第57回日本作業療法学会

講演情報

専門作業療法士セミナー

[SOT-9] 専門作業療法士セミナー9

2023年11月11日(土) 09:00 〜 10:00 第6会場 (会議場A2)

[SOT-9-1] 福祉用具の支給制度:ものごとの仕組みに注目する−作業療法における問題解決の糸口として−

松本 琢麿1, 中川 正己2 (1.神奈川県総合リハビリテーションセンター 神奈川リハビリテーション病院 作業療法科, 2.岡山労災病院 中央リハビリテーション部)

我が国は団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,医療・介護・予防・住まい生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を実現することを目標としています.近年,家族の介護力低下や介護人材の不足が叫ばれるなか,高齢者や障害児・者が住まいで暮らすためには,生活自立度を維持・向上し介護負担を軽減させるような環境調整を必要としています.そして日常生活や社会参加を促すことができる作業療法士(OT)が,地域包括ケアに貢献できる専門職として注目されています.

その一方,最近,若手・中堅OTの方々から「用具の効果や具体的変化がわからない」,「自助具を作らない/作れないOTが増えた」,「多く作る自助具や福祉用具を製品化したい」等,聞かれます.そのため昨年度の本セミナーでは,『持続可能な社会を創るための福祉用具分野の作業療法』をテーマとして,(1)福祉用具の効果検証,(2)自助具作成の発想や技術伝承 ,(3)商品化や製品開発のそれぞれの観点から,以下のようにまとめました.
・いつの時代もOTは対象者の生活動作を「見て」「触って」「一緒に動き」,
モノの適応を判断することが大切
・二次障害で悩まず,身体機能や活動性を維持・向上ができる視点が必要
・このような視点による作製技術や適応技術,製品開発はOTの得意分野

 今年度のセミナーでは,『福祉用具の支給制度:ものごとの仕組みに注目する』をテーマとしました.まず福祉用具援助における問題解決の糸口として,福祉用具の種類や入手方法などを説明しながら,福祉用具の支給制度を概説していきます.
そのあと「用具は交換できるの?」,「一般品や高機能なものは手に入るのか?」,「障害者総合支援法と介護保険法による両方の制度は利用できるのか?」,「住宅改修は何回もできるのか?」等,福祉用具の支給制度を利用した場合に起きる様々な疑問について,事例を通して考えていきたいと思います.
『福祉用具の支給制度:ものごとの仕組みに着目する』ことで,福祉用具援助を実践する上での問題解決に少しでも役立つような場になれば幸いです.