意志に任せ,返信をもって研究へ同意したとみなした.なお,本研究は神奈川県作業療法士協会研究助成事業の一部として行われたものである.
【結果】回答のあった318名(回収率45.9%)のうち,分析は欠損値を有する対象を除いた276名(有効回答40.1%)を対象とした.新人群では,「CBT」「疾患」「仕方」「理解」など,中堅群では,「専門」「実践」「指導」など,ベテラン群では,「管理」「コーチング」「新しい」などが特徴的な語として示された.経験年数ごとの学習ニーズは,新人群では知識や具体的な介入技法や対象となる疾患について,中堅群では作業療法の専門性や身に着けた知識技術をどのように臨床へ反映させていくか,また後輩や学生へどのように指導していくかについて,ベテラン群では部門の管理運営に関することや自身の知識をどのようにアップデートしていくかについてであった.ベテラン群については,原文を参照すると新しい知識の習得や継続した学習の必要性を感じつつも,職場や家庭の多忙さで学びの場への参加の困難さを抱えていることも明らかとなった.
【考察】学習ニーズは各経験年数に応じて求められる業務や役割を反映していた.経験を重ねるにつれ,知識技術の習得から活用へ,自身のためから他者のため,狭い範囲の理論から広範な理論へと推移していくことが明らかとなった.この結果は,経験年数に合わせた研修モデルの構築,研修内容の提供に結びついていくと考える.さらに継続的な学習のたけには,ライフステージや役割も踏まえた参加しやすい環境面の工夫も合わせて必要であると考える.