[OC-1-3] 在宅酸素療法患者の新規作業療法介入におけるMTDLPを活用した一事例
【はじめに】
作業療法士が在宅酸素療法(以下HOT)患者を担当する機会は多くなっている.一方でHOT導入前後には理学療法のみ行われ,急性増悪等で入院した際に初めて作業療法を行った患者と対面することがある.また,呼吸疾患患者における生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)の実践報告,とくに間質性肺炎(以下IP)患者の報告は少ない.今回,入院前よりHOTを行い呼吸器症状の増悪にて入院し,初めて作業療法を行った症例を担当した.MTDLPを活用して,より具体的な生活目標を共有し生活指導やADL訓練を行った結果,呼吸苦の軽減や満足度の高い生活変容にて自宅退院に至ることができたため報告する.なお,報告の趣旨について本人に説明し同意を得た.
【症例紹介】
妻,息子と同居している70代男性.肺がん治療後で自己免疫性溶結性貧血やIPを併存.1年前に当院にてHOT導入,理学療法士による呼吸リハの経験がある.自宅では呼吸苦など自覚症状がないため酸素を使用せず(外出時のみ使用),部屋の掃除や妻との買い物を日課としていた.入院3ヶ月前より労作時の息切れを認め,更衣や入浴に妻の援助が必要となり活動性も低下し入院となった.
【経過および結果】
貧血の進行,呼吸困難感にて入院しステロイドパルス療法開始.4病日目に理学療法開始.24病日目に地域包括ケア病棟へ転入し作業療法開始.酸素流量1.0 L/分.FIM:110点(運動76点,認知34点).千住らのADL評価法(以下NRADL)34/100点.認知機能低下なし,生活動作時の呼吸同調は不十分であり息こらえや吸気優位であった.入院直前の生活では「どのように動いてよいかわからない.悪くなる前は買いものや部屋の掃除はできたけど,帰っても難しそうだね」と振り返りと生活の狭小化を懸念されていた.そこでMTDLPを活用し「生活動作と呼吸の同調を行い,掃除動作の習慣化と買い物を兼ねた運動習慣の獲得」を合意目標とした.プログラムとして各生活動作と呼吸の指導及び練習をSpO2・脈拍・修正Borgスケールでモニタリングしながら実施した.動作時の呼吸に対しては口すぼめ呼吸が有効であったため,呼気の意識化と休息のタイミングを主に指導し,基本動作→ADL→掃除動作と段階づけて練習メニューを追加した.掃除動作は5分毎に延長し,かがむ姿勢や反復動作を避ける,手を動かさず体幹を利用し動くなどポイントを把握し,万歩計を用いて歩数や運動活動量としての意識づけも行った.38病日目の評価ではFIM:123点(運動88点,認知35点).NRADL:59/100点と改善された.掃除動作は連続15分呼吸苦なくできるようになり,「家でも役に立つことができそうでよかった」と話された.買い物に関しては実施できなかったが,「スーパーの買い物はゆっくりやればできそうです」と実行度5/10に対して満足度は9/10となり,妻からは「手伝えるところは手伝って,買い物とかは一緒にやってみます」と前向きな意見を聞くことができ,39病日目に自宅退院となった.
【考察】
労作時の呼吸困難感は退院後の生活の狭小化をイメージさせやすいが,MTDLPの活用は画一的な方法ではなく,一人一人の状況に合わせた介入を行うことができ,本症例のような呼吸器疾患患者にはADL/IADLの改善や,それに伴う役割の獲得など満足度の高い関わりができたと考えられた.
【結語】
急性期病院のような短期間での関わりやHOT導入期におけるMTDLPの活用はエンドポイント設定の困難さを感じることがあるが,今回のようにMTDLPと定量評価を併用しながら作業療法を行い,包括的呼吸リハビリテーションの一翼を担いたい.
作業療法士が在宅酸素療法(以下HOT)患者を担当する機会は多くなっている.一方でHOT導入前後には理学療法のみ行われ,急性増悪等で入院した際に初めて作業療法を行った患者と対面することがある.また,呼吸疾患患者における生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)の実践報告,とくに間質性肺炎(以下IP)患者の報告は少ない.今回,入院前よりHOTを行い呼吸器症状の増悪にて入院し,初めて作業療法を行った症例を担当した.MTDLPを活用して,より具体的な生活目標を共有し生活指導やADL訓練を行った結果,呼吸苦の軽減や満足度の高い生活変容にて自宅退院に至ることができたため報告する.なお,報告の趣旨について本人に説明し同意を得た.
【症例紹介】
妻,息子と同居している70代男性.肺がん治療後で自己免疫性溶結性貧血やIPを併存.1年前に当院にてHOT導入,理学療法士による呼吸リハの経験がある.自宅では呼吸苦など自覚症状がないため酸素を使用せず(外出時のみ使用),部屋の掃除や妻との買い物を日課としていた.入院3ヶ月前より労作時の息切れを認め,更衣や入浴に妻の援助が必要となり活動性も低下し入院となった.
【経過および結果】
貧血の進行,呼吸困難感にて入院しステロイドパルス療法開始.4病日目に理学療法開始.24病日目に地域包括ケア病棟へ転入し作業療法開始.酸素流量1.0 L/分.FIM:110点(運動76点,認知34点).千住らのADL評価法(以下NRADL)34/100点.認知機能低下なし,生活動作時の呼吸同調は不十分であり息こらえや吸気優位であった.入院直前の生活では「どのように動いてよいかわからない.悪くなる前は買いものや部屋の掃除はできたけど,帰っても難しそうだね」と振り返りと生活の狭小化を懸念されていた.そこでMTDLPを活用し「生活動作と呼吸の同調を行い,掃除動作の習慣化と買い物を兼ねた運動習慣の獲得」を合意目標とした.プログラムとして各生活動作と呼吸の指導及び練習をSpO2・脈拍・修正Borgスケールでモニタリングしながら実施した.動作時の呼吸に対しては口すぼめ呼吸が有効であったため,呼気の意識化と休息のタイミングを主に指導し,基本動作→ADL→掃除動作と段階づけて練習メニューを追加した.掃除動作は5分毎に延長し,かがむ姿勢や反復動作を避ける,手を動かさず体幹を利用し動くなどポイントを把握し,万歩計を用いて歩数や運動活動量としての意識づけも行った.38病日目の評価ではFIM:123点(運動88点,認知35点).NRADL:59/100点と改善された.掃除動作は連続15分呼吸苦なくできるようになり,「家でも役に立つことができそうでよかった」と話された.買い物に関しては実施できなかったが,「スーパーの買い物はゆっくりやればできそうです」と実行度5/10に対して満足度は9/10となり,妻からは「手伝えるところは手伝って,買い物とかは一緒にやってみます」と前向きな意見を聞くことができ,39病日目に自宅退院となった.
【考察】
労作時の呼吸困難感は退院後の生活の狭小化をイメージさせやすいが,MTDLPの活用は画一的な方法ではなく,一人一人の状況に合わせた介入を行うことができ,本症例のような呼吸器疾患患者にはADL/IADLの改善や,それに伴う役割の獲得など満足度の高い関わりができたと考えられた.
【結語】
急性期病院のような短期間での関わりやHOT導入期におけるMTDLPの活用はエンドポイント設定の困難さを感じることがあるが,今回のようにMTDLPと定量評価を併用しながら作業療法を行い,包括的呼吸リハビリテーションの一翼を担いたい.