[OA-4-3] 希望する保育業務への新規就労に至った元保育士の失語症を呈した一例
【はじめに】失語のある人が現職復帰や転職等,何らかのかたちで職場復帰した率は8.2~10.1%と低く,言語障害によるハンディキャップがその要因に大きく関与するものと考えられている.今回,失語症を呈しながらも,対人業務である保育業務への新規就労に至った事例を経験したため,経過を交え以下に報告する.本報告に対して症例に十分な説明を行い,同意を得た.
【症例紹介】30代女性.双子と夫と4人暮らし.保育士として働きながら,家事・育児・仕事に追われ忙しく生活を送っていた中,脳梗塞を発症.半年間当院でリハビリ入院を行いADLは独歩自立レベルで自宅退院となったが,失語症状は中等度残存している状態であった.外来言語療法と並行し,家事・育児の両立に主眼を置いた1年間の在宅生活を送ったのち,就労支援目的にて外来作業療法の介入に至った.
【介入経過】外来作業療法での初回面談時,症例は「働きたい」という希望はあるが「言葉が出づらいから仕事は難しいかもしれない」と葛藤されている様子であった.症例の不安な気持ちを傾聴しながら,就労に対するニーズの明確化(希望の業種や勤務形態など)を丁寧に行った.その中でも,「無理だと思うけど,本当は保育に携わりたい」と素直な気持ちを聴取することが出来た.職業選択の幅を増やすためにも,専門機関での職業適性検査を受けるよう提案し,医療ソーシャルワーカーを通して職業センターへ就労能力の評価を依頼した.外来作業療法で聴取したニーズや,その他働くうえでの心配な点(身体的特性,対人関係など)も聴取・情報整理を行い,今後の就労計画の策定に向け,職業センターでの面談時に提起できるよう調整した.その後,職業適性検査の結果とご本人の希望をすり合わせ,言語を介さない保育補助業務の適性を有するとの判断に至る.実際に面接や業務体験等を行ったのち,希望していた保育園での出勤を開始することが決定.外来作業療法では事前に,就業生活において予測される課題(職場間の対人交流,勤務中の休息の取り方,余暇バランス)を抽出し,対応策を共に検討した.実際に出勤開始後も週1回のペースで外来作業療法を行い,定期的に話を聞く機会を保つことで実際に業務を行って症例が困ったことを聴取し,タイムリーに対策を検討することで極力相談が先延ばしにならないよう心掛けた.1か月の出勤を経て,正式に雇用契約を行い新規就労に至る.新規就労後より,週1回から月1回へと外来作業療法の介入頻度を徐々に減らし,最終的にはリモート対応での状況確認に切り替え,職場に定着しているか確認し適宜対応するようにした.
【結果】一般就労として,保育補助業務での新規就労を果たした.正規雇用後も6か月継続してフォローアップを行い,就労から半年経過した現在も体調に支障なく,就労継続中である.
【考察】就労支援での作業療法において,「支援をする・支援される」という関係ではなく,これからどうしていきたいのかを一緒に考える伴走者のような役割を心がけることが重要であると言われている.今回の外来作業療法では,症例のなかなか話せない希望や本音を丁寧に傾聴しながら,共に考え,ニーズを明らかにしたことで症例の能力だけでなく興味に適合した職業選択を行う手助けをすることが出来たと考える.また,高次脳機能障害者の就労支援は,就労後も長期的で切れ目のない支援が必要であると報告されており,今回の介入においても外来作業療法を通した定期的な介入を継続することで症例の話を聞く機会を保ち,寄り添う姿勢を大切に,心理面の支援に徹したことが就労定着に繋がったものではないかと考えられる.
【症例紹介】30代女性.双子と夫と4人暮らし.保育士として働きながら,家事・育児・仕事に追われ忙しく生活を送っていた中,脳梗塞を発症.半年間当院でリハビリ入院を行いADLは独歩自立レベルで自宅退院となったが,失語症状は中等度残存している状態であった.外来言語療法と並行し,家事・育児の両立に主眼を置いた1年間の在宅生活を送ったのち,就労支援目的にて外来作業療法の介入に至った.
【介入経過】外来作業療法での初回面談時,症例は「働きたい」という希望はあるが「言葉が出づらいから仕事は難しいかもしれない」と葛藤されている様子であった.症例の不安な気持ちを傾聴しながら,就労に対するニーズの明確化(希望の業種や勤務形態など)を丁寧に行った.その中でも,「無理だと思うけど,本当は保育に携わりたい」と素直な気持ちを聴取することが出来た.職業選択の幅を増やすためにも,専門機関での職業適性検査を受けるよう提案し,医療ソーシャルワーカーを通して職業センターへ就労能力の評価を依頼した.外来作業療法で聴取したニーズや,その他働くうえでの心配な点(身体的特性,対人関係など)も聴取・情報整理を行い,今後の就労計画の策定に向け,職業センターでの面談時に提起できるよう調整した.その後,職業適性検査の結果とご本人の希望をすり合わせ,言語を介さない保育補助業務の適性を有するとの判断に至る.実際に面接や業務体験等を行ったのち,希望していた保育園での出勤を開始することが決定.外来作業療法では事前に,就業生活において予測される課題(職場間の対人交流,勤務中の休息の取り方,余暇バランス)を抽出し,対応策を共に検討した.実際に出勤開始後も週1回のペースで外来作業療法を行い,定期的に話を聞く機会を保つことで実際に業務を行って症例が困ったことを聴取し,タイムリーに対策を検討することで極力相談が先延ばしにならないよう心掛けた.1か月の出勤を経て,正式に雇用契約を行い新規就労に至る.新規就労後より,週1回から月1回へと外来作業療法の介入頻度を徐々に減らし,最終的にはリモート対応での状況確認に切り替え,職場に定着しているか確認し適宜対応するようにした.
【結果】一般就労として,保育補助業務での新規就労を果たした.正規雇用後も6か月継続してフォローアップを行い,就労から半年経過した現在も体調に支障なく,就労継続中である.
【考察】就労支援での作業療法において,「支援をする・支援される」という関係ではなく,これからどうしていきたいのかを一緒に考える伴走者のような役割を心がけることが重要であると言われている.今回の外来作業療法では,症例のなかなか話せない希望や本音を丁寧に傾聴しながら,共に考え,ニーズを明らかにしたことで症例の能力だけでなく興味に適合した職業選択を行う手助けをすることが出来たと考える.また,高次脳機能障害者の就労支援は,就労後も長期的で切れ目のない支援が必要であると報告されており,今回の介入においても外来作業療法を通した定期的な介入を継続することで症例の話を聞く機会を保ち,寄り添う姿勢を大切に,心理面の支援に徹したことが就労定着に繋がったものではないかと考えられる.