[OA-1-5] 回復期脳卒中患者の転倒要因に関する研究
~転倒アセスメントシートを用いて~
【目的】回復期リハビリテーション病棟の患者は,身体能力が変化し活動性が向上するにつれ転倒の危険性も向上する.当院では転倒アセスメントシートを使用し,転倒リスクを低リスク・中リスク・高リスクに分類し,転倒リスク管理を行っている.そこで今回の研究目的は,脳卒中患者の転倒リスク別要因について特徴を分析し,その対策について検討することである.
【対象】2022年4月から2023年3月に入院した脳卒中患者で,入院期間が60日未満の患者と離床が行えない患者を除外した48名(男性31名,女性17名)であった.
【方法】カルテとインシデント報告書より転倒リスクレベル,転倒時期,年齢,性別,認知症高齢者の日常生活自立度,下肢BRS,mFIM,cFIMに関する情報を得た.なお,FIMは入院時および3ヵ月目の2回実施した.また,転倒リスクレベルを中リスクと高リスクの2群に分類し,各リスクレベルの特徴を比較した.さらに,各リスク別に転倒群,非転倒群の2群に分類し,各項目で単変量解析を行った.そして,有意差を認めた項目についてROC解析を行い,転倒のカットオフポイントを検討した.統計分析は,χ2検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号23015).
【結果】リスクレベル別における各項目の比較では,すべての項目で有意差を認めなかった.転倒時期は入院1ヵ月以内の転倒が多く,中リスクにおいては3ヵ月目以降に増加していた.リスク別転倒群,非転倒群の比較では,中リスクにおいて認知症高齢者の日常生活自立度,cFIMが転倒群で有意に低かった.中リスクにおけるcFIMのROC解析の結果,転倒を予測するcFIMのカットオフ値は25点(感度:1.000,特異度:0.571,AUC:0.827)であった.高リスクにおける転倒群,非転倒群間の各項目の比較では,すべての項目で有意差を認めなかった.
【考察】自発的な移動を要求される回復期リハビリテーション病棟へ転院した際は,新しい環境に順応するまでの期間は転倒リスクが高いとされており(鈴木ら2006),入院後早期の転倒は環境変化に順応できず転倒に至ったと考える.また,患者の身体能力は変化し活動的になり転倒する危険性が向上する(Louiseら2009)ことが指摘されている.よって,入院3ヵ月目以降に増加した理由は,活動量や範囲の増大が影響したと考える.各リスク別の比較において,中リスクでは認知症高齢者の日常生活自立度,cFIMが転倒群で有意な低下を認めた.cFIMにおけるROC解析の結果,転倒を予測するカットオフ値は25点であった.cFIM25点から29点の間で転倒リスクが急激に増大する背景には,理解と表出が修正自立に達することが関連している可能性が示唆されている(内田ら2011).また,認知症高齢者は本人のニーズと会わない援助が行われた場合は,BPSDをさらに悪化させて,転倒を繰り返すことが多い(鈴木2016).よって,中リスクにおける転倒対策として,cFIMが25点以下でかつ修正自立に至らない項目については,監視を強化する必要があり,行動を予測した対応が重要である.高リスクでは転倒群,非転倒群で各項目に有意差は認められなかった.しかし,認知症患者が多く転倒が生じていた.高リスクにおける転倒対策として,認知症による危険行動を単に制限するだけでなく,転倒リスクを軽減させるような環境調整が必要である.
【対象】2022年4月から2023年3月に入院した脳卒中患者で,入院期間が60日未満の患者と離床が行えない患者を除外した48名(男性31名,女性17名)であった.
【方法】カルテとインシデント報告書より転倒リスクレベル,転倒時期,年齢,性別,認知症高齢者の日常生活自立度,下肢BRS,mFIM,cFIMに関する情報を得た.なお,FIMは入院時および3ヵ月目の2回実施した.また,転倒リスクレベルを中リスクと高リスクの2群に分類し,各リスクレベルの特徴を比較した.さらに,各リスク別に転倒群,非転倒群の2群に分類し,各項目で単変量解析を行った.そして,有意差を認めた項目についてROC解析を行い,転倒のカットオフポイントを検討した.統計分析は,χ2検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号23015).
【結果】リスクレベル別における各項目の比較では,すべての項目で有意差を認めなかった.転倒時期は入院1ヵ月以内の転倒が多く,中リスクにおいては3ヵ月目以降に増加していた.リスク別転倒群,非転倒群の比較では,中リスクにおいて認知症高齢者の日常生活自立度,cFIMが転倒群で有意に低かった.中リスクにおけるcFIMのROC解析の結果,転倒を予測するcFIMのカットオフ値は25点(感度:1.000,特異度:0.571,AUC:0.827)であった.高リスクにおける転倒群,非転倒群間の各項目の比較では,すべての項目で有意差を認めなかった.
【考察】自発的な移動を要求される回復期リハビリテーション病棟へ転院した際は,新しい環境に順応するまでの期間は転倒リスクが高いとされており(鈴木ら2006),入院後早期の転倒は環境変化に順応できず転倒に至ったと考える.また,患者の身体能力は変化し活動的になり転倒する危険性が向上する(Louiseら2009)ことが指摘されている.よって,入院3ヵ月目以降に増加した理由は,活動量や範囲の増大が影響したと考える.各リスク別の比較において,中リスクでは認知症高齢者の日常生活自立度,cFIMが転倒群で有意な低下を認めた.cFIMにおけるROC解析の結果,転倒を予測するカットオフ値は25点であった.cFIM25点から29点の間で転倒リスクが急激に増大する背景には,理解と表出が修正自立に達することが関連している可能性が示唆されている(内田ら2011).また,認知症高齢者は本人のニーズと会わない援助が行われた場合は,BPSDをさらに悪化させて,転倒を繰り返すことが多い(鈴木2016).よって,中リスクにおける転倒対策として,cFIMが25点以下でかつ修正自立に至らない項目については,監視を強化する必要があり,行動を予測した対応が重要である.高リスクでは転倒群,非転倒群で各項目に有意差は認められなかった.しかし,認知症患者が多く転倒が生じていた.高リスクにおける転倒対策として,認知症による危険行動を単に制限するだけでなく,転倒リスクを軽減させるような環境調整が必要である.