第58回日本作業療法学会

講演情報

教育講演

[EL-3] 教育講演3
内部障害でのリハビリテーションで
作業療法士が期待されていること

2024年11月9日(土) 14:30 〜 16:00 B会場 (中ホール)

座長:佐藤 央基(神戸大学大学院保健学研究科パブリックヘルス領域)

[EL-3-1] 作業療法士に期待される呼吸ケアとリハビリテーション

石川 朗 (神戸大学大学院保健学研究科パブリックヘルス領域)

■はじめに
2018年日本呼吸ケア・リハビリテーション学会などより発表された「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」において、呼吸リハビリテーションはチーム医療が前提であり、作業療法士は重要な役割を担うと記述されている。しかし、残念なことに作業療法士が積極的に参画している現状ではない。そこで、本講演では作業療法士に期待されている呼吸ケアとリハビリテーションにおいて、その視点を検討したい。加えて、呼吸ケアとリハビリテーションには地域連携が不可欠である。神戸市にて呼吸器疾患のシームレスな介入を目的の一つとして設立された、リハビリテーション地域連携協議会CURE神戸(Consortium of seamless and comprehensive rehabilitation in Kobe)を紹介する。
■作業療法士としての視点
1)地域包括ケアシステムと呼吸器合併症(肺炎):医療費の抑制として在宅医療の推進に向け地域包括ケアシステムが構築された。その主な対象は認知症や脳血管障害の高齢者が多い。しかし、在宅での介護量が増え、在宅生活が困難となる理由には、肺炎などの内部障害疾患の増悪が非常に多い。それを理解した上での、地域包括ケアシステムが重要である。
2)医療・介護関連肺炎(Nursing and Healthcare-associated pneumonia:NHCAP):NHCAPの定義では、長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している方、介護を必要とする高齢者、身障者などで発症した肺炎とある。したがって、日常的に作業療法の介入をおこなっている方で発症した肺炎の多くは、NHCAPに当たる。また、その発生機序は誤嚥性肺炎が多数を占め、繰り返される誤嚥性肺炎の予防には作業療法士の役割が大きい。
3)基礎疾患としてのCOPD:COPDに対する非薬物療法において、最もエビデンスが高いのは呼吸リハビリテーションである。そこへの、作業療法士の介入は不可欠である。また、COPDの患者数は約26万人と報告されているが、潜在的には530万人の患者がいるとされており、未診断のCOPDに対する適切なアセスメントと介入が、作業療法士にとって重要である。
■CURE神戸
神戸市と神戸在宅医療・介護推進財団が事務局となり、各医療職能団体、基幹病院からの委員で構成されている。その主な趣旨は、①急性期・回復期・生活期リハビリテーションを包括する一体化プログラムを構築し運用する、②一体化プログラムを通じて各々に関わる医療機関の機能分化と相互連携を図る、③関係するセラピスト・医師・看護師・地域連携担当職などの教育育成と相互連携を図るなどであり、一体化プログラムによって患者本人が病態とリハビリテーションの見通しを持つことができ、行動変容を期待するものである。
■おわりに
多くの呼吸器疾患患者は、呼吸困難によってADLに制限が生じている場合が多い。また、在宅において高齢者の誤嚥性肺炎は、繰り返すものである。作業療法士は、ADLの評価と介入の専門家と考えられている。しかし、その前提となる呼吸器疾患の病態や的確な介入方法を理解することが、改めて重要と感じる。