第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-9] ポスター:教育 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-9-4] 当院におけるMTDLPを活用した臨床実習指導の実践

北川 智恵, 沖 英一, 大坪 建 (和仁会病院)

【はじめに】
MTDLPは作業療法実践の思考過程を「見える化」し「パッケージ化」したツールで誰が使っても標準的な思考過程に即した実践やトレーニングが提供できるようにするためのものである.当院では2016年度よりMTDLPを活用した臨床実習指導を実践している.7年間経過して感じられる効果と今後の課題に関して考察を交えて報告する.
【臨床実習委員会の設置と役割】
当院では部署全体で学生を受け入れ指導していくという考えのもと2014年より臨床実習員会を設置している.その役割は,各養成校との連絡調整,学生の割り振りに加え,学生の相談窓口,臨床実習指導者(以下CE)となるスタッフの教育・支援などである.実習終了時にはCEと学生にアンケート調査を行う.すべての総合臨床実習終了後にCEを対象とした意見交換会を開催し,次年度への参考とし,工夫・改善を図っている.
【作業療法参加型実習(以下CCS)導入とMTDLP活用開始当初の課題】
2016年にMTDLP活用を始めた当初は「学生の考えや理解度の把握が困難」「業務中・リハビリ介入時の説明が増え時間を要す」「学生が対象者を全体的に診ることができにくい」「学生の能力により実施まで達成ができない」「CEによってMTDLPの進捗状況に差が生じてしまう」などの課題があった.
【MTDLP活用のための取り組み】
『実習開始前準備』年度初めにCEを対象としたCCSとMTDLP指導についての勉強会を開催している.臨床実習の考え方,スケジュールの立て方,MTDLPの活用方法を確認することで,CEよって指導内容に格差が生じないようにする.MTDLPに関しては学生指導用のスライドを作成し,実習開始時に使用できるようにしている.また過去に作成したシートをまとめ,参考資料として準備している.勤務時間内での指導を徹底し,学生の学習時間の確保,症例発表を廃止してCEと学生の負担の軽減を図った.
『MTDLPを活用しての指導』CEは担当している対象者のMTDLPシートを準備し,シートの記入方法・考え方を指導する.学生はCEの対象者への説明場面や目前で行われる訓練を見学することで生きた情報を得ることができ,その内容を振り返ってシートに情報を記入し整理することができる.
『スタッフ教育』3年目までのスタッフを対象にMTDLPの勉強会を実施している.先輩スタッフが後輩スタッフを指導し.経験年数豊富なスタッフもスーパーバイザーとして参加する.また全スタッフにMTDLP基礎研修,MTDLP実践研修,事例登録.臨床指導者講習会の受講を推奨している.
『スーパーバイズ』CEは実習の内容やMTDLPの進捗状況・学生の反応・自身の意見などを週毎にモニタリングシートに記入する.記入されたモニタリングシートは部署長が確認しコメントを記入する.また必要に応じてCEまたは学生に対して直接指導を行う.
【考察・まとめ】
CCSの導入とMTDLPの活用開始し7年経過した.アンケート調査では実習前に不安を感じるCEが少なくなり,ほとんどの学生は「臨床思考過程が良く理解できた」と答えている.スタッフの知識と経験が少しずつ積み上げられ,養成校でも事前学習が丁寧に行われていることで,CE・学生ともに大きな抵抗なくMTDLPを活用しながら臨床思考過程を共有することができるようになったのではないかと考える.しかし「臨床思考過程がよく理解できた」という回答はあくまでも学生の主観にとどまっている.MTDLPを活用したより質の高い指導を目指して,養成校と臨床現場が互いに連携して取り組んでいくことができればと考える.