[OA-6-2] 視床出血発症より12年経過し,姿勢制御と動作パターンが固定した症例に対する作業療法支援
【序論】右視床出血により運動麻痺と感覚障害を呈し長期間の経過の中で,非麻痺側優位で連合反応を誘発する不良パターンがみられる症例に対して,不良パターンを修正し効率的な動作の習得によってADL動作の介助量軽減を図れたので報告する. 本演題で発表する内容は,本人及び家族への説明,同意を得ている.また,当院の倫理審査の承認を得た.
【症例】80代,男性,身長160㎝,体重47.7kg,BMI18.6kg/m2 ,診断名:右視床出血,現病歴:X -12年に右視床出血を発症,ADL中等度介助で在宅復帰後は在宅サービスを利用しながら妻と2人暮らしであった.徐々にADL介助量が増加し,老老介護のため介助が困難となり施設入所に向けて当院の地域包括ケア病棟へ入院となった.
【作業療法評価】症例のNeedsは「起きて座りたい」とのことであった.BRS左上肢Ⅱ,左手指Ⅱ,左下肢Ⅱ,麻痺側上肢は廃用手.感覚表在覚軽度~中等度鈍麻.MMSE 15点で認知機能低下の影響はあるが,日常生活レベルの会話は可能.FIM 41点,基本動作やADL動作は重介助レベル.
【作業療法介入・経過】右視床出血発症より12年経過しており,麻痺側上下肢の機能改善は乏しい状況であり施設退院に向けて車いす座位姿勢の改善により,セルフケアや活動範囲の拡大を図ることとし,情報を多職種と情報共有しながら介入を進めた.座位時の動作観察を行うと,長期間に及ぶ習慣化した動作により,非麻痺側優位の運動パターンが出現しており,麻痺側の連合反応が出現し介助量の増加を引き起こしていた. 姿勢制御と動作パターンの問題に対して,入院当初より機能訓練として座位訓練による重心移動,非麻痺側上下肢の空間操作練習,機能訓練を行った.病棟ADLでの過剰な非麻痺側の使用を抑制できるよう介護スタッフに対して動作手順を説明し,症例の行動パターンを強化できるよう介入を進めた.
【結果】BRS上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅱ. FIM42点,車いす座位姿勢の改善や端坐位にて上肢支持があれば座位保持が可能となった.また,立ち上がり時も非麻痺側上肢の過剰使用を抑制することができ,連合反応の減少がみられ,移乗動作時の介助量軽減に繋がった.また,病棟スタッフとも情報共有を行い,1人介助で車いすへの移乗を行うことが可能となり,入院より74日目に施設退院となった.
【考察】Mathiowetz & Bass-Haugenによると「作業療法士はクライアントが最善の運動の解決法を見つけ,それがより安定するように練習することを支援するであろう」と述べている.本症例は限定的な場面での姿勢制御と不良パターンの修正はみられたが,全般的な基本動作やADL動作改善には至らなかった.しかし,症例と介助者にとって症例の状態に合わせた動作を模索し,支援を行うことで動作が安定し,必要な動作の介助量の軽減に繋がったと考えられる.
【結語】発症より長期経過し,大幅な機能の改善が見込めない方に対して,身体機能に合わせた動作パターンを学習することで,介助量の軽減が図れることを実感した.作業療法士は,症例や介助者にとって負担のかからない方法を多職種と情報共有することで「起きて座りたい」と言うニーズを叶えられたことも他職種協働の重要性を学ぶことが出来た.
【症例】80代,男性,身長160㎝,体重47.7kg,BMI18.6kg/m2 ,診断名:右視床出血,現病歴:X -12年に右視床出血を発症,ADL中等度介助で在宅復帰後は在宅サービスを利用しながら妻と2人暮らしであった.徐々にADL介助量が増加し,老老介護のため介助が困難となり施設入所に向けて当院の地域包括ケア病棟へ入院となった.
【作業療法評価】症例のNeedsは「起きて座りたい」とのことであった.BRS左上肢Ⅱ,左手指Ⅱ,左下肢Ⅱ,麻痺側上肢は廃用手.感覚表在覚軽度~中等度鈍麻.MMSE 15点で認知機能低下の影響はあるが,日常生活レベルの会話は可能.FIM 41点,基本動作やADL動作は重介助レベル.
【作業療法介入・経過】右視床出血発症より12年経過しており,麻痺側上下肢の機能改善は乏しい状況であり施設退院に向けて車いす座位姿勢の改善により,セルフケアや活動範囲の拡大を図ることとし,情報を多職種と情報共有しながら介入を進めた.座位時の動作観察を行うと,長期間に及ぶ習慣化した動作により,非麻痺側優位の運動パターンが出現しており,麻痺側の連合反応が出現し介助量の増加を引き起こしていた. 姿勢制御と動作パターンの問題に対して,入院当初より機能訓練として座位訓練による重心移動,非麻痺側上下肢の空間操作練習,機能訓練を行った.病棟ADLでの過剰な非麻痺側の使用を抑制できるよう介護スタッフに対して動作手順を説明し,症例の行動パターンを強化できるよう介入を進めた.
【結果】BRS上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅱ. FIM42点,車いす座位姿勢の改善や端坐位にて上肢支持があれば座位保持が可能となった.また,立ち上がり時も非麻痺側上肢の過剰使用を抑制することができ,連合反応の減少がみられ,移乗動作時の介助量軽減に繋がった.また,病棟スタッフとも情報共有を行い,1人介助で車いすへの移乗を行うことが可能となり,入院より74日目に施設退院となった.
【考察】Mathiowetz & Bass-Haugenによると「作業療法士はクライアントが最善の運動の解決法を見つけ,それがより安定するように練習することを支援するであろう」と述べている.本症例は限定的な場面での姿勢制御と不良パターンの修正はみられたが,全般的な基本動作やADL動作改善には至らなかった.しかし,症例と介助者にとって症例の状態に合わせた動作を模索し,支援を行うことで動作が安定し,必要な動作の介助量の軽減に繋がったと考えられる.
【結語】発症より長期経過し,大幅な機能の改善が見込めない方に対して,身体機能に合わせた動作パターンを学習することで,介助量の軽減が図れることを実感した.作業療法士は,症例や介助者にとって負担のかからない方法を多職種と情報共有することで「起きて座りたい」と言うニーズを叶えられたことも他職種協働の重要性を学ぶことが出来た.