[OA-1-2] 回復期脳卒中患者の事例報告における,運動麻痺の程度,作業満足度,および作業遂行度の初期—最終評価間の各変化量の関連
【背景】脳卒中患者へ回復期で行われる作業療法の内容は,運動麻痺の回復を目的とする身体機能練習が半数以上を占めており(金子,2013),ADL・IADL練習は身体機能練習の半分以下,ADL・IADL以外に分類される作業の練習は僅かであることが示されている(作業療法白書,2015).退院後に作業遂行するかどうかには作業満足度が関連している一方(Bergstrom,2017),回復期の脳卒中患者へ,作業の可能化への直接介入ではなく,作業を用いない身体機能練習に重点が置かれる背景には,身体機能が回復すれば,作業遂行能力とともに作業満足度が自然に向上するという前提が作業療法士にあるのかもしれない.しかし実際には,運動麻痺が回復しても作業満足度が低下した事例や,運動麻痺が回復しないにも関わらず,作業満足度,および作業遂行度が向上した事例も報告されている.さらには,身体機能の回復の程度に伴い,作業満足度が向上することを明確に示した研究知見はない.作業療法士が脳卒中患者へ身体機能練習を主体とする介入を行うのであれば,その根拠となる知見が必要である.
【目的】作業療法介入前後の,運動麻痺の程度,作業満足度,および作業遂行度の各変化量に関連があるかについて,回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中患者(回復期脳卒中患者)を対象とした,国内の事例報告から検証すること.
【方法】2011年~2023年に学会や学術誌,および日本作業療法士協会の事例報告登録制度で発表された,運動麻痺のある回復期脳卒中患者を対象とした国内の事例報告で,2つ以上の作業目標を挙げている事例を選定した.次に,運動麻痺の程度についてBrunnstrom Recovery Stageもしくは上田式片麻痺機能テスト,作業満足度についてカナダ作業遂行測定(COPM)もしくは生活行為向上マネジメント(MTDLP),作業遂行度についてCOPMにて評価された事例を選定し,COPMを使用した17事例,MTDLPを使用した10事例が確認された.初期—最終評価間の各変化量を抽出し,スピアマンの順位相関係数を用いて分析した.なお,作業満足度と作業遂行度については,重要度の高い順の2つの作業の数値を用いた.
【結果】運動麻痺の程度と作業満足度,および作業遂行度は,ほぼ全ての項目で介入後に有意に向上していたが,各変化量に有意な相関は認められなかった.COPMにおける作業満足度と作業遂行度の各変化量には,有意な高い正の相関(r=0.82,p<0.001)が認められた.
【考察】運動麻痺の回復と作業満足度,および作業遂行度の向上には関連が認められず,本研究では,身体機能回復に伴い,作業満足度,および作業遂行度が向上するという前提は支持されなかった.その理由として,本研究の事例では,運動麻痺の回復のみに特化した介入ではなく,作業を用いた介入や,代償法,環境調整など作業可能化に関わる介入がなされており,この介入技術が作業満足度,および作業遂行度を向上させたことが考えられた.一方で,作業満足度と作業遂行度の各変化量には有意な高い正の相関があり,どちらか一方を向上させることで,もう一方を向上させる可能性が示唆された.
【結論】運動麻痺のある回復期脳卒中患者の作業満足度を効果的に向上させ,退院後の作業参加へ繋げて行くためには,運動麻痺の回復への介入に偏らず,その作業についてどの程度,遂行できると思っているのかなどを患者へ直接確認しながら,人—環境—作業の面で包括的に作業を捉え,作業満足度,および作業遂行度を積極的に向上させる介入が望ましいことが示唆された.
【目的】作業療法介入前後の,運動麻痺の程度,作業満足度,および作業遂行度の各変化量に関連があるかについて,回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中患者(回復期脳卒中患者)を対象とした,国内の事例報告から検証すること.
【方法】2011年~2023年に学会や学術誌,および日本作業療法士協会の事例報告登録制度で発表された,運動麻痺のある回復期脳卒中患者を対象とした国内の事例報告で,2つ以上の作業目標を挙げている事例を選定した.次に,運動麻痺の程度についてBrunnstrom Recovery Stageもしくは上田式片麻痺機能テスト,作業満足度についてカナダ作業遂行測定(COPM)もしくは生活行為向上マネジメント(MTDLP),作業遂行度についてCOPMにて評価された事例を選定し,COPMを使用した17事例,MTDLPを使用した10事例が確認された.初期—最終評価間の各変化量を抽出し,スピアマンの順位相関係数を用いて分析した.なお,作業満足度と作業遂行度については,重要度の高い順の2つの作業の数値を用いた.
【結果】運動麻痺の程度と作業満足度,および作業遂行度は,ほぼ全ての項目で介入後に有意に向上していたが,各変化量に有意な相関は認められなかった.COPMにおける作業満足度と作業遂行度の各変化量には,有意な高い正の相関(r=0.82,p<0.001)が認められた.
【考察】運動麻痺の回復と作業満足度,および作業遂行度の向上には関連が認められず,本研究では,身体機能回復に伴い,作業満足度,および作業遂行度が向上するという前提は支持されなかった.その理由として,本研究の事例では,運動麻痺の回復のみに特化した介入ではなく,作業を用いた介入や,代償法,環境調整など作業可能化に関わる介入がなされており,この介入技術が作業満足度,および作業遂行度を向上させたことが考えられた.一方で,作業満足度と作業遂行度の各変化量には有意な高い正の相関があり,どちらか一方を向上させることで,もう一方を向上させる可能性が示唆された.
【結論】運動麻痺のある回復期脳卒中患者の作業満足度を効果的に向上させ,退院後の作業参加へ繋げて行くためには,運動麻痺の回復への介入に偏らず,その作業についてどの程度,遂行できると思っているのかなどを患者へ直接確認しながら,人—環境—作業の面で包括的に作業を捉え,作業満足度,および作業遂行度を積極的に向上させる介入が望ましいことが示唆された.