[OA-12-4] ポータブル3次元動作解析装置を用いた完全頸髄損傷チェアスキーヤーの滑走中の動作分析
【問題】チェアスキーは脊髄損傷対象のスポーツとして始まったが,下肢障害のある急性灰白髄炎や下肢切断や四肢・体幹の麻痺のある頸髄損傷者にもプレーヤーが広がっている.一方で,これらの疾患のチェアスキー操作特性を研究している論文は少ない.
またチェアスキーの動作分析に関しては, 実験室での3次元動作分析やビデオを利用した2次元の動作分析は行われているが,ゲレンデにおける3次元動作分析は行われていない.今回,光学的な手法ではなくポータブル9軸慣性計測装置を利用することで,光学的には測定困難なチェアスキー滑走中の動作を分析する.
【目的】ポータブル3次元動作解析装置を用い,滑走中の動作分析を実施する.スキー板の動きに影響を及ぼす関節運動について検討する.
【方法】1.実験参加者:日本チェアスキー協会普及部主催の指導者講習会への参加者 1 名に依頼した.50代男性,Zancolliの分類C6B2,AIS A,チェアスキー歴29年.2.実験装置:滑走する様子をNORAXON社製 myomotionで記録した.3.実験設定:ゲレンデでセンサーを17個装着した.滑走前にキャリブレーションを行い,指定した地点から指定した地点までをカービング中回り5ターンで滑走するよう依頼した.4.研究倫理:本研究は,神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認(判定結果通知番号:保大第5-22-34号)を得た.また,研究に関する主旨,自由意志への配慮,個人情報の保護等に関して,口頭ならびに書面にて十分説明し同意を得た.5.利益相反:開示すべきCOIはない.【結果】統計的解析にはpython3.12.1を用いた.myomotionより,キャリブレーション時との角度変化40項目・スキー板のロール・ピッチ・ヨーの時系列データが100Hzで回収された.プレターン終了時を境に波形が異なるため,データを分割し解析を実施した.関節運動からスキー板の動きへの影響を見るために,各変数を標準化し相互相関係数を算出した.スキーロールと相互相関係数が0.7以上であった変数のうちラグが負であったものを対象にスキーロールとの間にVARモデルを構築しGranger因果を検討した.信頼区間は95%とした.有意な影響が認められたものを以下に記述する.括弧内は最大相互相関係数を示したときのラグ,相互相関係数である.プレターンでは右前腕回外(-96, 0.74),胸椎回旋(-72, 0.72),右手撓屈(-68, -0.81),腰椎回旋(-18, 0.82),左前腕回外(-16, -0.74),左手撓屈(-15, 0.77),プレターン後は腰椎回旋(-146, 0.73),左骨盤回旋(-97, 0.89),右骨盤回旋(-97, -0.89),スキーヨー(-87, -0.95),頸椎回旋(-68, 0.91),胸椎回旋(-40, 0.77),左前腕回外(-35, -0.88),右前腕回外(-33, 0.90),腰椎側屈(-15, -0.94),右手撓屈(-13, -0.95),右肘屈曲(-11, 0.94).
【考察】相互相関係数とグレンジャー因果の検討により,スキーロールに影響を及ぼしている変数とその時間的偏移や,プレターン終了前後を境に影響を及ぼしている変数に共通点と相違点があることが推察された.腰椎回旋・側屈角度を算出するための骨盤と胸椎下部のセンサーは人体よりも剛性が高いチェアスキーのバケットに装着しており,本来の角度を反映しているとは言い難いが,それであっても高い相関係数と0.2秒程度時間的に前方に偏移しているのは興味深い結果であり,機能不全箇所である腰椎の運動を生むためにどのような他の関節運動が関わっているか,共分散構造分析などを用いてさらに検討を行いたいと考える.
【謝辞】本研究にあたり快く実験に参加いただいた方,日本チェアスキー協会普及部の皆さま,スタッフの皆さまには多大なるご協力をいただきましたことを御礼申し上げます.
またチェアスキーの動作分析に関しては, 実験室での3次元動作分析やビデオを利用した2次元の動作分析は行われているが,ゲレンデにおける3次元動作分析は行われていない.今回,光学的な手法ではなくポータブル9軸慣性計測装置を利用することで,光学的には測定困難なチェアスキー滑走中の動作を分析する.
【目的】ポータブル3次元動作解析装置を用い,滑走中の動作分析を実施する.スキー板の動きに影響を及ぼす関節運動について検討する.
【方法】1.実験参加者:日本チェアスキー協会普及部主催の指導者講習会への参加者 1 名に依頼した.50代男性,Zancolliの分類C6B2,AIS A,チェアスキー歴29年.2.実験装置:滑走する様子をNORAXON社製 myomotionで記録した.3.実験設定:ゲレンデでセンサーを17個装着した.滑走前にキャリブレーションを行い,指定した地点から指定した地点までをカービング中回り5ターンで滑走するよう依頼した.4.研究倫理:本研究は,神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認(判定結果通知番号:保大第5-22-34号)を得た.また,研究に関する主旨,自由意志への配慮,個人情報の保護等に関して,口頭ならびに書面にて十分説明し同意を得た.5.利益相反:開示すべきCOIはない.【結果】統計的解析にはpython3.12.1を用いた.myomotionより,キャリブレーション時との角度変化40項目・スキー板のロール・ピッチ・ヨーの時系列データが100Hzで回収された.プレターン終了時を境に波形が異なるため,データを分割し解析を実施した.関節運動からスキー板の動きへの影響を見るために,各変数を標準化し相互相関係数を算出した.スキーロールと相互相関係数が0.7以上であった変数のうちラグが負であったものを対象にスキーロールとの間にVARモデルを構築しGranger因果を検討した.信頼区間は95%とした.有意な影響が認められたものを以下に記述する.括弧内は最大相互相関係数を示したときのラグ,相互相関係数である.プレターンでは右前腕回外(-96, 0.74),胸椎回旋(-72, 0.72),右手撓屈(-68, -0.81),腰椎回旋(-18, 0.82),左前腕回外(-16, -0.74),左手撓屈(-15, 0.77),プレターン後は腰椎回旋(-146, 0.73),左骨盤回旋(-97, 0.89),右骨盤回旋(-97, -0.89),スキーヨー(-87, -0.95),頸椎回旋(-68, 0.91),胸椎回旋(-40, 0.77),左前腕回外(-35, -0.88),右前腕回外(-33, 0.90),腰椎側屈(-15, -0.94),右手撓屈(-13, -0.95),右肘屈曲(-11, 0.94).
【考察】相互相関係数とグレンジャー因果の検討により,スキーロールに影響を及ぼしている変数とその時間的偏移や,プレターン終了前後を境に影響を及ぼしている変数に共通点と相違点があることが推察された.腰椎回旋・側屈角度を算出するための骨盤と胸椎下部のセンサーは人体よりも剛性が高いチェアスキーのバケットに装着しており,本来の角度を反映しているとは言い難いが,それであっても高い相関係数と0.2秒程度時間的に前方に偏移しているのは興味深い結果であり,機能不全箇所である腰椎の運動を生むためにどのような他の関節運動が関わっているか,共分散構造分析などを用いてさらに検討を行いたいと考える.
【謝辞】本研究にあたり快く実験に参加いただいた方,日本チェアスキー協会普及部の皆さま,スタッフの皆さまには多大なるご協力をいただきましたことを御礼申し上げます.