[OB-1-3] 心筋梗塞後に生じた心不全に対し,多職種協業による家事へのアプローチにより主婦業への復帰が得られた一例
【はじめに】我々は心不全患者に対し,家事動作練習の一環として管理栄養士と共同で減塩調理として栄養指導を行っている.今回,作業療法(OT)を通してADLの改善,また多職種連携により症例の希望であった主婦業の復帰が得られた一例を報告する.発表に際して本人に書面にて同意を得た.
【症例紹介】50歳代,女性,主婦.糖尿病,高血圧症あり.元来ADLは自立していた. X-10日より倦怠感,呼吸困難感,心窩部痛,食欲不振などの症状が出現し,X-3日頃より下腿浮腫が出現した.X日近医を受診し,心筋梗塞の疑いで当院に救急搬送された.精査より左前下行枝に亜閉塞病変を認め経皮的冠動脈形成術が施行されICU入室した.翌日一般病棟に転棟し,X+9日OT,理学療法が開始となった.
【初回評価】嘔気があり,また脱水が原因と思われる低血圧症状を認めた.血圧60/43mmHg,心拍数80bpm,経皮的酸素飽和度98%(室内気),意識清明.MMTは上下肢3.起居,端座位は自立していたが,起立は短時間のみ可能でふらつきが強く,歩行は困難な状態であった.ADL動作は全般的に介助を要した.ADL改善には積極的な訓練が必要であったが強い倦怠感などもあり離床に難渋していた.入院前の生活歴として,家族は家事に非協力的であり多忙で睡眠時間が不十分であった.また家族が味付けの濃い食事を好んでおり,自身も塩分摂取過多な状態であった.
【OT経過】開始日よりベッドサイドで体操や基本的動作訓練を開始した.急性期心不全のリスク管理として,訓練の負荷量は原則として自覚的運動強度(Borg)で13以下とした.また心泊数や呼吸数,心電計が大きく変動しないようモニタリングをしながら行った.
X+13日より出療を開始した.興味関心チェックシートを実施した際,本人より「家族の弁当くらいは作りたい」,「家に帰ってでもできる家事はしたい」との希望があった.入院後約2週間経過したがMMT3レベルの筋力低下があり,ADL改善には代償手段が必要な状態と考えられた.そのため入浴動作や掃除機はそれぞれ福祉用具を手配し,動作指導等の環境調整を行い練習した.料理は管理栄養士と共同で減塩調理実習を行い,減塩への意識を高める活動を実施した.また,クライシスプランをOTが作成し,自身の健康を守るために,健康な状態と心不全兆候がみられた場合それぞれの状態でどのような対応を行うべきか書面を用いて指導した.退院前に多職種カンファレンスを行い,OTより多職種に向け,入院前生活の実態や症例が改善したい生活行為,望む生活像を知らせた.また,主治医に退院後は家族の協力が必須であることを説明するように依頼した.最終的な結果として,福祉用具を使用しながらセルフケアは自立した.調理は座って作業を行うこと,休憩を挟むこと,必要な材料とレシピを事前に書き出すことで何度も冷蔵庫から取り出す工程を省くことでBorg14を超えることなく,心不全に配慮したADL,家事動作を習得することができた.X+37日,主治医からの病状説明後に自宅退院し,主婦業へと復帰した.自宅退院約6か月後も心不全の増悪なく経過している.
【考察とまとめ】今回,実際のADL・家事動作を行い,効率的な動作を練習することで,心不全に配慮した家事動作を獲得でき,退院後の主婦業復帰と継続に有用であったと考えられる.また多職種に対し,生活像の詳細を説明し本人の希望も含めた生活目標を共有することで,主治医への依頼や管理栄養士との共同指導など生活改善のための具体的なアプローチができる点はOTの専門性が高い領域であると考える.
【症例紹介】50歳代,女性,主婦.糖尿病,高血圧症あり.元来ADLは自立していた. X-10日より倦怠感,呼吸困難感,心窩部痛,食欲不振などの症状が出現し,X-3日頃より下腿浮腫が出現した.X日近医を受診し,心筋梗塞の疑いで当院に救急搬送された.精査より左前下行枝に亜閉塞病変を認め経皮的冠動脈形成術が施行されICU入室した.翌日一般病棟に転棟し,X+9日OT,理学療法が開始となった.
【初回評価】嘔気があり,また脱水が原因と思われる低血圧症状を認めた.血圧60/43mmHg,心拍数80bpm,経皮的酸素飽和度98%(室内気),意識清明.MMTは上下肢3.起居,端座位は自立していたが,起立は短時間のみ可能でふらつきが強く,歩行は困難な状態であった.ADL動作は全般的に介助を要した.ADL改善には積極的な訓練が必要であったが強い倦怠感などもあり離床に難渋していた.入院前の生活歴として,家族は家事に非協力的であり多忙で睡眠時間が不十分であった.また家族が味付けの濃い食事を好んでおり,自身も塩分摂取過多な状態であった.
【OT経過】開始日よりベッドサイドで体操や基本的動作訓練を開始した.急性期心不全のリスク管理として,訓練の負荷量は原則として自覚的運動強度(Borg)で13以下とした.また心泊数や呼吸数,心電計が大きく変動しないようモニタリングをしながら行った.
X+13日より出療を開始した.興味関心チェックシートを実施した際,本人より「家族の弁当くらいは作りたい」,「家に帰ってでもできる家事はしたい」との希望があった.入院後約2週間経過したがMMT3レベルの筋力低下があり,ADL改善には代償手段が必要な状態と考えられた.そのため入浴動作や掃除機はそれぞれ福祉用具を手配し,動作指導等の環境調整を行い練習した.料理は管理栄養士と共同で減塩調理実習を行い,減塩への意識を高める活動を実施した.また,クライシスプランをOTが作成し,自身の健康を守るために,健康な状態と心不全兆候がみられた場合それぞれの状態でどのような対応を行うべきか書面を用いて指導した.退院前に多職種カンファレンスを行い,OTより多職種に向け,入院前生活の実態や症例が改善したい生活行為,望む生活像を知らせた.また,主治医に退院後は家族の協力が必須であることを説明するように依頼した.最終的な結果として,福祉用具を使用しながらセルフケアは自立した.調理は座って作業を行うこと,休憩を挟むこと,必要な材料とレシピを事前に書き出すことで何度も冷蔵庫から取り出す工程を省くことでBorg14を超えることなく,心不全に配慮したADL,家事動作を習得することができた.X+37日,主治医からの病状説明後に自宅退院し,主婦業へと復帰した.自宅退院約6か月後も心不全の増悪なく経過している.
【考察とまとめ】今回,実際のADL・家事動作を行い,効率的な動作を練習することで,心不全に配慮した家事動作を獲得でき,退院後の主婦業復帰と継続に有用であったと考えられる.また多職種に対し,生活像の詳細を説明し本人の希望も含めた生活目標を共有することで,主治医への依頼や管理栄養士との共同指導など生活改善のための具体的なアプローチができる点はOTの専門性が高い領域であると考える.