[OA-9-1] 手根部固定式カックアップスプリントと自助具の併用により病棟ADLが改善した頚髄損傷の1例
【はじめに】従来のカックアップスプリントや市販品の手関節固定装具は,遠位部がMP関節レベルまでの長さで設計されている.食事動作獲得目的として装具の上にユニバーサルカフ(以下 カフ)を装着する場合,過去に経験した症例では使用中にカフがずれるといった問題が見られていた.そこで,通常のカックアップスプリントよりも遠位部が短い,手根部固定式のカックアップスプリントを作製し,自助具の併用により動作を改善することができた急性期頚髄損傷の1例を報告する.なお,学会発表に際し患者に発表目的や倫理的配慮について書面で説明し,同意を得た.
【方法】20代男性,交通事故により頚髄損傷を受傷.受傷後15日目に当院に転院された.当院転院時,ISNCSCIにおいて,運動スコア(右/左)はC5: 4/3, C6: 1/1, C7: 1/1, C8: 0/0, T1: 0/0, AIS:C, NLI: C3であった.スプリントは受傷後18日目に作製し,筋力は上記と同等であった.
スプリント材はアクアプラスト2.4mmを使用し,近位は前腕2/3,遠位は母指中手骨頭から手掌皮線の平行線に設定し,手関節軽度背屈位,母指橈側外転位にて,右上肢に成型した.作製したスプリントを装用した状態で,市販品のカフとユニバーサルスプーンを中手部に取り付けることで食事動作を設定した.また,タッチペンおよび歯ブラシを中手部でスプリント材により固定した自助具を作製し,カックアップスプリントとの併用によりスマートフォン操作および歯磨き動作を設定した.担当療法士が病棟で各自助具を使用した動作訓練を行い,動作の習得を図った.動作定着後,病棟看護師に自助具の着脱方法を教示し,患者の希望や疲労に応じて介助を依頼した.
【結果】食事動作は上記装具により動作時にカフがずれることなく使用することができた.また,動作中に手関節の掌背屈が起きることはなく,手関節の固定性は十分であると判断した.導入開始時から食事動作は可能であったが,より円滑な動作を獲得するためにスプーンの曲がり角度や食器の位置調整を数回実施し,動作定着した.また,スマートフォン操作・歯磨き動作は作製後1回の訓練で動作定着し,当日から使用可能になった.受傷後80日目に他院転院となったが,右手関節背屈筋のMMTは2までの改善にとどまり,当院入院中はスプリントを除去することはできなかった.受傷後119日目に電話にてスプリントの使用感について聴取したところ,「手首の向きに注意してつけてもらう必要があったが,ずれることはなかった.」との回答が聞かれた.また,当院病棟看護師8名に装着に関する意見を聴取したところ,特に支障はなかった旨の回答が6名から,「手関節が尺屈しないよう注意して装着した」との回答が2名から得られた.
【考察】今回のスプリント使用により,直接手掌部にカフを装着でき,安定性が確保された状態で自助具を使用することができた.また,カフを装用しやすくする目的で本スプリントを導入したが,道具がカフに入らない場合,中手部でスプリント材を使用して自助具を作製できるという利点も見られた.作製したスプリントでは掌背屈することなく円滑に動作ができていたものの,聴取した内容から,装着の際に尺屈位となりやすいと考えられた.スプリント遠位部が短いことで,手尺側部の支持面が小さくなったためであると考えられ,今後より快適な装着ができるように形状の改善を検討する.
【方法】20代男性,交通事故により頚髄損傷を受傷.受傷後15日目に当院に転院された.当院転院時,ISNCSCIにおいて,運動スコア(右/左)はC5: 4/3, C6: 1/1, C7: 1/1, C8: 0/0, T1: 0/0, AIS:C, NLI: C3であった.スプリントは受傷後18日目に作製し,筋力は上記と同等であった.
スプリント材はアクアプラスト2.4mmを使用し,近位は前腕2/3,遠位は母指中手骨頭から手掌皮線の平行線に設定し,手関節軽度背屈位,母指橈側外転位にて,右上肢に成型した.作製したスプリントを装用した状態で,市販品のカフとユニバーサルスプーンを中手部に取り付けることで食事動作を設定した.また,タッチペンおよび歯ブラシを中手部でスプリント材により固定した自助具を作製し,カックアップスプリントとの併用によりスマートフォン操作および歯磨き動作を設定した.担当療法士が病棟で各自助具を使用した動作訓練を行い,動作の習得を図った.動作定着後,病棟看護師に自助具の着脱方法を教示し,患者の希望や疲労に応じて介助を依頼した.
【結果】食事動作は上記装具により動作時にカフがずれることなく使用することができた.また,動作中に手関節の掌背屈が起きることはなく,手関節の固定性は十分であると判断した.導入開始時から食事動作は可能であったが,より円滑な動作を獲得するためにスプーンの曲がり角度や食器の位置調整を数回実施し,動作定着した.また,スマートフォン操作・歯磨き動作は作製後1回の訓練で動作定着し,当日から使用可能になった.受傷後80日目に他院転院となったが,右手関節背屈筋のMMTは2までの改善にとどまり,当院入院中はスプリントを除去することはできなかった.受傷後119日目に電話にてスプリントの使用感について聴取したところ,「手首の向きに注意してつけてもらう必要があったが,ずれることはなかった.」との回答が聞かれた.また,当院病棟看護師8名に装着に関する意見を聴取したところ,特に支障はなかった旨の回答が6名から,「手関節が尺屈しないよう注意して装着した」との回答が2名から得られた.
【考察】今回のスプリント使用により,直接手掌部にカフを装着でき,安定性が確保された状態で自助具を使用することができた.また,カフを装用しやすくする目的で本スプリントを導入したが,道具がカフに入らない場合,中手部でスプリント材を使用して自助具を作製できるという利点も見られた.作製したスプリントでは掌背屈することなく円滑に動作ができていたものの,聴取した内容から,装着の際に尺屈位となりやすいと考えられた.スプリント遠位部が短いことで,手尺側部の支持面が小さくなったためであると考えられ,今後より快適な装着ができるように形状の改善を検討する.