[OA-11-3] LSA得点に影響を及ぼす影響の検討
~精神機能的側面に着目して~
【はじめに】
回復期リハビリテーションにおいて入院期間中から退院後の生活(生活期)を見据えた介入を行う事は非常に重要であると考える.生活期で個人が営んでいる生活を定量的に表すことが出来る評価としてLife Space Assessment(以下LSA)がある.LSAは身体活動を生活空間といった概念で捉え,居室から町外までの生活空間を5分割し,その範囲での活動の有無と頻度,及び自立度を評価する指標である.LSAの合計得点には10m快適歩行速度,6分間歩行距離,ADL遂行能力等の身体機能的素因との関連が報告されている.しかし,精神機能面との関連性についての報告は少なく,実験対象から認知機能低下や高次脳機能障害を有する患者は除外されている研究が多い印象を受ける.本研究では認知機能低下や高次脳機能障害を有する患者を研究対象から除外せず,LSA高得点群,低得点群間でMMSEの合計得点に有意差が生じているか検討した.
【対象および方法】
1.対象
2023年1月から10月の間に当院に入院していた脳卒中患者で,自宅退院となり退院後に電話にて実施している追跡調査について同意を得られた48名を対象とした.退院1ヵ月後を目安に実施した追跡調査でLSAの回答が得られなかった者を除外し,回答が得られた25名を分析対象とした.尚,本研究は当院の倫理審査委員会にて承認を得て実施した.
2.方法
先行研究に基づき退院約1か月後のLSA得点が56点以上の者を高得点群,56点未満の者を低得点群とする2群に分けた.2群間で入退院時のMMSE得点・FIMの移動項目得点をmann-whitneyのu検定を用いて統計学的有意差を調べた.統計解析にはEZR(Ver.1.63)を使用し有意水準は5%未満とした.
【結果】
2群間の移動FIM得点には統計学的有意差が認められた(入院時p=0.001,退院時p=0.016).MMSE得点に関しては入院時,退院時のいずれも2群間に統計学的有意差は認められなかった.(入院時p=0.347,退院時p=0.410)
【考察】
2群間の移動FIM得点には統計学的有意差が認められ,LSA得点と移動能力との関連性について報告する先行研究を支持する結果となった.対して,MMSE得点は2群間に統計学的有意差は認められなかった点から,認知機能や高次脳機能などの精神機能的側面はLSA得点に影響を与えない可能性が示唆された.しかし,MMSEは認知・高次脳機能のスクリーニング検査としての要素が強いため,より詳細な精神機能面とLSA得点との関連性を確かめるためには,他の評価バッテリーやMMSE回答項目毎の統計分析も有用と考える.
また,本研究の対象者を振り返ると,LSA低得点群の中にはMMSE得点が高く,移動能力が自立している患者も散見された.しかし,それらの症例には前提的に生活範囲を広くとる必要がないといった性質が共通している印象をもった.
今回は退院後の生活範囲を定量的に捉えるためにLSAを用いた研究を行った.しかし本研究のようなLSA得点の高低による2群間比較では,前述したような各個人における生活の性質的な要素を結果に反映することは難しい.作業療法介入を行うにあたり,患者それぞれに求められる生活の質への充足度を視覚的に捉えるためには,今後の研究において個人に対する入院前後のLSA得点の比較検討も有用ではないかと考える.
回復期リハビリテーションにおいて入院期間中から退院後の生活(生活期)を見据えた介入を行う事は非常に重要であると考える.生活期で個人が営んでいる生活を定量的に表すことが出来る評価としてLife Space Assessment(以下LSA)がある.LSAは身体活動を生活空間といった概念で捉え,居室から町外までの生活空間を5分割し,その範囲での活動の有無と頻度,及び自立度を評価する指標である.LSAの合計得点には10m快適歩行速度,6分間歩行距離,ADL遂行能力等の身体機能的素因との関連が報告されている.しかし,精神機能面との関連性についての報告は少なく,実験対象から認知機能低下や高次脳機能障害を有する患者は除外されている研究が多い印象を受ける.本研究では認知機能低下や高次脳機能障害を有する患者を研究対象から除外せず,LSA高得点群,低得点群間でMMSEの合計得点に有意差が生じているか検討した.
【対象および方法】
1.対象
2023年1月から10月の間に当院に入院していた脳卒中患者で,自宅退院となり退院後に電話にて実施している追跡調査について同意を得られた48名を対象とした.退院1ヵ月後を目安に実施した追跡調査でLSAの回答が得られなかった者を除外し,回答が得られた25名を分析対象とした.尚,本研究は当院の倫理審査委員会にて承認を得て実施した.
2.方法
先行研究に基づき退院約1か月後のLSA得点が56点以上の者を高得点群,56点未満の者を低得点群とする2群に分けた.2群間で入退院時のMMSE得点・FIMの移動項目得点をmann-whitneyのu検定を用いて統計学的有意差を調べた.統計解析にはEZR(Ver.1.63)を使用し有意水準は5%未満とした.
【結果】
2群間の移動FIM得点には統計学的有意差が認められた(入院時p=0.001,退院時p=0.016).MMSE得点に関しては入院時,退院時のいずれも2群間に統計学的有意差は認められなかった.(入院時p=0.347,退院時p=0.410)
【考察】
2群間の移動FIM得点には統計学的有意差が認められ,LSA得点と移動能力との関連性について報告する先行研究を支持する結果となった.対して,MMSE得点は2群間に統計学的有意差は認められなかった点から,認知機能や高次脳機能などの精神機能的側面はLSA得点に影響を与えない可能性が示唆された.しかし,MMSEは認知・高次脳機能のスクリーニング検査としての要素が強いため,より詳細な精神機能面とLSA得点との関連性を確かめるためには,他の評価バッテリーやMMSE回答項目毎の統計分析も有用と考える.
また,本研究の対象者を振り返ると,LSA低得点群の中にはMMSE得点が高く,移動能力が自立している患者も散見された.しかし,それらの症例には前提的に生活範囲を広くとる必要がないといった性質が共通している印象をもった.
今回は退院後の生活範囲を定量的に捉えるためにLSAを用いた研究を行った.しかし本研究のようなLSA得点の高低による2群間比較では,前述したような各個人における生活の性質的な要素を結果に反映することは難しい.作業療法介入を行うにあたり,患者それぞれに求められる生活の質への充足度を視覚的に捉えるためには,今後の研究において個人に対する入院前後のLSA得点の比較検討も有用ではないかと考える.