[OA-7-5] 失語・失行を呈した事例に対し整容・トイレ動作の自立を目指した実践
~ A-ONE を用いた評価と介入~
【はじめに】ADL観察を通してADLの自立を妨げる神経行動学的障害の影響を評価できる方法にThe ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation日本語版(以下,A-ONE)がある.今回,失語症及び失行症を呈した事例に対し,A-ONEを用いたOT評価と実践及び多職種による支援を実施した結果,事例のニーズであった整容・トイレ動作が可能となったため以下に報告する.尚,報告に際し事例と家族に同意を得ている.
【事例紹介】A氏,40代男性脳梗塞(中大脳動脈領域)を発症し,24病日に回復期病棟に入棟した.病前は両親と同居し無職のため社会的交流に乏しいが,家族関係は良好であった.
【OT評価】重度運動麻痺,失語症,失行症を認めた.面接から整容・トイレ動作の自立が希望として抽出され,A-ONEにて詳細に評価を実施した.その結果,更衣,整容と衛生,移乗と移動項目にて身体的・言語的介助を要した.整容動作は「歯ブラシ・髭剃り・櫛の間違え」(観念性失行),「歯磨き・髭剃りの拙劣さ」(運動性失行),トイレ動作は「トイレ前でブレーキをかけずに動作を行う,下衣操作せずに便座に座る」(組織化/順序立ての障害)を認めた.介入前の粗点は23,logits-4.32,標準誤差0.75であった.またトイレ動作に関してはできない事へのストレスや落胆する様子が伺われ,尿意への気づきはあるが誘導に消極的で失禁する場面が多く見られた.
【介入方針】画像所見やA-ONEの結果から,前頭葉機能障害や失行が整容・トイレ動作の自立を阻害していると考えた.整容動作は,歯ブラシ・櫛・髭剃り機の使用を場面事に分けて実施し操作の修正を図る事とした.トイレ動作は移乗・下衣操作・トイレまでの車椅子自走と各動作を細分化し,エラーが減少した段階で系列動作に戻し直接練習を行うこととした.また,これらの動作は多職種間で環境設定や支援方法を統一した.
【経過】整容動作:鏡を用いてOTRの操作を模倣させると道具操作及び拙劣さの改善を認めた.そのため昼食後の習慣として支援を継続し,Nsにも同様の支援方法を依頼した.整髪・髭剃りにおいても鏡を用いた模倣が有用であり,同様の支援を実施した.
トイレ動作:OTRが動作の見本を提示し模倣を促すと,車椅子自走や手すりの使い方のエラーは修正されたが,ズボンを下ろす手順に困惑する様子が見られた.OT訓練後のトイレ誘導を習慣とし,下衣操作練習を反復的に実施した事でエラーが減少した.この段階で系列動作に戻し,エラーレス学習を継続的に実施した.また,OT訓練場面で動作が定着した段階で,Nsには系列動作時にエラーが起こる事,その際はポインティングや口頭支援をするように依頼した.これらの支援により病棟でのトイレの訴えや移動範囲の拡大に合わせ自発的にトイレに行くようになり,失禁もみられなくなった.
【結果】130病日に車椅子自走にて整容・トイレ動作が自立となり,病棟生活でも安堵する様子が多くみられるようになった.A-ONEの粗点は50,logits1.94,標準誤差0.47であり,介入前後のlogit値の差が介入前後の標準誤差の和を上回りADL能力の改善を確認した.
【考察】A-ONEを活用しADLの各動作を阻害している原因を明らかにすることで機能障害の特性を支援することが可能になる(東ら,2023).また,直接訓練による失行患者のADL改善の有効性が述べられている(Goldenbergら,2001).今回,A-ONEを用いて作業遂行エラーを詳細にし,OT実践及び多職種連携にて支援することで再現性の高いエラーレス学習,実場面での訓練機会が増え事例のニーズであった動作獲得に至ったと考える.
【事例紹介】A氏,40代男性脳梗塞(中大脳動脈領域)を発症し,24病日に回復期病棟に入棟した.病前は両親と同居し無職のため社会的交流に乏しいが,家族関係は良好であった.
【OT評価】重度運動麻痺,失語症,失行症を認めた.面接から整容・トイレ動作の自立が希望として抽出され,A-ONEにて詳細に評価を実施した.その結果,更衣,整容と衛生,移乗と移動項目にて身体的・言語的介助を要した.整容動作は「歯ブラシ・髭剃り・櫛の間違え」(観念性失行),「歯磨き・髭剃りの拙劣さ」(運動性失行),トイレ動作は「トイレ前でブレーキをかけずに動作を行う,下衣操作せずに便座に座る」(組織化/順序立ての障害)を認めた.介入前の粗点は23,logits-4.32,標準誤差0.75であった.またトイレ動作に関してはできない事へのストレスや落胆する様子が伺われ,尿意への気づきはあるが誘導に消極的で失禁する場面が多く見られた.
【介入方針】画像所見やA-ONEの結果から,前頭葉機能障害や失行が整容・トイレ動作の自立を阻害していると考えた.整容動作は,歯ブラシ・櫛・髭剃り機の使用を場面事に分けて実施し操作の修正を図る事とした.トイレ動作は移乗・下衣操作・トイレまでの車椅子自走と各動作を細分化し,エラーが減少した段階で系列動作に戻し直接練習を行うこととした.また,これらの動作は多職種間で環境設定や支援方法を統一した.
【経過】整容動作:鏡を用いてOTRの操作を模倣させると道具操作及び拙劣さの改善を認めた.そのため昼食後の習慣として支援を継続し,Nsにも同様の支援方法を依頼した.整髪・髭剃りにおいても鏡を用いた模倣が有用であり,同様の支援を実施した.
トイレ動作:OTRが動作の見本を提示し模倣を促すと,車椅子自走や手すりの使い方のエラーは修正されたが,ズボンを下ろす手順に困惑する様子が見られた.OT訓練後のトイレ誘導を習慣とし,下衣操作練習を反復的に実施した事でエラーが減少した.この段階で系列動作に戻し,エラーレス学習を継続的に実施した.また,OT訓練場面で動作が定着した段階で,Nsには系列動作時にエラーが起こる事,その際はポインティングや口頭支援をするように依頼した.これらの支援により病棟でのトイレの訴えや移動範囲の拡大に合わせ自発的にトイレに行くようになり,失禁もみられなくなった.
【結果】130病日に車椅子自走にて整容・トイレ動作が自立となり,病棟生活でも安堵する様子が多くみられるようになった.A-ONEの粗点は50,logits1.94,標準誤差0.47であり,介入前後のlogit値の差が介入前後の標準誤差の和を上回りADL能力の改善を確認した.
【考察】A-ONEを活用しADLの各動作を阻害している原因を明らかにすることで機能障害の特性を支援することが可能になる(東ら,2023).また,直接訓練による失行患者のADL改善の有効性が述べられている(Goldenbergら,2001).今回,A-ONEを用いて作業遂行エラーを詳細にし,OT実践及び多職種連携にて支援することで再現性の高いエラーレス学習,実場面での訓練機会が増え事例のニーズであった動作獲得に至ったと考える.