[PR-9-6] COVID-19流行下における若手作業療法士の経験から考える卒後教育の課題
【序論】
COVID-19の流行により,病院・施設での臨床実習,臨床業務は多大な影響を受けた.臨床実習に関しては各養成校で代替実習や独自の学修によって単位習得が認められるなど(文部科学省,2020),学生の実地経験が減少している.臨床現場でも外出に関する支援や退院後のサービス利用に支障をきたし(日本理学療法士協会,2020;東京都作業療法士会,2020),クライエント(以下,CL)への支援内容も変化しているため,臨床現場での後輩育成の内容も見直す必要があると言える.そこで今回,COVID-19流行後に当院に就職した若手作業療法士(以下,若手OTR)に対し,どのような卒後教育を実施していく必要があるかを検討することとした.
【目的】
当院に就職した若手OTRの,COVID-19流行下の臨床実習時と就職後の臨床現場での経験から卒後教育の課題を明らかにすること.
【方法】
対象は当院回復期就職後2年目の作業療法士5名であり,筆者を加えた6名でフォーカスグループを実施し,約60分間,実習時と就職後の経験について話してもらった.話し合った内容は逐語録に起こし,KH Coder 3を用いたテキストマイニング分析により「語-外部変数(実習時と就職後の経験)」で共起ネットワーク分析図を生成した.分析図とKWICコンコーダンスから語同士の文脈を確認しながら筆者がカテゴリーに分類した.カテゴリー名は研究協力者2名と妥当性を検討した.本研究は,所属施設の倫理規定に則り,承認を得て参加者に研究目的を説明し口頭及び書面による同意を得た.
【結果】
テキストマイニング分析の総抽出語数(使用)は4480(1568)語,異なり語数(使用)は697(523)語であった.出現回数の多い語は,「思う(57)」,「良い(26)」,「家族(24)」,「患者(20)」,「実習(18)」であった.共起ネットワーク分析図から,Positiveなカテゴリーが2つ,Negativeなカテゴリーが3つ,計5つのカテゴリーが作成され,実習時と就職後の経験に関するものに分けられた.
【考察】
実習時の経験におけるPositiveなカテゴリーは<代替実習による複数領域を学ぶ機会の増加>,Negativeなカテゴリーは<入院生活をみる機会とリハ技術を直に行う経験の不足>であった.代替実習を経験した若手OTRは,他領域の知識に長ける可能性があるが,それよりも実地経験が少ないデメリットの方が大きいと考えられる.若手OTRは熟練者よりもCLのニーズを踏まえた言葉掛けやガイダンスが不得手で(野村ら,2020;Lea et al.,2020),CLと関係性を築きながら評価や介入を実施することや,CLの入院生活の内実を踏まえながら関係他職種との連携をイメージし実践することが苦手と考えられる.よって,これらを解決するためのOff the Job Training,On the Job Trainingの強化が必要と考えられた.一方,就職後の経験におけるPositiveなカテゴリーは<制限下でもCLと家族が交流することの重要性>,Negativeなカテゴリーは<院外で行う業務の制限>,<CLと家族の現状認識の乖離>であった.院外で行う業務は感染状況に強い影響を受けてしまうが,制限された状況下でも若手OTRはCLと家族の結びつきを重視した支援を計画・提案できる可能性があった.しかし,若手OTRは優先順位をつけ,「今何をすべきか」という論理的な道筋を示すのを苦手とする(Elizabeth et al.,2021).CLと家族の現状理解の乖離に対処し,CLの個別性を反映させ,エビデンスに基づいた支援を実施するためには,CLと家族双方のニーズに対する段階付けたアプローチが必要になる.そのため,卒後教育の中で熟練者の支援プロセスを学ぶ機会の増加が必要と思われた.
COVID-19の流行により,病院・施設での臨床実習,臨床業務は多大な影響を受けた.臨床実習に関しては各養成校で代替実習や独自の学修によって単位習得が認められるなど(文部科学省,2020),学生の実地経験が減少している.臨床現場でも外出に関する支援や退院後のサービス利用に支障をきたし(日本理学療法士協会,2020;東京都作業療法士会,2020),クライエント(以下,CL)への支援内容も変化しているため,臨床現場での後輩育成の内容も見直す必要があると言える.そこで今回,COVID-19流行後に当院に就職した若手作業療法士(以下,若手OTR)に対し,どのような卒後教育を実施していく必要があるかを検討することとした.
【目的】
当院に就職した若手OTRの,COVID-19流行下の臨床実習時と就職後の臨床現場での経験から卒後教育の課題を明らかにすること.
【方法】
対象は当院回復期就職後2年目の作業療法士5名であり,筆者を加えた6名でフォーカスグループを実施し,約60分間,実習時と就職後の経験について話してもらった.話し合った内容は逐語録に起こし,KH Coder 3を用いたテキストマイニング分析により「語-外部変数(実習時と就職後の経験)」で共起ネットワーク分析図を生成した.分析図とKWICコンコーダンスから語同士の文脈を確認しながら筆者がカテゴリーに分類した.カテゴリー名は研究協力者2名と妥当性を検討した.本研究は,所属施設の倫理規定に則り,承認を得て参加者に研究目的を説明し口頭及び書面による同意を得た.
【結果】
テキストマイニング分析の総抽出語数(使用)は4480(1568)語,異なり語数(使用)は697(523)語であった.出現回数の多い語は,「思う(57)」,「良い(26)」,「家族(24)」,「患者(20)」,「実習(18)」であった.共起ネットワーク分析図から,Positiveなカテゴリーが2つ,Negativeなカテゴリーが3つ,計5つのカテゴリーが作成され,実習時と就職後の経験に関するものに分けられた.
【考察】
実習時の経験におけるPositiveなカテゴリーは<代替実習による複数領域を学ぶ機会の増加>,Negativeなカテゴリーは<入院生活をみる機会とリハ技術を直に行う経験の不足>であった.代替実習を経験した若手OTRは,他領域の知識に長ける可能性があるが,それよりも実地経験が少ないデメリットの方が大きいと考えられる.若手OTRは熟練者よりもCLのニーズを踏まえた言葉掛けやガイダンスが不得手で(野村ら,2020;Lea et al.,2020),CLと関係性を築きながら評価や介入を実施することや,CLの入院生活の内実を踏まえながら関係他職種との連携をイメージし実践することが苦手と考えられる.よって,これらを解決するためのOff the Job Training,On the Job Trainingの強化が必要と考えられた.一方,就職後の経験におけるPositiveなカテゴリーは<制限下でもCLと家族が交流することの重要性>,Negativeなカテゴリーは<院外で行う業務の制限>,<CLと家族の現状認識の乖離>であった.院外で行う業務は感染状況に強い影響を受けてしまうが,制限された状況下でも若手OTRはCLと家族の結びつきを重視した支援を計画・提案できる可能性があった.しかし,若手OTRは優先順位をつけ,「今何をすべきか」という論理的な道筋を示すのを苦手とする(Elizabeth et al.,2021).CLと家族の現状理解の乖離に対処し,CLの個別性を反映させ,エビデンスに基づいた支援を実施するためには,CLと家族双方のニーズに対する段階付けたアプローチが必要になる.そのため,卒後教育の中で熟練者の支援プロセスを学ぶ機会の増加が必要と思われた.