[OA-4-1] 充実した初回面接が患者の想いや変化を受け止める一助となる可能性
~早期に合意目標が明確化し復職を経た注意障害を有する一例~
【はじめに】
作業療法における初回面接は,患者との良好な協働関係を構築するために有効だが,作業療法士(以下,OT)は介入に慣れが生じた段階で面接を初回実施することが多いと報告される.今回,注意障害を有する患者の介入にあたり初回面接を充実させた結果,目標である復職の達成に至った.OTと患者における関係性と作業療法の展開を報告する.本報告に関して本事例の了承は得ている.
【A氏の紹介】
50代後半女性である.Y月Z日左半身の運動障害が出現し当院へ救急搬送され,右前頭葉の脳膿瘍を認め入院となる.Z+2日に近医へ転院し膿瘍摘出術を施行し,Z+34日に当院へ転院し作業療法開始となる.転院時サマリーより,運動麻痺は改善したが注意障害を呈しており,復職の不安から精神的な落ち込みが多くリハビリ中は流涙することが多いとのことだった.
【初回面接】
入院翌日にA氏の表情を確認するため,向かい合い初回面接を実施した.言動のフィードバックを行うため発言を紙に記載した.OTとの距離を取りながら表情を変えず作業歴を語った.A氏は両親と弟の4人暮らしであり関係性は良好と推察した.自宅から車で30分のバス会社の事務員として長年勤務しており復職を切望していたが,家族は心配するあまり復職に否定的だった.FIMは108点だが生活範囲が狭小化しており院内生活において注意障害は顕在化していなかった.家族関係が良好であり,A氏はバスの運行に精通していたため,バス通勤で復職をすることを合意目標とした.
【介入】
入院時:作業バランスを整え主体的な入院生活を促すため,新聞の仮名拾いやパソコン操作など複数の作業を提示し選択してもらった.家族面会時にはリハビリの進行状況の説明や,家族の不安を聴取し関係性を構築した.家族よりメールの誤りがあると情報を得たため文章を共に作成した.
外来時:困りごとを聴取し解決方法を模索した.家族との関係性は良好であるが復職に否定的であるため,A氏の注意機能の改善を把握できるよう,仮名拾いのチェックを依頼した.バスを利用し一人で外出が可能となればバス通勤で短時間勤務の復職を目指した.
【結果】
入院時:支度を整え時間通りにリハビリ室へ来室し,自ら作業を選択することができ,主体的に生活することが可能となった.徐々にOTとのラポールは形成されたが,仕事の話題では流涙した.FIMは122点となり,Z+59日に自宅退院した.
外来時:毎回面接を行い自宅での生活状況やA氏の想いを聴取した.A氏は入院時と遜色ない生活が自宅でも行えていると自信を有していた.家族と仮名拾いの見落としが改善していることを共有すると家族の心配は軽減した.職場までのバスの時刻や乗り換えの確認を行い,バスでの外出が習慣化したZ+133日に復職をした.
【考察】
今回,初回面接を充実させることで早期に合意目標が明確化し,復職まで支援することができた.先行研究より,OTは対象者の主体性や協働関係を促進するために作業療法の説明と面接を行い,想いを受け止めることが重要とされる.初回面接は単なる情報収集でなく互いを知る大切な過程と考える.また,面接を重ねることで想いの変化に気づくことが出来ると考える.今回,A氏の語りを尊重し今後の生活を共に考えていく理解者として見守り続けるOTの姿勢は,日々の可能化を積み重ね復職を達成する一助となったのではないかと考える.
作業療法における初回面接は,患者との良好な協働関係を構築するために有効だが,作業療法士(以下,OT)は介入に慣れが生じた段階で面接を初回実施することが多いと報告される.今回,注意障害を有する患者の介入にあたり初回面接を充実させた結果,目標である復職の達成に至った.OTと患者における関係性と作業療法の展開を報告する.本報告に関して本事例の了承は得ている.
【A氏の紹介】
50代後半女性である.Y月Z日左半身の運動障害が出現し当院へ救急搬送され,右前頭葉の脳膿瘍を認め入院となる.Z+2日に近医へ転院し膿瘍摘出術を施行し,Z+34日に当院へ転院し作業療法開始となる.転院時サマリーより,運動麻痺は改善したが注意障害を呈しており,復職の不安から精神的な落ち込みが多くリハビリ中は流涙することが多いとのことだった.
【初回面接】
入院翌日にA氏の表情を確認するため,向かい合い初回面接を実施した.言動のフィードバックを行うため発言を紙に記載した.OTとの距離を取りながら表情を変えず作業歴を語った.A氏は両親と弟の4人暮らしであり関係性は良好と推察した.自宅から車で30分のバス会社の事務員として長年勤務しており復職を切望していたが,家族は心配するあまり復職に否定的だった.FIMは108点だが生活範囲が狭小化しており院内生活において注意障害は顕在化していなかった.家族関係が良好であり,A氏はバスの運行に精通していたため,バス通勤で復職をすることを合意目標とした.
【介入】
入院時:作業バランスを整え主体的な入院生活を促すため,新聞の仮名拾いやパソコン操作など複数の作業を提示し選択してもらった.家族面会時にはリハビリの進行状況の説明や,家族の不安を聴取し関係性を構築した.家族よりメールの誤りがあると情報を得たため文章を共に作成した.
外来時:困りごとを聴取し解決方法を模索した.家族との関係性は良好であるが復職に否定的であるため,A氏の注意機能の改善を把握できるよう,仮名拾いのチェックを依頼した.バスを利用し一人で外出が可能となればバス通勤で短時間勤務の復職を目指した.
【結果】
入院時:支度を整え時間通りにリハビリ室へ来室し,自ら作業を選択することができ,主体的に生活することが可能となった.徐々にOTとのラポールは形成されたが,仕事の話題では流涙した.FIMは122点となり,Z+59日に自宅退院した.
外来時:毎回面接を行い自宅での生活状況やA氏の想いを聴取した.A氏は入院時と遜色ない生活が自宅でも行えていると自信を有していた.家族と仮名拾いの見落としが改善していることを共有すると家族の心配は軽減した.職場までのバスの時刻や乗り換えの確認を行い,バスでの外出が習慣化したZ+133日に復職をした.
【考察】
今回,初回面接を充実させることで早期に合意目標が明確化し,復職まで支援することができた.先行研究より,OTは対象者の主体性や協働関係を促進するために作業療法の説明と面接を行い,想いを受け止めることが重要とされる.初回面接は単なる情報収集でなく互いを知る大切な過程と考える.また,面接を重ねることで想いの変化に気づくことが出来ると考える.今回,A氏の語りを尊重し今後の生活を共に考えていく理解者として見守り続けるOTの姿勢は,日々の可能化を積み重ね復職を達成する一助となったのではないかと考える.