[OA-7-2] 急性期脳卒中患者のトイレ動作獲得に影響する因子の検討
【はじめに】脳卒中患者でリハビリテーション(以下リハ)開始時の認知機能が良好であるほど日常生活動作能力の改善を促進し運動機能回復良好であると今田らの報告がある.また,津坂らは脳卒中患者に要求される自宅復帰条件に最低でも監視レベルのトイレ動作能力が必要と述べている.これらのことからも認知機能に着目したトイレ動作獲得は自宅復帰にとって必須課題と言える.
【目的】本研究の目的は急性期脳卒中患者のトイレ動作獲得に影響を及ぼす因子を検討し,トイレ動作獲得に関連する患者要因の知見を得ること,それを明らかにすることである.
【方法】デザインは単施設後方視的観察研究.対象は2019年1月から2022年12月までに当院入院し,リハ介入した脳卒中患者.除外基準は,入院前mRS 4・5該当者,死亡患者,データ欠損例.評価項目は,性別,年齢,病型,初期及び転帰時Functional Independence Measure(以下FIM)を診療録から収集した.統計解析は決定木分析を用い,目的変数を転帰時トイレ動作可能群(FIM5以上)と要介助群(FIM4以下).説明変数を性別,年齢,病型,初期FIM理解,初期FIM表出,初期FIM社会的交流,初期FIM問題解決,初期FIM記憶,初期FIMトイレ移乗,初期FIMトイレ動作,初期FIM排尿管理,初期FIM排便管理とした.なお発表に際しては当院倫理委員会の承認を得て行った.(承認番号:R05R032)
【結果】対象者は1365例.トイレ動作可能群570例,要介助群795例.平均年齢72±13歳.決定木分析の結果,急性期脳卒中患者のトイレ動作可能群に対し第一層は初期FIMトイレ動作5以上,第二層は年齢80歳未満,第三層は初期FIM排便管理3以上(トイレ動作可能確立22%)が選択された.またトイレ動作要介助群に対し第一層は初期FIMトイレ動作4以下,第二層は初期FIM問題解決4以下,第三層は年齢66歳以上(トイレ動作要介助確立38%)が選択された.
【考察】本研究から,トイレ動作可能群及び要介助群においても初期トイレ動作自立度による影響が最も強いことが分かった.さらに,年齢が80歳より若く初期排便管理が中等度介助より軽度であることがトイレ動作可能因子であり,初期より日常の問題解決が最小介助より重度で年齢66歳以上であることがトイレ動作要介助因子と予測された.本研究で明らかになったトイレ動作可能因子を持った患者に対しては排便管理の困りごとを聴取し食事や排便習慣へのアドバイス,適正排便姿勢獲得指導やリラクセーション交え自律神経系への介入を前もって対応することで,排便管理能力を向上させ円滑なトイレ動作獲得に寄与する可能性が示唆される.また,トイレ動作要介助因子を持った患者に対しても,正しいトイレ動作を誘導し徐々に手がかりを減らしていくなどして成功体験を積み重ねていくことや,一連の動作手順を番号化して声に出して確認するなど問題解決能力へ最大限アプローチし,トイレ動作介助量軽減から獲得を目指すことが大切である.さらに,多職種で情報共有しながら看護師への適切な介助量伝達し定時誘導へ移行することなど多職種連携で患者を支えていくことがトイレ動作獲得の一助となるであろう.本研究の限界として,単施設のみの研究であり偏りが生じている可能性がある点,認知FIMはMMSEと同様に脳卒中患者の認知機能の評価に適した評価法であるとZweckerの報告があるものの,MMSEやHDS-R,失語症や半側空間無視の有無などの項目を考慮していない点が挙げられる. 入院時の時点における患者個人の状態から,前述のようなトイレ動作獲得の関連因子を抽出することができれば入院後早期から退院先を見据えた適切なアプローチにつながる可能性があると思われる.
【目的】本研究の目的は急性期脳卒中患者のトイレ動作獲得に影響を及ぼす因子を検討し,トイレ動作獲得に関連する患者要因の知見を得ること,それを明らかにすることである.
【方法】デザインは単施設後方視的観察研究.対象は2019年1月から2022年12月までに当院入院し,リハ介入した脳卒中患者.除外基準は,入院前mRS 4・5該当者,死亡患者,データ欠損例.評価項目は,性別,年齢,病型,初期及び転帰時Functional Independence Measure(以下FIM)を診療録から収集した.統計解析は決定木分析を用い,目的変数を転帰時トイレ動作可能群(FIM5以上)と要介助群(FIM4以下).説明変数を性別,年齢,病型,初期FIM理解,初期FIM表出,初期FIM社会的交流,初期FIM問題解決,初期FIM記憶,初期FIMトイレ移乗,初期FIMトイレ動作,初期FIM排尿管理,初期FIM排便管理とした.なお発表に際しては当院倫理委員会の承認を得て行った.(承認番号:R05R032)
【結果】対象者は1365例.トイレ動作可能群570例,要介助群795例.平均年齢72±13歳.決定木分析の結果,急性期脳卒中患者のトイレ動作可能群に対し第一層は初期FIMトイレ動作5以上,第二層は年齢80歳未満,第三層は初期FIM排便管理3以上(トイレ動作可能確立22%)が選択された.またトイレ動作要介助群に対し第一層は初期FIMトイレ動作4以下,第二層は初期FIM問題解決4以下,第三層は年齢66歳以上(トイレ動作要介助確立38%)が選択された.
【考察】本研究から,トイレ動作可能群及び要介助群においても初期トイレ動作自立度による影響が最も強いことが分かった.さらに,年齢が80歳より若く初期排便管理が中等度介助より軽度であることがトイレ動作可能因子であり,初期より日常の問題解決が最小介助より重度で年齢66歳以上であることがトイレ動作要介助因子と予測された.本研究で明らかになったトイレ動作可能因子を持った患者に対しては排便管理の困りごとを聴取し食事や排便習慣へのアドバイス,適正排便姿勢獲得指導やリラクセーション交え自律神経系への介入を前もって対応することで,排便管理能力を向上させ円滑なトイレ動作獲得に寄与する可能性が示唆される.また,トイレ動作要介助因子を持った患者に対しても,正しいトイレ動作を誘導し徐々に手がかりを減らしていくなどして成功体験を積み重ねていくことや,一連の動作手順を番号化して声に出して確認するなど問題解決能力へ最大限アプローチし,トイレ動作介助量軽減から獲得を目指すことが大切である.さらに,多職種で情報共有しながら看護師への適切な介助量伝達し定時誘導へ移行することなど多職種連携で患者を支えていくことがトイレ動作獲得の一助となるであろう.本研究の限界として,単施設のみの研究であり偏りが生じている可能性がある点,認知FIMはMMSEと同様に脳卒中患者の認知機能の評価に適した評価法であるとZweckerの報告があるものの,MMSEやHDS-R,失語症や半側空間無視の有無などの項目を考慮していない点が挙げられる. 入院時の時点における患者個人の状態から,前述のようなトイレ動作獲得の関連因子を抽出することができれば入院後早期から退院先を見据えた適切なアプローチにつながる可能性があると思われる.