[OA-14-3] 脳血管疾患患者2 症例の自転車運転再開支援
~ Mini-BESTest における姿勢制御に改善が見られた経験~
【はじめに】自家用車や自転車を自分で運転できることが,外出頻度に大きく影響すると報告されている.また移動手段の確立が日常生活を送る上で重要であり,作業療法士においても支援が求められる.今回,自転車運転再開支援を必要とする2症例(脳血管疾患)と関わる機会を得て,姿勢制御機構に共通点が観察されたため以下に報告する.なお本報告にあたり,倫理的配慮として本人に書面にて説明し同意を得ている.
【症例紹介】A氏:60代男性.診断名:脳梗塞(左放線冠).131病日より自転車介入開始.B氏:50代男性.クモ膜下出血.139病日より自転車介入開始.
【介入時評価】日常生活機能評価(以下:FIM),Trail making Test A/B(以下:TMT A/B),Bergs balance Scale(以下:BBS), Mini-Balance Evaluation Systems Test(以下:Mini-BESTest)(①予測的姿勢制御②反応的姿勢制御③感覚機能④動的歩行),脳卒中機能障害評価表(以下:SIAS)を設定し,自転車介入開始時/退院時に測定した.A氏:FIM(123点),SIAS(74点),Mini-BESTest(14/28点):①4/6点,②0/6点,③4/6点,④6/10点.BBS(41点).TMT-A(132秒),B(110秒).B氏:FIM(111点),SIAS(60点),Mini -BSETest(12点):①4点,②0点,③3点,④5点.BBS(44点),TMT-A(64秒),B(86秒).両者の共通点としては,Mini-BESTestにおける小項目「予測的姿勢制御」の爪先立ち,片足立ちでの減点,「反応的姿勢制御」が共に0点であることが挙げられた.自転車走行において,両者ともに両上肢機能は問題なく,視野も明瞭であった.初回介入時は,安定して漕ぐに至らず,走行開始時点(漕ぎ出し~低速走行時)で崩れが観察された.特に漕ぎ出す際,両足部をペダルに乗せようとするも,そのまま足をつく様子や漕ぎ出し直後に漕いだ側への崩れが観察された.また咄嗟に足を着いた際には同側への倒れ込みも観察され,セラピストの介助が必要であった.
【方法】理学療法士と自転車走行自立を目標に進め,動画や評価結果を共有して議論を重ねた.作業療法的介入(3単位/毎日)として,バランストレーニングや姿勢制御強化を中心とした介入に加え,3回/週の自転車練習を実施した.
【結果】A氏(157病日):FIM(125点),SIAS(76点),Mini-BESTest(24点):①5点,②5点,③6点,④8点.BBS(52点).TMT-A(118秒),B(131秒).B氏(177病日):FIM(123点),SIAS(70点),Mini -BSETest(22点):①5点,②5点,③5点,④8点.BBS(44点),TMT-A(62秒),B(88秒).特にMini-BESTestでは,両者共に10点以上の向上を認め,先行研究で示されるMinimal clinically important difference:MCIDの1.5〜4.5点を上回っており臨床的に意味のある改善を認めたと言える.加えて自転車走行技能は向上し,両者ともに自転車走行が可能となり退院に至った.
【考察】
Mini-BESTestはBBSと比較して,より動的なバランス能力を必要とする動作を反映する際に有用である(大高ら.2014)と報告されており,バランス機能と自転車走行の評価として活用できると考えた. また,自転車の安定性を担保するには,体重移動を通じて,素早く自転車の左右の傾斜を抑え込む能力が必要(織邊ら.2020)と報告されている.本来,姿勢制御は随意運動に先行して現れ,バランスを崩す要因を最小にするために働くとされており,今回の2症例を通して自転車の支援をする際は,可能な限り姿勢制御機構を評価した上で,介入を行う必要性が示唆された.
【本報告の限界】
2症例の特徴を観察した報告であり,自転車運転が再開できた要因やその因果関係については言及できないため,デザイン化された症例研究や症例数を増やした上で,自転車走行に寄与する因子を検討する必要が示唆された.
【症例紹介】A氏:60代男性.診断名:脳梗塞(左放線冠).131病日より自転車介入開始.B氏:50代男性.クモ膜下出血.139病日より自転車介入開始.
【介入時評価】日常生活機能評価(以下:FIM),Trail making Test A/B(以下:TMT A/B),Bergs balance Scale(以下:BBS), Mini-Balance Evaluation Systems Test(以下:Mini-BESTest)(①予測的姿勢制御②反応的姿勢制御③感覚機能④動的歩行),脳卒中機能障害評価表(以下:SIAS)を設定し,自転車介入開始時/退院時に測定した.A氏:FIM(123点),SIAS(74点),Mini-BESTest(14/28点):①4/6点,②0/6点,③4/6点,④6/10点.BBS(41点).TMT-A(132秒),B(110秒).B氏:FIM(111点),SIAS(60点),Mini -BSETest(12点):①4点,②0点,③3点,④5点.BBS(44点),TMT-A(64秒),B(86秒).両者の共通点としては,Mini-BESTestにおける小項目「予測的姿勢制御」の爪先立ち,片足立ちでの減点,「反応的姿勢制御」が共に0点であることが挙げられた.自転車走行において,両者ともに両上肢機能は問題なく,視野も明瞭であった.初回介入時は,安定して漕ぐに至らず,走行開始時点(漕ぎ出し~低速走行時)で崩れが観察された.特に漕ぎ出す際,両足部をペダルに乗せようとするも,そのまま足をつく様子や漕ぎ出し直後に漕いだ側への崩れが観察された.また咄嗟に足を着いた際には同側への倒れ込みも観察され,セラピストの介助が必要であった.
【方法】理学療法士と自転車走行自立を目標に進め,動画や評価結果を共有して議論を重ねた.作業療法的介入(3単位/毎日)として,バランストレーニングや姿勢制御強化を中心とした介入に加え,3回/週の自転車練習を実施した.
【結果】A氏(157病日):FIM(125点),SIAS(76点),Mini-BESTest(24点):①5点,②5点,③6点,④8点.BBS(52点).TMT-A(118秒),B(131秒).B氏(177病日):FIM(123点),SIAS(70点),Mini -BSETest(22点):①5点,②5点,③5点,④8点.BBS(44点),TMT-A(62秒),B(88秒).特にMini-BESTestでは,両者共に10点以上の向上を認め,先行研究で示されるMinimal clinically important difference:MCIDの1.5〜4.5点を上回っており臨床的に意味のある改善を認めたと言える.加えて自転車走行技能は向上し,両者ともに自転車走行が可能となり退院に至った.
【考察】
Mini-BESTestはBBSと比較して,より動的なバランス能力を必要とする動作を反映する際に有用である(大高ら.2014)と報告されており,バランス機能と自転車走行の評価として活用できると考えた. また,自転車の安定性を担保するには,体重移動を通じて,素早く自転車の左右の傾斜を抑え込む能力が必要(織邊ら.2020)と報告されている.本来,姿勢制御は随意運動に先行して現れ,バランスを崩す要因を最小にするために働くとされており,今回の2症例を通して自転車の支援をする際は,可能な限り姿勢制御機構を評価した上で,介入を行う必要性が示唆された.
【本報告の限界】
2症例の特徴を観察した報告であり,自転車運転が再開できた要因やその因果関係については言及できないため,デザイン化された症例研究や症例数を増やした上で,自転車走行に寄与する因子を検討する必要が示唆された.