[OA-4-4] 脳梗塞患者1例に対する作業療法と両立支援の活用
【背景】脳卒中後の復職は,重要な課題の一つである.復職支援には機能改善と心理的支援が重要であり,就労を目指した継続的なリハビリテーションと相談支援体制の構築が望ましいとされる.しかし,リハビリテーションと相談支援体制の双方から捉えた復職支援に関する報告は散見される程度である.今回,復職を目指した作業療法に加え,両立支援を活用した脳梗塞患者1例について報告する.
【対象】対象は店頭接客,物品管理業務を行う家電量販店勤務の20歳代男性.現病歴はY月X日,言葉が出ない,字が書けないことを主訴に受診し,当院MRIにて左前頭葉脳梗塞像を認め入院となり,X+2日より作業療法を開始した.なお,発表に際し本人の同意を得ている.
【初期評価】作業療法評価では意識は清明であり,明らかな運動麻痺はなく,MMTは両上肢5であった.認知機能はMMSE24点,RCPM28/36,CATのVisual Cancellation Task(VCT)の「△」では所要時間55秒,正答率94.7%,的中率100%であり,所要時間と正答率で年代平均を下回り,処理速度と注意機能の低下を認めた.また,言語機能は複雑な内容の会話中に喚語困難があり,SLTAでは口頭命令に従う7/10,語の列挙5語/分等の低下があり,健忘失語を認めた.ADLは自立していたが,携帯の打ち込みが困難な状態であった.復職を目標として練習プログラムを設定した.
【経過】入院期間中,作業療法では業務に必要なパソコン操作,電卓を用いた計算課題を中心に練習を行い,言語聴覚療法では言語訓練を行った.X+8日には,喚語困難は改善を認めたが,計算課題では約半数に間違いがあった.また,復職への不安から苛立つ様子も見られたため,本人より就労支援の希望を確認した後に復職に対する面接を行った.面接では復帰時期と復帰後の働き方に関する不安が語られた.復帰時期に関しては医師と相談する機会を作り,退院1か月後の復職を目標に週1回の外来リハビリテーションにてフォローすることとなった.また,復帰後の働き方に関しては当院の両立支援外来を利用し,事業所からの勤務情報提供書及び主治医意見書で事業所との連携を図った上で職場復帰することを提案した.X+15日に自宅退院しX+21日から外来作業療法と言語聴覚療法を実施した.X+36日,MMSE29点,RCPM33/36,CATのVCT「△」は所要時間44秒,正答率100%,的中率100%,SLTAは口頭命令10/10,語の列挙14語/分と失語症は改善したが,計算課題の間違いは残存していた.そのため,医師と評価内容を共有し,処理速度の低下が残存していること,計算に関してはミスが生じうることを主治医意見書に反映させた.そして,事業場とは主治医意見書をもとに就労能力の共有を行い,本人にはダブルチェックの必要性について説明し,X+39日より復職した.復職時には本人から復職に対する不安の訴えは消失していた.
【最終評価】X+84日,心身機能は,MME26点,CATのVCT「△」は所要時間43秒,正答率100%,的中率100%であった.COPMで仕事全体の満足度は8/10であり,計算を伴う業務に関してはダブルチェックを継続しており,大きなミスなく業務を遂行出来ていた.また,就労に関する不安の訴えはなかった.
【考察】今回,心身機能と職務内容に対する評価及び練習に加え,相談支援体制の構築として両立支援を活用したことで復職に至った.以上のことから,脳卒中後に注意障害を呈する本症例に対して作業療法と両立支援を併用することは,復職支援を促進させる可能性があることが示唆された.
【対象】対象は店頭接客,物品管理業務を行う家電量販店勤務の20歳代男性.現病歴はY月X日,言葉が出ない,字が書けないことを主訴に受診し,当院MRIにて左前頭葉脳梗塞像を認め入院となり,X+2日より作業療法を開始した.なお,発表に際し本人の同意を得ている.
【初期評価】作業療法評価では意識は清明であり,明らかな運動麻痺はなく,MMTは両上肢5であった.認知機能はMMSE24点,RCPM28/36,CATのVisual Cancellation Task(VCT)の「△」では所要時間55秒,正答率94.7%,的中率100%であり,所要時間と正答率で年代平均を下回り,処理速度と注意機能の低下を認めた.また,言語機能は複雑な内容の会話中に喚語困難があり,SLTAでは口頭命令に従う7/10,語の列挙5語/分等の低下があり,健忘失語を認めた.ADLは自立していたが,携帯の打ち込みが困難な状態であった.復職を目標として練習プログラムを設定した.
【経過】入院期間中,作業療法では業務に必要なパソコン操作,電卓を用いた計算課題を中心に練習を行い,言語聴覚療法では言語訓練を行った.X+8日には,喚語困難は改善を認めたが,計算課題では約半数に間違いがあった.また,復職への不安から苛立つ様子も見られたため,本人より就労支援の希望を確認した後に復職に対する面接を行った.面接では復帰時期と復帰後の働き方に関する不安が語られた.復帰時期に関しては医師と相談する機会を作り,退院1か月後の復職を目標に週1回の外来リハビリテーションにてフォローすることとなった.また,復帰後の働き方に関しては当院の両立支援外来を利用し,事業所からの勤務情報提供書及び主治医意見書で事業所との連携を図った上で職場復帰することを提案した.X+15日に自宅退院しX+21日から外来作業療法と言語聴覚療法を実施した.X+36日,MMSE29点,RCPM33/36,CATのVCT「△」は所要時間44秒,正答率100%,的中率100%,SLTAは口頭命令10/10,語の列挙14語/分と失語症は改善したが,計算課題の間違いは残存していた.そのため,医師と評価内容を共有し,処理速度の低下が残存していること,計算に関してはミスが生じうることを主治医意見書に反映させた.そして,事業場とは主治医意見書をもとに就労能力の共有を行い,本人にはダブルチェックの必要性について説明し,X+39日より復職した.復職時には本人から復職に対する不安の訴えは消失していた.
【最終評価】X+84日,心身機能は,MME26点,CATのVCT「△」は所要時間43秒,正答率100%,的中率100%であった.COPMで仕事全体の満足度は8/10であり,計算を伴う業務に関してはダブルチェックを継続しており,大きなミスなく業務を遂行出来ていた.また,就労に関する不安の訴えはなかった.
【考察】今回,心身機能と職務内容に対する評価及び練習に加え,相談支援体制の構築として両立支援を活用したことで復職に至った.以上のことから,脳卒中後に注意障害を呈する本症例に対して作業療法と両立支援を併用することは,復職支援を促進させる可能性があることが示唆された.