[OA-3-3] 回復期脳卒中患者における移乗動作自立に向けチェックリストを用いた介入
【はじめに】
移乗動作は複数の動作から構成され,移乗対象物と身体との位置関係や動作手順などを同時に処理するため,より複雑な注意機能を必要とする(吉村ら2019).しかし,脳卒中患者の注意機能が歩行能力に影響するという報告はされている(安藤ら2014)が,チェックリストを使用し移乗動作が自立した報告はされていない.そのため目的を,脳卒中により注意障害を呈した片麻痺患者に対しチェックリストを用いた介入と従来の移乗動作練習を比較してどちらが移乗動作の自立を促すことができるのかを明らかにすることとした.
【症例紹介】
50歳代前半,女性.診断名は右被殻出血.左側Brunnstrom recovery stageは全I.感覚障害は表在,深部感覚共に認めない.MMSE30点,TMT-A 168秒で,Bは困難で転換,分配性の注意障害がみられた.移乗動作は車椅子からベッドへの移乗においてブレーキやフットレスト忘れがあったため見守りとなっていた. 移乗動作のカナダ作業遂行測定(以下,COPM)は「重要度5/遂行度5/満足度7」であった.認知関連行動アセスメント(CBA)で病識項目が2点だった.
【方法】
研究デザインはAB法とした. A期は従来の移乗動作介入とし,B期はチェックリストを用いた移乗動作介入とした.介入は病室で行い車椅子からベッドへの移乗動作を実施した.開始肢位は車椅子座位とした.チェックリストは動作を9工程に分け,移乗動作を終えた後に患者自身が「〇△×」で採点をした.その後患者と共に振り返りながらセラピストが採点を行った.0点が0-24%,1点が25-49%,2点が50-74%,3点が75-99%,4点が100%自立とし,最高得点は27点で各工程の合計点数を記載した.頻度は週5日,1回10分.上記内容を136〜164病日まで実施した.
【説明と同意】
対象者の同意を得て実施した.報告すべきCOI関係にある企業等ない.
【経過・結果】
初期評価時のチェックリストは21点,A期後23点,B期後27点となった.B期後,手順は定着し移乗動作は自立となった.TMT-A 365秒,Bは困難であった.COPMは「重要度10/遂行度7/満足度10」となった.CBAの病識の項目は5点に向上した.B期後は患者自身がチェックリストを自己採点した.視覚的に患者自身のエラーしやすい工程のフィードバックを行った.その結果,車椅子からベッド間の動作におけるエラーは減少し移乗動作は自立となった.
【考察】
A期と比較し,B期でより動作の手順定着が向上した.これはチェックリストの使用により視覚的にフィードバックできたことが動作定着を促したと考える.注意機能に変化はないが,移乗動作に改善を認めた.これは,病識について,岡村ら(2023)は,自己評価と他者評価の差や,課題遂行時の観察による評価をする必要があると述べている.そのため,視覚的手順の提示に加え,自己と他者での不一致を確認することで気づきを促すことができ,動作の自立に至ったのではないかと考える.COPMの遂行度・満足度で改善を認め,MCIDを満たす変化があった(Lawら2009).そのため自然回復とは異なる経過を追うことができたと考える.
移乗動作は複数の動作から構成され,移乗対象物と身体との位置関係や動作手順などを同時に処理するため,より複雑な注意機能を必要とする(吉村ら2019).しかし,脳卒中患者の注意機能が歩行能力に影響するという報告はされている(安藤ら2014)が,チェックリストを使用し移乗動作が自立した報告はされていない.そのため目的を,脳卒中により注意障害を呈した片麻痺患者に対しチェックリストを用いた介入と従来の移乗動作練習を比較してどちらが移乗動作の自立を促すことができるのかを明らかにすることとした.
【症例紹介】
50歳代前半,女性.診断名は右被殻出血.左側Brunnstrom recovery stageは全I.感覚障害は表在,深部感覚共に認めない.MMSE30点,TMT-A 168秒で,Bは困難で転換,分配性の注意障害がみられた.移乗動作は車椅子からベッドへの移乗においてブレーキやフットレスト忘れがあったため見守りとなっていた. 移乗動作のカナダ作業遂行測定(以下,COPM)は「重要度5/遂行度5/満足度7」であった.認知関連行動アセスメント(CBA)で病識項目が2点だった.
【方法】
研究デザインはAB法とした. A期は従来の移乗動作介入とし,B期はチェックリストを用いた移乗動作介入とした.介入は病室で行い車椅子からベッドへの移乗動作を実施した.開始肢位は車椅子座位とした.チェックリストは動作を9工程に分け,移乗動作を終えた後に患者自身が「〇△×」で採点をした.その後患者と共に振り返りながらセラピストが採点を行った.0点が0-24%,1点が25-49%,2点が50-74%,3点が75-99%,4点が100%自立とし,最高得点は27点で各工程の合計点数を記載した.頻度は週5日,1回10分.上記内容を136〜164病日まで実施した.
【説明と同意】
対象者の同意を得て実施した.報告すべきCOI関係にある企業等ない.
【経過・結果】
初期評価時のチェックリストは21点,A期後23点,B期後27点となった.B期後,手順は定着し移乗動作は自立となった.TMT-A 365秒,Bは困難であった.COPMは「重要度10/遂行度7/満足度10」となった.CBAの病識の項目は5点に向上した.B期後は患者自身がチェックリストを自己採点した.視覚的に患者自身のエラーしやすい工程のフィードバックを行った.その結果,車椅子からベッド間の動作におけるエラーは減少し移乗動作は自立となった.
【考察】
A期と比較し,B期でより動作の手順定着が向上した.これはチェックリストの使用により視覚的にフィードバックできたことが動作定着を促したと考える.注意機能に変化はないが,移乗動作に改善を認めた.これは,病識について,岡村ら(2023)は,自己評価と他者評価の差や,課題遂行時の観察による評価をする必要があると述べている.そのため,視覚的手順の提示に加え,自己と他者での不一致を確認することで気づきを促すことができ,動作の自立に至ったのではないかと考える.COPMの遂行度・満足度で改善を認め,MCIDを満たす変化があった(Lawら2009).そのため自然回復とは異なる経過を追うことができたと考える.