[OA-14-5] 脳卒中患者の自動車運転再開における実車評価の重要性
~自動車学校との連携を通して~
【はじめに】近年,高次脳機能障害を有する脳障害者の自動車運転再開への取り組みが注目されている.当院では,2023年度より,近隣自動車学校と連携した実車評価を実施している.神経心理検査やドライビングシュミレーター(Hondaセーフティナビ 以下DS)と実車評価で,運転適性が異なる結果となった症例も数例経験した.自動車運転再開支援における,自動車学校と連携した実車評価の重要性が示唆されたため報告する.
【当院の自動車運転再開支援プログラム】最初に複数の神経心理検査を実施する.MMSE,TMT-A,TMT-B,Symbol Digit Modalities Test(以下SDMT),Rey Osterriethの複雑図形の図形模写,Frontal Assesment Battery(以下FAB),日本版脳卒中ドライバーのスクリーニング検査(以下J-SDSA)を用いる.続いて,危険予測体験や総合運転学習の評価をDSにて実施する.これらの評価後,医師とのミニカンファレンスを行う.そして,患者に同意を得た上で自動車学校にて実車評価を実施する.実車評価前には,技能検定員と交通心理士の資格を有する自動車学校指導員に対し,神経心理検査所見や高次脳機能障害のADLへの影響をブリーフィングする時間を設け,症例の特性や社会背景を共有した上で実車評価を行なっている.実車評価には,指導員,OT,可能であれば家族同乗のもとで行う.自動車学校からの評価表,OTの実車場面での観察評価Driving Assessment Scale(以下DAS)の結果を含め報告書を作成し,医師へ情報提供を行い,総合的判断により診断書の作成へと進めている.2023年度下半期には9名の脳卒中患者の実車評価を実施した.
【結果】9名中7名の患者が医師から運転再開可能の判断を受けた.そのうち6名は,退院後適正検査にも合格し,退院1カ月後の追跡調査時には事故なく運転再開していることを確認した(1名は適正検査結果と事故の有無未確認).中には,各種心理検査で目安の点数を下回る患者や,J-SDSAで不合格予測が上回る患者もみられたが,実車評価で問題なく,運転再開の判断に至った.また,適正なしの判断を受けた2名のうち1名は神経心理検査,DS上は運転適正ありの結果だったが,実車評価にて危険運転が多く運転再開には至らなかった.運転再開に至らなかった2名においては,退院後の追跡調査では,ご家族の運転で外出するなどしており日常生活は大きな支障なく送ることができていた.
【考察】神経心理検査結果やDSの結果と,実車評価の結果で運転適正が異なる症例がみられたことから,自動車運転再開支援においては,実車評価までを評価することが望ましいと考える.また,自動車学校の指導員とブリーフィングを行い,症例の障害像や社会的背景を事前に情報共有しておくことで,限られた実車評価時間の中で効率的に評価,指導が行えるものと考える.また,家族が同乗することで病前との比較が可能となり,症例に対しより自己認識を促しやすくなるものと考える.
【おわりに】指導員,OT,家族が三位一体となり評価並びに症例へのフィードバックを行うことが,適切なアセスメントや患者に対する気づきを促すために重要と思われた.今後は症例数を蓄積していくとともに,運転再開困難と判断された患者に対するフォローアップ体制なども検討していきたい.
【当院の自動車運転再開支援プログラム】最初に複数の神経心理検査を実施する.MMSE,TMT-A,TMT-B,Symbol Digit Modalities Test(以下SDMT),Rey Osterriethの複雑図形の図形模写,Frontal Assesment Battery(以下FAB),日本版脳卒中ドライバーのスクリーニング検査(以下J-SDSA)を用いる.続いて,危険予測体験や総合運転学習の評価をDSにて実施する.これらの評価後,医師とのミニカンファレンスを行う.そして,患者に同意を得た上で自動車学校にて実車評価を実施する.実車評価前には,技能検定員と交通心理士の資格を有する自動車学校指導員に対し,神経心理検査所見や高次脳機能障害のADLへの影響をブリーフィングする時間を設け,症例の特性や社会背景を共有した上で実車評価を行なっている.実車評価には,指導員,OT,可能であれば家族同乗のもとで行う.自動車学校からの評価表,OTの実車場面での観察評価Driving Assessment Scale(以下DAS)の結果を含め報告書を作成し,医師へ情報提供を行い,総合的判断により診断書の作成へと進めている.2023年度下半期には9名の脳卒中患者の実車評価を実施した.
【結果】9名中7名の患者が医師から運転再開可能の判断を受けた.そのうち6名は,退院後適正検査にも合格し,退院1カ月後の追跡調査時には事故なく運転再開していることを確認した(1名は適正検査結果と事故の有無未確認).中には,各種心理検査で目安の点数を下回る患者や,J-SDSAで不合格予測が上回る患者もみられたが,実車評価で問題なく,運転再開の判断に至った.また,適正なしの判断を受けた2名のうち1名は神経心理検査,DS上は運転適正ありの結果だったが,実車評価にて危険運転が多く運転再開には至らなかった.運転再開に至らなかった2名においては,退院後の追跡調査では,ご家族の運転で外出するなどしており日常生活は大きな支障なく送ることができていた.
【考察】神経心理検査結果やDSの結果と,実車評価の結果で運転適正が異なる症例がみられたことから,自動車運転再開支援においては,実車評価までを評価することが望ましいと考える.また,自動車学校の指導員とブリーフィングを行い,症例の障害像や社会的背景を事前に情報共有しておくことで,限られた実車評価時間の中で効率的に評価,指導が行えるものと考える.また,家族が同乗することで病前との比較が可能となり,症例に対しより自己認識を促しやすくなるものと考える.
【おわりに】指導員,OT,家族が三位一体となり評価並びに症例へのフィードバックを行うことが,適切なアセスメントや患者に対する気づきを促すために重要と思われた.今後は症例数を蓄積していくとともに,運転再開困難と判断された患者に対するフォローアップ体制なども検討していきたい.