第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-9] ポスター:教育 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-9-2] 当校における生活行為向上マネジメント教育の実態と課題

小池 真由美, 大橋 航祐, 渡辺 陵介 (東京福祉専門学校作業療法士科)

【序論】
日本作業療法士協会(以下,OT協会)は2015年より養成校に対し,卒業時までに生活行為向上マネジメント(Management tool for daily life performance:以下,MTDLP )の授業を組み込むように求め,教員に対するMTDLPの理解と教授するための研修の機会および教育方法のモデルを提供している.当校においてもOT協会が示している教育内容に基づき様々な科目で概要説明や事例検討を実施してきた.筆者の先行研究では,多くの学生が,MTDLPを活用する際に,「その人らしさを表す作業を聞き出す」ことが課題としていることが明らかとなり,学内での学びを臨地実習で経験する機会が重要であるものの,臨地実習でのMTDLPの活用状況の報告は少ない.
【目的】
本研究の目的は,当校の学生のMTDLPの活用に対する意向と臨地実習におけるMTDLPの活用状況を調査し,学内・学外・卒後におけるMTDLP教育の実態と課題を明らかにする事である.
【方法】
筆者が所属する作業療法士科(3年制)の2年生28名(休学者を除く)を対象に,OT協会が推進するMTDLPの教授法を参考にMTDLPの概論90分+演習180分=270分以上,これに加え,MTDLPの開発の背景やICF,作業療法理論,作業療法の定義,作業の捉え方,生活行為に対する理解とニーズ把握等に関する講義を実施した.講義終了後,学生に対し,MTDLPの活用に関する意向調査アンケートを実施した.また,対象学生の臨地実習(評価実習)におけるMTDLPの活用率と,「その人らしい作業を聞き出す」面接の見学・模倣・実践状況を把握する実態調査を実施した.実習指導者は,臨床実習指導者認定者である.なお,本研究の趣旨および参加は任意であることを口頭および書面で説明,本人及び学校の同意を得ている.
【結果】
MTDLPの活用に関するアンケート調査の結果,対象28名中28名が回答 (回答率100%).MTDLPを今後実習や臨床で活用することの意欲は5件法で平均4.75であった.MTDLPを活用する上で最も重要だと感じることについては「できるようになりたいと思っている生活行為の聞き取り」「目標の合意」「その人らしさを表す作業を見つけるための視点」の順で多かった.また,MTDLPを活用する上で学生自身の課題となる点に関しては「その人らしさを表す作業の聞き取り」を課題とする学生が53.6%いた.課題解決方法として,学内で再受講・事例検討するが60.7%,実習指導者の下で実践したいが43.8%であった.また,MTDLPの活用状況に関する調査では,臨地実習におけるMTDLPの活用率は6.2%で,学生が課題としていた「その人らしい作業の聞き取り」に関する面接の見学・指導率は43.8%であった.また,面談を見学する機会がなかったが,学内で学んだことを活かし,学生なりにその人らしい作業を聞き出すための面談を実施したと回答する学生が31.3%となった.
【考察】
学内教育としてMTDLPを活用するための知識は習得できても,面接スキルに関しては,臨地実習で教育指導を求める学生も存在する.こうしたスキルに関する教授には限界があり,臨地実習での見学・模倣・実践による臨床経験を通し,スキルアップを図る必要がある.臨床実習指導者講習会では,MTDLPの活用は,学内・臨地実習・卒後と一貫した臨床の経験を積むことを可能とするとし,MTDLPを教育ツールとして紹介している.しかし,本研究では,MTDLPに基づく臨床経験をした学生は少なく,学外・卒後におけるMTDLPの活用率が低いことが明らかとなった.このことから,学内・学外・卒後教育の一貫性を担保するには,MTDLPの活用普及だけではなく,見学・模倣・実施という実習形態に加え,学生個々の課題解決と臨床経験に繋がるシステムの構築が課題であることが示唆された.