[OB-1-2] 行動医学的介入によって生活習慣およびADLが改善したAMI後のフレイル症例
【序論】
行動医学的介入は,支持的カウンセリング,心理教育,問題整理,目標設定,セルフモニタリング(S-M),オペラント強化で構成される.行動医学的介入は,糖尿病患者における生活習慣の改善に有用であるが,フレイル患者の危険因子とされる生活習慣にどのような影響を及ぼすかは不明である.今回,急性心筋梗塞(AMI)後のフレイル患者に対して,行動医学的介入を行った結果,食事および運動習慣の獲得によって,フレイルが改善しADLの向上に至ったため報告する.尚,本報告に際し,本人から同意を得た.
【症例】
60代女性で病前ADLは自立していた.AMIの診断で当院入院となり,43病日目より作業療法(OT)開始となった.心不全等を繰り返して入院が長期化し,臥床傾向及び食事摂取量の低下が進行した.156病日目に行ったOT評価では,認知機能は良好で,筋力はMMTにて両上肢2,握力は右7.0kg/左6.5kgであった.Functional Independence Measure(FIM)は食事以外に介助を要し80点であった.歩行速度は0.7m/sであった.食事摂取量は補助栄養食品を含め約5割であり,「起きる理由がない,味がないから食べたくない」と発言が聞かれた.Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)は79と重度栄養障害を認め,国際標準化身体活動質問表(IPAQ SV)より算出した総身体活動量は0METs・分/週,座位時間150分であった.筋力低下・歩行速度低下・身体活動低下を認め,日本版Cardiovascular Health Studyの基準に則りフレイルと判断した.
【方法】
支持的カウンセリングは,本人の気持ちを傾聴し関係性を構築した.心理教育と問題整理は,食事と運動習慣の必要性について説明し問題点を共有した.目標設定とS-Mは,作業療法士が1日の食事や補助栄養食品の摂取量と自主訓練内容を記載するS-Mシートを作成し,本人に記載してもらった.OT時に作業療法士と本人が記載内容を確認し,当日の食事摂取量や自主訓練の目標を達成可能な範囲で設定した.オペラント強化は目標達成に対し賞賛を行った.
【介入経過】
156病日目に本介入を開始した.162病日目まではS-Mシートの記載漏れが見られたが,以降毎日記載され1日1回自主訓練を実施するようになった.192病日目には食事摂取量が約9割となった.OT以外で病棟内を散歩したり,家族におかずを依頼したりするようになった.206病日目の握力は右15kg,左11kg ,GNRIは77,歩行速度は1.06m/sであった.
【結果】
本介入は体調不良日(17日間)を除く134日間毎日行われた.筋力はMMTにて両上肢3,握力は右16kg/左12kgであり,FIMは109点であった.歩行速度は1.01m/sであった.食事摂取量はほぼ全量となり,「早く治したいから食べる」と発言が聞かれた.GNRIは93であった.IPAQ SVより算出した総身体活動量は1170METs・分/週,座位時間240分であった.
【考察】
目標設定では,確実に達成できる目標から段階的に難易度を上げることで,成功体験を確実に積めるように配慮する事が重要とされている.本人との達成可能な目標設定は,意欲が乏しかった本症例においても継続的な介入に繋がった可能性が示唆される.また,S-Mでは,目標や達成度の振り返りによって目標の意識付けや達成感を得られるとされており,食事と運動という2つの行動を強化した可能性がある.本症例では,行動医学的介入がフレイルにおける生活習慣およびADLの改善に有用である可能性が示唆された.
行動医学的介入は,支持的カウンセリング,心理教育,問題整理,目標設定,セルフモニタリング(S-M),オペラント強化で構成される.行動医学的介入は,糖尿病患者における生活習慣の改善に有用であるが,フレイル患者の危険因子とされる生活習慣にどのような影響を及ぼすかは不明である.今回,急性心筋梗塞(AMI)後のフレイル患者に対して,行動医学的介入を行った結果,食事および運動習慣の獲得によって,フレイルが改善しADLの向上に至ったため報告する.尚,本報告に際し,本人から同意を得た.
【症例】
60代女性で病前ADLは自立していた.AMIの診断で当院入院となり,43病日目より作業療法(OT)開始となった.心不全等を繰り返して入院が長期化し,臥床傾向及び食事摂取量の低下が進行した.156病日目に行ったOT評価では,認知機能は良好で,筋力はMMTにて両上肢2,握力は右7.0kg/左6.5kgであった.Functional Independence Measure(FIM)は食事以外に介助を要し80点であった.歩行速度は0.7m/sであった.食事摂取量は補助栄養食品を含め約5割であり,「起きる理由がない,味がないから食べたくない」と発言が聞かれた.Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)は79と重度栄養障害を認め,国際標準化身体活動質問表(IPAQ SV)より算出した総身体活動量は0METs・分/週,座位時間150分であった.筋力低下・歩行速度低下・身体活動低下を認め,日本版Cardiovascular Health Studyの基準に則りフレイルと判断した.
【方法】
支持的カウンセリングは,本人の気持ちを傾聴し関係性を構築した.心理教育と問題整理は,食事と運動習慣の必要性について説明し問題点を共有した.目標設定とS-Mは,作業療法士が1日の食事や補助栄養食品の摂取量と自主訓練内容を記載するS-Mシートを作成し,本人に記載してもらった.OT時に作業療法士と本人が記載内容を確認し,当日の食事摂取量や自主訓練の目標を達成可能な範囲で設定した.オペラント強化は目標達成に対し賞賛を行った.
【介入経過】
156病日目に本介入を開始した.162病日目まではS-Mシートの記載漏れが見られたが,以降毎日記載され1日1回自主訓練を実施するようになった.192病日目には食事摂取量が約9割となった.OT以外で病棟内を散歩したり,家族におかずを依頼したりするようになった.206病日目の握力は右15kg,左11kg ,GNRIは77,歩行速度は1.06m/sであった.
【結果】
本介入は体調不良日(17日間)を除く134日間毎日行われた.筋力はMMTにて両上肢3,握力は右16kg/左12kgであり,FIMは109点であった.歩行速度は1.01m/sであった.食事摂取量はほぼ全量となり,「早く治したいから食べる」と発言が聞かれた.GNRIは93であった.IPAQ SVより算出した総身体活動量は1170METs・分/週,座位時間240分であった.
【考察】
目標設定では,確実に達成できる目標から段階的に難易度を上げることで,成功体験を確実に積めるように配慮する事が重要とされている.本人との達成可能な目標設定は,意欲が乏しかった本症例においても継続的な介入に繋がった可能性が示唆される.また,S-Mでは,目標や達成度の振り返りによって目標の意識付けや達成感を得られるとされており,食事と運動という2つの行動を強化した可能性がある.本症例では,行動医学的介入がフレイルにおける生活習慣およびADLの改善に有用である可能性が示唆された.