第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-9] ポスター:教育 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-9-3] 指導者が作成したMTDLPシートを基に臨床思考の模倣指導を進めた評価実習の指導効果

小笠原 和将, 神田 太一, 松山 太士 (社会医療法人財団新和会八千代病院総合リハビリセンター)

【背景・目的】生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いたクリニカル・クラークシップ方式の指導は,臨床思考を共有し易く,収集した情報を整理できることで各評価を行う理由や関連づけ,プログラムの目的等を理解し易いとされている(日本作業療法士協会.2022).今回,指導者(以下,CE)が作成した症例のMTDLPシートを基に,CEの臨床思考の模倣指導を進めた評価実習における指導方法の効果が示唆されたため報告する.
【方法】対象は書面で同意を得られた回復期リハビリ病棟での評価実習生2名.学生にはMTDLPシートを用いて症例におけるCEの臨床思考を可視化した上で,指導過程➀初期評価前にMTDLPシートを用いたCEの臨床思考の説明,指導過程②CEのMTDLPシートを参考に初期評価における情報収集過程の指導,指導過程③CEのMTDLPシートを参考に予後予測・目標・治療プログラム立案の思考過程を整理する指導を順に行った.また指導過程②③を通し,学生はCEのMTDLPシートを参考にしながら自らMTDLPシートを作成した.さらに,日々のCEからのフィードバックを両者が作成したMTDLPシートを用いて実施した.調査は実習開始時・指導過程➀後・指導過程③後の時期に半構造化インタビューを実施し,内容をICレコーダーで録音した.分析として音声データの逐語録を作成し,質的帰納的分析(Flick,2011)を実施した.手順は,逐語録からラベルを抽出後,類似性と差異性からコード化,カテゴリ化,テーマ化と進めた.分析は厳密性を保つために共同演者と行った.尚,本報告では得られた結果からMTDLPの効果に該当する内容について報告する.
【結果】<>テーマ,「」カテゴリを示す.逐語録から得られた結果は,ラベル数44,コード数19,カテゴリ数5,テーマ数1であった.結果をテーマ,カテゴリで示すと,対象学生に対する<MTDLPシートを用いた模倣指導効果>として「評価/予後予測/治療プログラムの内容が分かる」「思考がまとまる」「課題作成が捗る」「評価/考察の答え合わせができる」「指導の理解が進む」ことが分かった.また<MTDLPシートを用いた模倣指導効果>を具体的に指すコードには“臨床思考の到達目標がわかる”“情報をまとめるためのツールとなる”“トップダウンの視点で評価結果を理解できる”“日々の進捗や理解の確認ができる”“症例の個人因子を含めた全体像の把握ができる”“思考の模倣を基に意見ができる”“考察が書き易くなる”“評価結果の妥当性を確認できる”“考察の妥当性を確認できる”“考察の指導が分かり易くなる”“指導を受けたことの復習に活用できる”“臨床見学をする際の理解が進む”等があった.また,模倣したMTDLPシートを見ながら考察がスラスラ書けた等,模倣指導を肯定的に捉える発言が得られた.
【考察】結果である<MTDLPシートを用いた模倣指導効果>について,方法で述べた指導過程毎に考察する.指導過程➀でCEの臨床思考を可視化することで,学生が評価実習で取り組むべき内容が分かり易くなることから,「評価/予後予測/治療プログラムの内容が分かる」と考える.指導過程②でICFの視点を含むアセスメント過程(日本作業療法士協会.2021)をCEのMTDLPシートを用いて模倣し,“トップダウンの視点で評価結果を理解できる”ことで「思考がまとまる」と考える.指導過程③で予後予測からプラン立案までの統合と解釈のプロセス(日本作業療法士協会.2021)を模倣したことで,“考察の指導がわかりやすくなる”ことから「指導の理解が進む」「評価/考察の答え合わせができる」「課題作成が捗る」と考える.