第57回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[S-7] 企画セミナー7:Park-OT Journal Club

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 第7会場 (会議場B3-4)

司会:長城 晃一(福岡大学 医学部 脳神経内科学教室)

[S-7-1] パーキンソン病 up-to-date ~世界の最新情報から作業療法ならではの介入を再考する~

高橋 香代子1, 川﨑 伊織2 (1.北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻, 2.福島県立医科大学 保健科学部 作業療法学科)

パーキンソン病(PD)は安静時の振戦や動作緩慢,姿勢反射障害といった運動症状に加え,睡眠障害のような自律神経症状,認知・精神症状などの非運動症状を呈する疾患である.このような多彩な症状の出現は対象者の生活行為に支障をきたすだけでなく,介護者の負担も大きくなる.
 PD患者に対するリハビリテーション診療では,近年,早期からの運動療法を中心とした支援の重要性が数多く報告され,進行予防の一つの手段として確立されている.しかしながら,緩徐進行性の経過を辿る疾患特性として,いかなる手段でも病状の進行を食い止めることは現時点で困難である.
 こういった状況の中,最近では“対象者中心”や“多職種連携”,“well-being”,“テクノロジー”といったキーワードがPDを取り巻く学術領域においても浸透しつつある.つまり病状が進行したとしても,生活のしやすさや生きがい,日常生活における症状の可視化といった“生活者としての視点”に寄り添った思考性が徐々に広がっている印象である.そのため,我々作業療法士が重要視する理念や世界観が徐々に受け入れられやすくなりつつあるが,一方で作業療法士自身がその思考性に基づく実践や実証を行い発信していかなければ,専売特許な視点すらもコモディティ化してしまうと強く感じている.
 以上のことから,今回のセミナーでは,近年のパーキンソン病診療における国際的潮流から、今後作業療法士が取り組むべき課題を提示し,その流れを取り入れた臨床実践の思考過程について知見を交えて紹介したい.
 まず,第一演者の高橋香代子氏からは,世界保健機関のPDリハビリテーションガイドラインや,海外におけるPDに関連する作業療法研究からトピックや課題を整理し,これから日本で作業療法士が取り組むべきPDリハビリテーション,特に活動・参加を促進するための手段を中心に提案する.
 次に第二演者の川﨑伊織氏からは,本邦におけるPDに対する作業療法の実践を例に,PD特有の問題と作業療法の視点双方から臨床実践における思考過程を共有する.
そして,これまでのPDに対する作業療法を再考し,これからのPDに対する作業療法を再構築していくために,全国の作業療法士と議論を深めたい.これらが確立されることで,各ステークホルダーに対しても作業療法の役割を認識してもらいやすく,PDリハビリテーションにおける作業療法の理念や世界観を形にできると考える.