[OA-13-4] 高次脳機能障害を合併した生活期脳卒中患者に対するロボット療法の上肢片麻痺への有用性について
【はじめに】
近年,脳卒中後の上肢片麻痺改善のためにロボット療法の導入が増えており,リハビリテーションの選択の一つとなっている.また,脳卒中治療ガイドライン(2021)では,ロボット療法がグレードBと推奨されている.しかし,片麻痺改善のためのロボット療法の有用性を検討する研究では,高次脳機能障害を合併すると除外されることが多く,介入効果や限界を明確に示した報告は少ない.
そこで,本研究の目的は,生活期の高次脳機能障害を合併する上肢片麻痺患者に対して,上肢片麻痺へのロボット療法の有用性の検討することである.
【対象】
対象は,2022年12月から2023年10月までに加治木温泉病院の医療病棟と地域包括ケア病棟に入院し,リハビリテーションを受けた高次脳機能障害を合併する生活期の脳卒中患者10名(男性10名,女性0名,平均年齢75.4歳±9.6歳,脳出血6名,脳梗塞4名,注意障害5名,USN5名)であった.選定基準は,発症から6ヵ月以上であり,普通型車椅子に座れ,重篤な認知機能障害がなく,主治医からロボット機器の使用が許可されていることとした.なお,すべての対象に対して本研究の内容を文書及び口頭で説明し,同意を得て実施した(倫理番号604).
【方法】
対象に通常訓練(促通反復療法やADL訓練)と肩関節訓練装置Physibo RTD(RTD)リーチング訓練を2週間(12セッション,1セッションあたり15分)実施した.そして,介入前後で,上肢機能評価のFugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目とBox and Block test(BBT),生活や活動指標としてFunctional Independence Measure(FIM)を比較した(Wilcoxonの符号順位和検定,効果量r).なお,統計ソフトは,EZR(ver.1.52)を使用し,有意水準を5%とした.
【結果】
RTD介入後の結果,対象10名の上肢FMAは,変化量の中央値が6.5点であり,2週間の介入後,有意な改善を示した(p=0.006,r=0.89;効果量大).一方,BBTは,FMAが30点以上あった対象3名の改善にとどまり,2週間の介入後の結果に有意な改善はなかった(p=0.174,r=0.51;効果量大).また,FIMの運動項目の変化量の中央値は,4点であり,2週間の介入後,有意な改善を認めた(p=0.009,r=0.84;効果量大).
【考察】
高次脳機能障害を合併する生活期の脳卒中患者に対し,RTD介入効果を検討した.その結果,FMAは,生活期脳卒中のMCID5.25点を上回り,上肢片麻痺の有意な改善を示した.RTDは,上肢の免荷機能,電気刺激と振動刺激,指示音などのアシスト機能や運動の反復性に優れ,動作遂行も簡単なため,導入しやすい.これらの特徴が習得目標の随意運動に必要な神経回路の形成強化に有利に働き(下堂薗ら2019),高次脳機能障害合併者への介入を容易にし,上肢片麻痺の改善に寄与したと考えられる.一方,BBTは,検査の特徴上,粗大運動や手指の巧緻性を要する物品操作が含まれ,基本的共同運動から逸脱した運動が必要である.つまり,そこまでの回復に至らなかった対象は,課題遂行が困難であり,変化がなかったと推測される.また,FIMは,生活期対象であることを考慮すると,わずかな得点の変化にも臨床的な意味があったと考えられる.今後は,高次脳機能障害に対するロボット療法の治療的可能性を検討するためにサンプルサイズを増やす必要がある.
近年,脳卒中後の上肢片麻痺改善のためにロボット療法の導入が増えており,リハビリテーションの選択の一つとなっている.また,脳卒中治療ガイドライン(2021)では,ロボット療法がグレードBと推奨されている.しかし,片麻痺改善のためのロボット療法の有用性を検討する研究では,高次脳機能障害を合併すると除外されることが多く,介入効果や限界を明確に示した報告は少ない.
そこで,本研究の目的は,生活期の高次脳機能障害を合併する上肢片麻痺患者に対して,上肢片麻痺へのロボット療法の有用性の検討することである.
【対象】
対象は,2022年12月から2023年10月までに加治木温泉病院の医療病棟と地域包括ケア病棟に入院し,リハビリテーションを受けた高次脳機能障害を合併する生活期の脳卒中患者10名(男性10名,女性0名,平均年齢75.4歳±9.6歳,脳出血6名,脳梗塞4名,注意障害5名,USN5名)であった.選定基準は,発症から6ヵ月以上であり,普通型車椅子に座れ,重篤な認知機能障害がなく,主治医からロボット機器の使用が許可されていることとした.なお,すべての対象に対して本研究の内容を文書及び口頭で説明し,同意を得て実施した(倫理番号604).
【方法】
対象に通常訓練(促通反復療法やADL訓練)と肩関節訓練装置Physibo RTD(RTD)リーチング訓練を2週間(12セッション,1セッションあたり15分)実施した.そして,介入前後で,上肢機能評価のFugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目とBox and Block test(BBT),生活や活動指標としてFunctional Independence Measure(FIM)を比較した(Wilcoxonの符号順位和検定,効果量r).なお,統計ソフトは,EZR(ver.1.52)を使用し,有意水準を5%とした.
【結果】
RTD介入後の結果,対象10名の上肢FMAは,変化量の中央値が6.5点であり,2週間の介入後,有意な改善を示した(p=0.006,r=0.89;効果量大).一方,BBTは,FMAが30点以上あった対象3名の改善にとどまり,2週間の介入後の結果に有意な改善はなかった(p=0.174,r=0.51;効果量大).また,FIMの運動項目の変化量の中央値は,4点であり,2週間の介入後,有意な改善を認めた(p=0.009,r=0.84;効果量大).
【考察】
高次脳機能障害を合併する生活期の脳卒中患者に対し,RTD介入効果を検討した.その結果,FMAは,生活期脳卒中のMCID5.25点を上回り,上肢片麻痺の有意な改善を示した.RTDは,上肢の免荷機能,電気刺激と振動刺激,指示音などのアシスト機能や運動の反復性に優れ,動作遂行も簡単なため,導入しやすい.これらの特徴が習得目標の随意運動に必要な神経回路の形成強化に有利に働き(下堂薗ら2019),高次脳機能障害合併者への介入を容易にし,上肢片麻痺の改善に寄与したと考えられる.一方,BBTは,検査の特徴上,粗大運動や手指の巧緻性を要する物品操作が含まれ,基本的共同運動から逸脱した運動が必要である.つまり,そこまでの回復に至らなかった対象は,課題遂行が困難であり,変化がなかったと推測される.また,FIMは,生活期対象であることを考慮すると,わずかな得点の変化にも臨床的な意味があったと考えられる.今後は,高次脳機能障害に対するロボット療法の治療的可能性を検討するためにサンプルサイズを増やす必要がある.