第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

呼吸器疾患 /神経難病

[OC-2] 一般演題:呼吸器疾患 2/神経難病 3 

2024年11月10日(日) 09:40 〜 10:40 G会場 (206)

座長:早川 貴行(神戸市立医療センター 中央市民病院 リハビリテーション技術部)

[OC-2-1] 間質性肺疾患に対する作業療法介入効果の検討

熊野 宏治1, 進藤 篤史1, 高取 良太2, 山田 崇央3 (1.パナソニック健康保険組合 松下記念病院 診療技術部 リハビリテーション療法室, 2.パナソニック健康保険組合 松下記念病院 リハビリテーション科, 3.パナソニック健康保険組合 松下記念病院 呼吸器内科)

【はじめに】 間質性肺疾患(Interstitial Lung Disease: ILD)は拘束性換気障害に加えて拡散障害が生じ,労作時の呼吸仕事量の増加や低酸素血症により日常生活活動(ADL)や日常生活関連活動(IADL)が制限される.労作時の呼吸仕事量の軽減と低酸素血症を改善し効率のよいADLやIADLが可能となるようエネルギー節約手技(Energy Conservation Techniques:ECTs)などを指導する作業療法介入が期待されている.しかしILDに対するADLやIADLの作業療法介入報告は散見される程度である. 今回,我々はILD症例に対しADL,IADLへの作業療法介入を行い,良好な結果を得られたので報告する.
【倫理的配慮】当院の医療倫理委員会を通じて報告している.
【対象】リハビリテーション科へ処方となったILD患者30名のうちポジションペーパーよりILDの終末期と判断した患者及び作業療法実施内容を説明し同意が得られなかった患者15名を除外した15名を対象とした.内訳は男性13名 女性2名,平均年齢72.6±8.4歳BMIは22.4±4.7, 肺機能検査は%VC 60.7±17.3%,FEV1/FVCは91.1±9.9% あった. mMRCの分類ではGrade1 1名,Grade2 2名,Garde3 4名,Garde4 7名であった.6分間歩行距離は148.8±97.6mであった.
【方法】作業療法介入として①呼吸方法の指導と呼吸との同調練習②作業様式の変更③仕事量の調整④環境調整⑤酸素流量の調整を実施した. ADL・IADL指標としてAssesmentof Motor and Process Skills(AMPS)を使用した.生理学的指標として呼吸困難(Borg CR-10),SpO2値,脈拍数,呼吸数を計測した.初期評価時と最終評価時の呼吸困難, SpO2値,脈拍数,呼吸数.AMPSの運動技能値,処理技能値,運動技能と処理技能の下位項目の比較検討を行った.
【結果】介入回数は15.4±9.4回であった.AMPSの運動技能値は1.1±0.6logitから2.1±0.5logitへ処理技能値は0.8±0.3logitから1.4±0.5logitへと改善した.(P<0.01)運動技能の下位項目では「適切な位置に身体を近づけること」「物に手を伸ばすこと」「身体を屈めたり,しゃがんだりすること」「手の中で物を扱うこと」「平面に沿って物を動かすこと」「ある場所から別の場所へ移動すること」「力の強さを適切に加減すること」「物を扱うときに腕や手の動きが円滑であること」「疲れず課題を行うこと」「速すぎたり,遅すぎたりしないこと」の10項目で初期評価と比較し改善がみられた(P<0.01).処理技能の下位項目では「速すぎたり,遅すぎたりしないこと」「作業遂行をためらうこと」「終了が早過ぎたり遅過ぎたりしないこと」「必要な物を作業上に集めること」「問題に気づき対処すること」の5項目に初期評価と比較し改善がみられた(P<0.01)生理学的指標では 呼吸困難が3.0±2.1から1.9±1.71,SpO2値が88.6±5.5%から93.0±3.7%,脈拍数が102±19.8bpmから96.8±16.0bpmと改善した.(P<0.01).呼吸数は33.6±7.1bpmから33.9±5.9bpmと変化はなかった.労作時の酸素流量は1.7±1.4L /minから1.9±1.6L/分と増量していたが統計学的に有意差はなかった.
【考察】呼吸と動作の同調練習や作業様式の検討,作業スピードの変更や休憩のタイミングなど仕事量の調整,効率的な環境設定を実施したことはECTsの獲得を可能とし呼吸仕事量の軽減並びに低酸素血症を改善した.その結果運動技能値,処理技能値,運動技能と処理技能の下位項目の改善をもたらした.効率よくADL.IADLの遂行が可能となったことは生理学指標である呼吸困難,SpO2値,脈拍数の改善をもたらした.呼吸数に変化がなかったのは換気量の増加を目的とした呼吸方法の指導ではなく息こらえの回避や作業遂行時のペースコントロールを目的として実施したことが影響していた.