[OC-1-2] 要介護認定をもつCOVID-19患者に対する作業療法内容の調査
■はじめに
新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19: Corona Virus Disease -2019)の蔓延により,多くの高齢者施設でクラスターが発生した.感染者は隔離による感染対策が必要であり,隔離された入院患者は,低刺激環境であることや臥床期間が増加することによって,特に要支援者・要介護者は廃用症候群の進行が問題視された.先行研究では,COVID-19患者は日常生活活動(以下,ADL: Activity of Daily Living)が中長期的に低下することが報告されている(Catalina, 2021).COVID-19患者に対するリハビリテーション治療は身体機能やQOLを改善することが示されているが(Mélina, 2022),リハビリテーションの治療内容に焦点を当てた報告は見当たらない.本研究の目的は,入院管理が必要とされた要支援・要介護認定を持つCOVID-19患者に対するリハビリテーション治療の内容を調査することである.
■対象と方法
研究デザイン:ケースコントロール研究 対象:2021年5月~2023年2月に当院のCOVID-19中等症病棟に入院し,リハビリテーション治療を実施した全患者249例. 方法:診療録の後方視的調査とし,死亡退院および要支援・要介護の認定を受けていない者は除外した.
調査項目:入院時と退院時のBI変化量が改善した者と,維持/低下した者で群分けし,基本情報, COVID-19重症度,併存疾患,治療内容(薬物療法,酸素療法,リハビリテーション治療)を調査した.
リハビリテーション治療:歩行補助具の使用を問わず病棟廊下を歩行するものを歩行訓練とした.整容・排泄・更衣に関連する動作訓練をADL訓練とした.囲碁や塗り絵など対象者に馴染みのある活動であり,訓練場所への移動も含めたものを余暇活動訓練とした.カレンダーの配置や時間/場所の確認を見当識訓練とした.ベッド上で実施する口腔運動や嚥下訓練を摂食嚥下訓練とした.訓練は1単位20分を標準として,すべて自室内や病棟廊下にて実施した.
統計解析:BIの改善/維持・低下で群分けし,両群間を比較後,BIの変化量を目的変数,リハ治療を説明変数をとして重回帰分析を実施した.その際,調整変数として年齢,要介護度を加えた.有意水準は両側5%未満,解析ソフトはSPSS vol.27を使用した.
倫理的配慮:広島大学疫学倫理審査委員会の承認を得た.(承認番号:E-0245)
■結果
基準を満たした83例を解析対象とした.BI改善群は62例,BI維持/低下群は21例であった.要支援・要介護度は要支援1が6例,要支援2が6例,要介護1が15例,要介護2が16例,要介護3が23例,要介護4が2例,要介護5が15例であった.リハビリテーション治療は全例にPT,38例にOT,22例にSTが実施された(重複あり).内容としてPTでは歩行訓練,OTではADL訓練,余暇活動訓練,見当識訓練,STでは摂食嚥下訓練が実施された.両群間の比較では BI変化量,終了時BI,COVID-19重症度,高血圧の併存,OT実施日数,OT単位数に有意差を認めた.多変量解析の結果,要介護度(B=-4.9),余暇活動訓練(B=17.2)に有意差を認めた.
■考察
本研究においてBI改善群はBI維持/低下群よりも,OTの実施日数及び単位数が有意に多いことが明らかとなった.さらにOTにて実施した余暇活動訓練がBIの変化量に有意に影響を与えることも明らかとなった.本研究は感染対策によって,提供された余暇活動が全て対象者の興味・関心に沿ったものすることは困難であった.しかしながら隔離環境においても余暇活動に取り組むことが出来た体験が対象者の不安を軽減させ,活動への意欲を引き出した可能性は考えられる.「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念に沿って,隔離環境下においても余暇活動を含めた生活行為の改善を図ることができる作業療法をプログラムを検討していくことが今後の課題である.
新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19: Corona Virus Disease -2019)の蔓延により,多くの高齢者施設でクラスターが発生した.感染者は隔離による感染対策が必要であり,隔離された入院患者は,低刺激環境であることや臥床期間が増加することによって,特に要支援者・要介護者は廃用症候群の進行が問題視された.先行研究では,COVID-19患者は日常生活活動(以下,ADL: Activity of Daily Living)が中長期的に低下することが報告されている(Catalina, 2021).COVID-19患者に対するリハビリテーション治療は身体機能やQOLを改善することが示されているが(Mélina, 2022),リハビリテーションの治療内容に焦点を当てた報告は見当たらない.本研究の目的は,入院管理が必要とされた要支援・要介護認定を持つCOVID-19患者に対するリハビリテーション治療の内容を調査することである.
■対象と方法
研究デザイン:ケースコントロール研究 対象:2021年5月~2023年2月に当院のCOVID-19中等症病棟に入院し,リハビリテーション治療を実施した全患者249例. 方法:診療録の後方視的調査とし,死亡退院および要支援・要介護の認定を受けていない者は除外した.
調査項目:入院時と退院時のBI変化量が改善した者と,維持/低下した者で群分けし,基本情報, COVID-19重症度,併存疾患,治療内容(薬物療法,酸素療法,リハビリテーション治療)を調査した.
リハビリテーション治療:歩行補助具の使用を問わず病棟廊下を歩行するものを歩行訓練とした.整容・排泄・更衣に関連する動作訓練をADL訓練とした.囲碁や塗り絵など対象者に馴染みのある活動であり,訓練場所への移動も含めたものを余暇活動訓練とした.カレンダーの配置や時間/場所の確認を見当識訓練とした.ベッド上で実施する口腔運動や嚥下訓練を摂食嚥下訓練とした.訓練は1単位20分を標準として,すべて自室内や病棟廊下にて実施した.
統計解析:BIの改善/維持・低下で群分けし,両群間を比較後,BIの変化量を目的変数,リハ治療を説明変数をとして重回帰分析を実施した.その際,調整変数として年齢,要介護度を加えた.有意水準は両側5%未満,解析ソフトはSPSS vol.27を使用した.
倫理的配慮:広島大学疫学倫理審査委員会の承認を得た.(承認番号:E-0245)
■結果
基準を満たした83例を解析対象とした.BI改善群は62例,BI維持/低下群は21例であった.要支援・要介護度は要支援1が6例,要支援2が6例,要介護1が15例,要介護2が16例,要介護3が23例,要介護4が2例,要介護5が15例であった.リハビリテーション治療は全例にPT,38例にOT,22例にSTが実施された(重複あり).内容としてPTでは歩行訓練,OTではADL訓練,余暇活動訓練,見当識訓練,STでは摂食嚥下訓練が実施された.両群間の比較では BI変化量,終了時BI,COVID-19重症度,高血圧の併存,OT実施日数,OT単位数に有意差を認めた.多変量解析の結果,要介護度(B=-4.9),余暇活動訓練(B=17.2)に有意差を認めた.
■考察
本研究においてBI改善群はBI維持/低下群よりも,OTの実施日数及び単位数が有意に多いことが明らかとなった.さらにOTにて実施した余暇活動訓練がBIの変化量に有意に影響を与えることも明らかとなった.本研究は感染対策によって,提供された余暇活動が全て対象者の興味・関心に沿ったものすることは困難であった.しかしながら隔離環境においても余暇活動に取り組むことが出来た体験が対象者の不安を軽減させ,活動への意欲を引き出した可能性は考えられる.「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念に沿って,隔離環境下においても余暇活動を含めた生活行為の改善を図ることができる作業療法をプログラムを検討していくことが今後の課題である.