第57回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[S-9] 企画セミナー9:日本CIセラピー研究会

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 第3会場 (会議場B1)

司会:田邉 浩文(湘南医療大学大学院)

[S-9-1] 再生医療への作業療法士の役割と期待

森田 良文1, 宮本 直也2, 高田 雄一3, 奥田 正作4, 新泉 一美5 (1.名古屋工業大学大学院, 2.大西病院, 3.北海道文教大学, 4.明治国際医療大学, 5.湘南医療大学)

研究会代表の田邉らは、2021年から間葉系幹細胞治療(以下,MSC)とリハビリテーション(以下,リハ)の併用効果について脳卒中を主な対象として東京大学細胞治療研究グループ、名古屋工業大学などとコラボレートして臨床研究を行っています。MSCは①神経栄養因子による神経栄養・保護作用,②血管新生作用,③神経再生作用を有しており、脳卒中などの機能回復にも期待されています。脳卒中を対象としたMSC治療を国の認可を受けて行っている医療機関は全国に15箇所あり、その医療機関数や治療対象者は年々増加しています。これらの医療機関の再生医療認定医は、皆、同じことを口にします。「疾患の別に関わらず、MSCは移植だけでは効果がない。移植後の長期にわたる適切なリハが効果に影響する」と誰もが言います。リハの方法論について、再生医療認定医は、どのように進めればよいのか不明であり、仮に伝統的リハを行ったとしても全く効果がないため苦渋されています。田邉らは、再生医療認定医の依頼を受け、現在までに、脳卒中後の遷延性弛緩麻痺、痙性片麻痺、小脳脊髄変性疾患にMSC投与後の様々な作業療法方法について試行介入を繰り返し、時には全く効果が出ないことも経験し、また工学研究者とロボットを開発した臨床試験を試みながら、ようやく、細胞のエクソソームを利用した血管新生や神経再生と脳の再構築を誘発できそうな成果も修められるようになってきました。当初は理学療法士が行う徒手的介入が効果的かと考えていましたが、主たる介入は、作業療法になるのではないかと感じています。再生医療は「ロボットが主を担うこと」はありえないし、「療法士いらずになる」こともないと感じています。それどころか、「療法士が新たに担う分野」、おそらく「地域作業療法士」が再生医療を担うのではないかと考えています。「細胞が勝手に治してくれる」はおとぎ話であり、地道なテーラーメイドリハが再生医療リハビリテーションの成果を決めます。細胞培養治療技術は進化し、医師先導により臨床応用も進んでいます。超高齢化社会に伴う医療費の削減を視野に入れ、再生医療は今後、ますます発展することを考えると作業療法士もこれに備えなければならないと思います。再生医療の「しくみ」を知り、臨床応用の現状とリハの効果の現状を知り、未来の作業療法について論考するセミナーを開催させていただきたいと思います。