[OC-2-4] LICトレーナーを用いた肺容量リクルートメント・トレーニング実施により換気改善を認めた筋萎縮性側索硬化症患者1例
【はじめに】
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:以下,ALS)では,呼吸筋の筋力低下により,十分な深吸気が困難でコンプライアンスの低下をきたすとされ,ALS診療ガイドライン(日本神経学会,2023)では,蘇生バックを使った強制吸気などにより他動的に肺胸郭を最大伸張させる肺容量リクルートメント・トレーニング(Lung Volume Recruitment Training:以下,LVRT)が有効とされている.LIC(Lung Insufflation Capacity)TRAINER(以下,LT)は安全弁が搭載されたLVRT用器具であり,蘇生バックによる過度な加圧で肺胞が損傷されることを予防しながらLVRTを行うことが可能である.今回,我々は気管切開及び人工呼吸器管理となったALS患者1例に対してLTによるLVRTを施行し,換気改善の即時効果と累積効果について検証したため報告する.
【対象と方法】
50歳代前半の男性,X-9年にALSの診断を受け,X-7年に気管切開及び人工呼吸器管理となった.コミュニケーションは視線入力による意思伝達装置を使用して円滑に可能であった.人工呼吸器はPHILIPS社のトリロジーO₂を使用し,S/TモードにてAVAPSをONに設定していた.これまでにLVRTを行ったことはなかった.
LVRTはLTを用いて気道内圧40㎝H₂Oまで加圧し,10秒間の持続的な溜め込み後,呼気ラインを開放し1分間の休憩をとらせた.この工程を3回実施することを1セットとし,1日2~3セットを2週間実施した.なお,LVRT試行中,SpO₂低下や血圧上昇等バイタルサインの変動はなかった.
LVRT実施直前と実施直後の最高気道内圧(以下,PIP)値を比較し,即時効果を1週目と2週目でそれぞれ検証した.また,LVRTを実施する前の1週間(ベースライン)と実施後1週目と2週目のPIP値をそれぞれ比較し,LVRTの累積効果を検証した.即時効果,累積効果の解析にはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.なお,本発表に際して症例には許可を得ている.
【結果】
ベースラインのPIP値は22.0±0.71㎝H₂Oであり,1週目のLVRT実施直前のPIP値は21.65±0.6㎝H₂O,実施後は19.95±0.67㎝H₂O,2週目は実施前PIP値が21.05±0.85㎝H₂O,実施後は19.75±0.47㎝H₂Oでいずれも有意な改善を示した.累積効果についてはベースラインのPIP値とLVRT実施1週目の比較では有意な改善は認められなかったが,2週目には有意な改善を認めた.
【考察】
LTを用いたLVRTを実施し,実施後1週目,2週目のどちらにおいても即時効果を認めた.また,累積効果については1週目では有意な改善は認められなかったが,2週目では有意な改善を認めた.LVRT実施期間における累積効果は即時的な改善に比べると緩やかであったが,ALSは進行性の疾患であることを考慮すると緩やかであっても換気改善に効果があることは意義があると考える.
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:以下,ALS)では,呼吸筋の筋力低下により,十分な深吸気が困難でコンプライアンスの低下をきたすとされ,ALS診療ガイドライン(日本神経学会,2023)では,蘇生バックを使った強制吸気などにより他動的に肺胸郭を最大伸張させる肺容量リクルートメント・トレーニング(Lung Volume Recruitment Training:以下,LVRT)が有効とされている.LIC(Lung Insufflation Capacity)TRAINER(以下,LT)は安全弁が搭載されたLVRT用器具であり,蘇生バックによる過度な加圧で肺胞が損傷されることを予防しながらLVRTを行うことが可能である.今回,我々は気管切開及び人工呼吸器管理となったALS患者1例に対してLTによるLVRTを施行し,換気改善の即時効果と累積効果について検証したため報告する.
【対象と方法】
50歳代前半の男性,X-9年にALSの診断を受け,X-7年に気管切開及び人工呼吸器管理となった.コミュニケーションは視線入力による意思伝達装置を使用して円滑に可能であった.人工呼吸器はPHILIPS社のトリロジーO₂を使用し,S/TモードにてAVAPSをONに設定していた.これまでにLVRTを行ったことはなかった.
LVRTはLTを用いて気道内圧40㎝H₂Oまで加圧し,10秒間の持続的な溜め込み後,呼気ラインを開放し1分間の休憩をとらせた.この工程を3回実施することを1セットとし,1日2~3セットを2週間実施した.なお,LVRT試行中,SpO₂低下や血圧上昇等バイタルサインの変動はなかった.
LVRT実施直前と実施直後の最高気道内圧(以下,PIP)値を比較し,即時効果を1週目と2週目でそれぞれ検証した.また,LVRTを実施する前の1週間(ベースライン)と実施後1週目と2週目のPIP値をそれぞれ比較し,LVRTの累積効果を検証した.即時効果,累積効果の解析にはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.なお,本発表に際して症例には許可を得ている.
【結果】
ベースラインのPIP値は22.0±0.71㎝H₂Oであり,1週目のLVRT実施直前のPIP値は21.65±0.6㎝H₂O,実施後は19.95±0.67㎝H₂O,2週目は実施前PIP値が21.05±0.85㎝H₂O,実施後は19.75±0.47㎝H₂Oでいずれも有意な改善を示した.累積効果についてはベースラインのPIP値とLVRT実施1週目の比較では有意な改善は認められなかったが,2週目には有意な改善を認めた.
【考察】
LTを用いたLVRTを実施し,実施後1週目,2週目のどちらにおいても即時効果を認めた.また,累積効果については1週目では有意な改善は認められなかったが,2週目では有意な改善を認めた.LVRT実施期間における累積効果は即時的な改善に比べると緩やかであったが,ALSは進行性の疾患であることを考慮すると緩やかであっても換気改善に効果があることは意義があると考える.