[OA-11-2] 地域在住脳血管障害者における上肢活動と健康関連QOLの関連
【はじめに】
脳血管障害は,治療技術の進歩により,生命予後や在宅復帰率の改善が認められている.一方で,在宅復帰を果たした脳血管障害者の多くが健康関連Quality of Life(以下,健康関連QOL)の低下を認める.この健康関連QOLには様々な要因との関連が報告されており,中でも生活場面での麻痺手の使用を示す上肢活動が着目されている.しかし,上肢活動と健康関連QOLに関する報告は,軽度から中等度の上肢麻痺患者に限定されており,重度上肢麻痺患者の検討は行われていない.重度上肢麻痺患者は,上肢活動が大幅に制限されるのみでなく,上肢活動の低下から筋の短縮や関節拘縮といったさらなる機能障害を招くとされている.そこで,本研究の目的は,重度上肢麻痺患者を含めた地域在住脳血管障害者における,上肢活動と健康関連QOLの関連を検討することである.
【方法】
研究デザインは横断研究とした.対象は,2023年4月から2023年9月までに,東京湾岸リハビリテーションセンターにて,通所リハビリテーションを利用した地域在住脳血管障害者とした.メインアウトカムは,健康関連QOLとし,日本語版Stroke Specific QOL Scale(以下,SS-QOL)を用いた.上肢活動量の測定は,日本語版Grade 4/5 Motor Activity Log(以下,MAL-S)のAmount of Use(以下,AOU)を用いた.統計解析として,従属変数にSS-QOLを,独立変数にMAL-Sを投入した,階層的重回帰分析(強制投入法)を実施した.調整変数には,年齢,性別,Stroke Impairment Assessment Set-motor(以下,SIAS-m)を投入した.さらに,SIAS-mの重症度別にて層別化し,同様の従属変数と独立変数にMAL-Sの第一四分位より高活動群,低活動群にカテゴリー化したものを投入した,Mann-WhitneyのU検定を実施した.本研究は,東京湾岸リハビリテーション病院の承諾を得て実施し,対象者には本研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た.
【結果】
解析対象者は100名であり,年齢は67.1±9.5歳,男性の割合は65.0%であった.アウトカムである,SS-QOLは39.2±6.0点,MAL-SのAOUは2.1±1.5点であった.階層的重回帰分析の結果,MAL-Sは交絡調整モデルでも,SS-QOLと有意に関連した(p<0.05).さらに,重症度にて層別化した解析の結果,MAL-Sはいずれの重症度においても,高活動群は低活動群と比較しSS-QOLが有意に高かった(p<0.05).
【考察】
今回の検証では,上肢活動は健康関連QOLと関連性を示し,この関係は上肢麻痺の重症度などの交絡因子で調整した場合においても維持されることが示された.上肢活動は,身体面と心理面の両方に影響することから,これらにより構成される SS-QOLと独立して関連を示したことが考えられる.一般的に,上肢麻痺の重要度が健康関連 QOLへ及ぼす影響が大きいと考えられているが,このことを考慮しても上肢活動という可変要因によって健康関連QOLを変化させうる可能性を示せた点は意義があると考える.
【結論】
重症度の幅広い地域在住脳血管障害者において上肢活動が健康関連QOLと関連するか交絡要因を調整した上で検討した.その結果,重症度に関わらず,上肢活動と健康関連QOLとの関連が示された.以上のことより,地域在住脳血管障害者における健康関連QOLの維持・向上のために,上肢活動を増やすことの重要性が示唆された.
脳血管障害は,治療技術の進歩により,生命予後や在宅復帰率の改善が認められている.一方で,在宅復帰を果たした脳血管障害者の多くが健康関連Quality of Life(以下,健康関連QOL)の低下を認める.この健康関連QOLには様々な要因との関連が報告されており,中でも生活場面での麻痺手の使用を示す上肢活動が着目されている.しかし,上肢活動と健康関連QOLに関する報告は,軽度から中等度の上肢麻痺患者に限定されており,重度上肢麻痺患者の検討は行われていない.重度上肢麻痺患者は,上肢活動が大幅に制限されるのみでなく,上肢活動の低下から筋の短縮や関節拘縮といったさらなる機能障害を招くとされている.そこで,本研究の目的は,重度上肢麻痺患者を含めた地域在住脳血管障害者における,上肢活動と健康関連QOLの関連を検討することである.
【方法】
研究デザインは横断研究とした.対象は,2023年4月から2023年9月までに,東京湾岸リハビリテーションセンターにて,通所リハビリテーションを利用した地域在住脳血管障害者とした.メインアウトカムは,健康関連QOLとし,日本語版Stroke Specific QOL Scale(以下,SS-QOL)を用いた.上肢活動量の測定は,日本語版Grade 4/5 Motor Activity Log(以下,MAL-S)のAmount of Use(以下,AOU)を用いた.統計解析として,従属変数にSS-QOLを,独立変数にMAL-Sを投入した,階層的重回帰分析(強制投入法)を実施した.調整変数には,年齢,性別,Stroke Impairment Assessment Set-motor(以下,SIAS-m)を投入した.さらに,SIAS-mの重症度別にて層別化し,同様の従属変数と独立変数にMAL-Sの第一四分位より高活動群,低活動群にカテゴリー化したものを投入した,Mann-WhitneyのU検定を実施した.本研究は,東京湾岸リハビリテーション病院の承諾を得て実施し,対象者には本研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た.
【結果】
解析対象者は100名であり,年齢は67.1±9.5歳,男性の割合は65.0%であった.アウトカムである,SS-QOLは39.2±6.0点,MAL-SのAOUは2.1±1.5点であった.階層的重回帰分析の結果,MAL-Sは交絡調整モデルでも,SS-QOLと有意に関連した(p<0.05).さらに,重症度にて層別化した解析の結果,MAL-Sはいずれの重症度においても,高活動群は低活動群と比較しSS-QOLが有意に高かった(p<0.05).
【考察】
今回の検証では,上肢活動は健康関連QOLと関連性を示し,この関係は上肢麻痺の重症度などの交絡因子で調整した場合においても維持されることが示された.上肢活動は,身体面と心理面の両方に影響することから,これらにより構成される SS-QOLと独立して関連を示したことが考えられる.一般的に,上肢麻痺の重要度が健康関連 QOLへ及ぼす影響が大きいと考えられているが,このことを考慮しても上肢活動という可変要因によって健康関連QOLを変化させうる可能性を示せた点は意義があると考える.
【結論】
重症度の幅広い地域在住脳血管障害者において上肢活動が健康関連QOLと関連するか交絡要因を調整した上で検討した.その結果,重症度に関わらず,上肢活動と健康関連QOLとの関連が示された.以上のことより,地域在住脳血管障害者における健康関連QOLの維持・向上のために,上肢活動を増やすことの重要性が示唆された.